第20話
リビングに集まり今後の対策が話し合われていた。
琢磨・花音・花音の両親である孝と樹里・異星人ジル達と会話が出来る未来とその夫である涼介、娘の未希は実家に預けてここに駆け付けて来たらしい・・・
勿論、ジルからの連絡がテレパシーにて未来へと伝えられたからである。
「取り敢えずゲストルームを改造してあるから花音と琢磨くんはそこでこの問題が解決するまで一緒に過ごして貰おう」
孝の言葉にいち早く反応した花音は
「えっ! 琢磨くんと2人で同じ部屋で暮らすってことなの!?」
本当は嬉しかった・・・嬉しかったが恥ずかしい!
そんな思いが交錯した彼女は半ば抗議するような口調で言ってしまった自分の発言を後悔した。
「花音、あなたは今、危険な状況に置かれているのよ・・・それを守れるのは琢磨くんしかいないの! ここは琢磨くんにお願いして助けて貰いましょ!?」
母親である樹里に諭され花音は救われた気がしたが表面に出す訳にも行かずうつ向いて聴いたまま黙って頷いた。
「花音は琢磨くんを好きだと俺は思ってたんだが違ったのか?」
孝の言葉に樹里は
「あなた! いい加減にして下さい」と肩を叩いてたしなめると琢磨の方を見ながら
「部屋にはカーテンを取り付けて置いたから気になる時は使って頂戴、狭くて不便かも知れないけど花音と私達を助けて下さい!・・・お願いします」
そう言って孝と樹里は2人揃って琢磨に頭を下げた。
それを見た琢磨は
「そんな、とんでもないです!」
「孝さんも樹里さんも俺にとっては恩人です、出来ることは何でも手伝いますから気を遣わないで下さい」
恐縮しながら立ち上がり丁寧に深く頭を下げる。
きっと琢磨のこんな所をお父さんは信頼してるんだろうなぁ・・・
花音はそう思いながら両親の愛情に深く感謝していた。
「じゃあ僕達は未希を両親に預けて来てるので帰りますが頼みたいことがあればすぐに連絡して下さい!」
涼介は立ち上がると孝と握手しながら言った。
「琢磨くんは携帯を持って無かったでしょ?」
「ここに居る人の番号は花音も含めて入れてあるから使って頂戴!」
「私達からのプレゼントだけど緊急時には連絡も必要だと思うから押し付けるようで悪いんだけど受け取ってくれるかな」
樹里が差し出した携帯を琢磨は「ありがとう御座います!必ず連絡します」と笑顔で言うと受け取った。
「本体を探し出して消滅させない限り戦いは終わらないらしいけど無理はしないでね」
「琢磨くんを支える人はたくさん居るんだから情報も届くしきっと探し出して倒せる! 命を無駄にするようなことは絶対にしないで行動するのよ」
未来の言葉に琢磨は真剣な顔で頷くと
「山神の爺さんもいるし必ずみつけ出して消滅させてやります」
そう言って拳を目の前で握って見せた!
それを見た未来は安心したように笑いながら手を振り涼介と一緒に自宅へと帰って行った。
2人を送り出した後、琢磨は玄関から周囲を見廻し不穏な気配が無いかを確認し戸締まりをした。
もう夕闇が訪れる時間帯で4人は食卓に着くと樹里が用意していた夕食をこれまでの経緯などを説明しながら食べた。
食後の片付けを手伝った2人は客間を改造したと孝が言ってた部屋に行ってみる・・・ドアを開け中に入ると意外と広かった!
部屋の真ん中の天井にカーテンレールが取り付けてあり薄いピンクのカーテンが吊り下がっている。
窓があったと思われる場所は塞がれ扉が設置されていた!
試しに2人で開けてみると小部屋が増築されており、右にお風呂と左にトイレが部屋として区分けされている・・・
娘を守る為だろうがここまで自分が信用されていると思った琢磨は涙ぐんだ。
左側に花音の机や本棚などが置いてあり右側には琢磨の机が置いてある・・・両壁際にそれぞれのベッド!
まさに要塞とでも言うべきか? 完璧であった。
しかし2人っきりとなるとこの完璧な空間がお互いの心に何だか重圧を掛けているようで妙に落ち着かない・・・
「私、ちょっと勉強するからカーテン閉めてもいい・・・かな?」
彼女は遠慮がちにそう言ったが俺には帰り道での経緯もあるだけに拒絶されてしまったような気分であった。
「構わないよ、俺はここで休んでるから何かあったらとにかく声を出してくれ・・・必ず助けるからな」
そう言って俺は自分のベッドで横になった。
カーテンの向こう側に電気で照らされた彼女のシルエットが浮かび俺の守るべき人は今、ここに居る彼女なのだとあらためて思った!
疲れていたのだろう? やがて彼は眠りについた。
その小さな寝息を聴いた花音は日記らしき物を書きながらカーテンの向こう側に眠る彼を想って幸せそうに微笑んだ。
同じ想いと同じ時間、同じ空間をともに過ごしながらもすれ違う2人の感情・・・
恋のキューピットは焦らすのが好きらしい!?
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