第16話
急に路地の前に現れた俺を見て男達は立ち止まった。
「悪いがここから先へは行かせないぜ」
相手は5人、俺の姿を不思議そうに見ながら徐々に距離を詰めて来る・・・手にはナイフやら鉄パイプと様々な武器を持ち薄笑いを浮かべている奴もいた。
何も奴らが近付くまで待つ必要はないのだ!
一番、気に入らなかった薄笑いを浮かべ肩に鉄パイプを担ぐように乗せた男の顔面に左の拳で軽く殴ると男は鮮やかに吹き飛ぶ。
手から落ちた鉄パイプが地上に落下する前にナイフを手にした男の腹部を蹴り上げ右側に立つ男を右手で殴った!
乾いた音をたて落下した鉄パイプがビルの壁に反射した時、2人の姿は路面に転がりピクリとも動かない・・・
一瞬、遅れて蹴り上げた男が鈍い音をたてその上に落ちて来た。
後方の2人の頭ではまだ戦いは始まっていなかったのだろう!?
自分達の目前で起こった光景を呆然と眺めていたが何かを喚きながら刃物を振りかざし向かって来た!
1人目の突き出すナイフを躱し後ろ髪を掴んでビルの壁に叩きつけると2人目に向かって投げつけた。
2人は折り重なる様に道路まで吹き飛ぶと走って来たトラックに轢かれ鋭いブレーキ音と共にはねとばされる!
それを見届けた俺はすぐに路地の奥に向かって走り出した。
誰かに目撃されても面倒なことになるし何よりも山神達が大丈夫なのか心配だったのだ・・・
一方、こちらは美月とココア・・・
早く逃げなきゃ! 彼女の脳裏に浮かんでいたのはあの日、雨中での恐怖であった。
逃げる彼女の心の支えになっているのはリードを力強く引っ張り、彼女を誘導しているココア・・・前を走るこの子犬だった!
路地を抜けるとやや人通りが多い商店街の外れに出た。
ココアはそこで止まると何だか様子を探るみたいに左右を頻りに眺めていたが左に進路を変えるとまた走り出した。
右側からは尋常ではない殺気を放ちながら数人の男達がこちらに向かって歩いて来る様子が美月にも見えた!
彼女は引っ張られながらも必死でココアの後をついて走る。
走りながら振り返ってみると男達は気付いたようでこちらに向かい追い掛け始めていた・・・
気のせいかココアは人通りの少ない方向に走っている気がしたが彼女にそんなことを深く考える余裕も無いまま子犬の誘導するに従い懸命に走り続ける。
やがて川沿いに出ると土手の階段を登り人気のない川原に下りてココアは止まった!
舌を出して喘いでいる様子を見た彼女は子犬の首輪を外して背中を優しく撫でながら
「きっと誰にも見られたくないのね?・・・あの日も何が何だかわからない間に助けてくれたよね! 私はココアが何者でも怖くないわ、お願い・・・助けて!」
言葉の終わりは涙声になり彼女は子犬を抱き締めた。
土手の上に人影が現われこちらに向かって歩いて来るのが見えると抱いた子犬から彼女に声が聴こえた!
「わしを下ろして少し離れるんじゃ、危ないでのう・・・」
「そなたは必ずわしが守る! 安心せい」
彼女はその声に驚いて子犬を落とした・・・
「下ろしてと頼んだつもりじゃが落してどうするんじゃ!?」
いつもの高笑いをすると
「さあ、離れていなさい! 久し振りに暴れてみるかのう」
ココアは彼女をかばうように前に出た。
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