第15話
「おい!爺さん・・・さっきから誰かにつけられてねぇか?」
いつもの散歩中、彼女の背後から少し離れて歩く男の姿が気になった俺は山神に聞いてみた。
「そうじゃな! お前も気付いておったのか?」
山神は落ち着いた様子で答えると
「お前の言う通りここ数日、わしらを観察しておるようじゃがいずれは襲って来るやも知れん!・・・こりゃ油断出来ん状況になって来たのう」と続けて言った。
「爺さん、いい加減に話してくれてもいいんじゃねえか!?」
「奴らの狙いは一体、何なんだ! 爺さんが前に言ったもう1人が奴らに狙われているのか?」
多少、イラついた口調で尋ねる俺に山神は笑うと
「う~ん・・・そうじゃのう、わしも神じゃがあやつらも同じ神なのじゃ!」
「神じゃったと言うべきかのう? 今のあやつらは神に最も必要である善というものが全て無くなっておるのだが神通力は残ったままなのじゃよ」
山神はそこまで話すとやや声を落して続ける。
「あやつらと言っても本体は1つなんじゃ!」
「他の者はもともと強い悪意を持っている人間で操られているに過ぎんのじゃがもともと善意が少なく悪意に満ちた者たちじゃから意のままにあやつの指示通りに動き、情けを知らん!」
「わしの友人が調べた情報では悪意の塊みたいな人間を操るわけじゃが操られた人間は元に戻れんそうじゃ!」
「刑務所に一生、閉じ込めて置くか殺すしか無いじゃろう・・・何とかあやつの本体が宿る人間か動物を探し出して一気に消し去るしか手段が無いのじゃがそれにはあやつに少なからずあった善を貼り付け、そこを狙うしかない!」
「お前が知りたい者はその善の欠片を持っているがゆえに探され、狙われておるのじゃよ」
山神は珍しく丁寧にしんみりとした口調で俺に話してくれた。
「爺さんが倒す方法を知っているのなら俺も協力するよ!」
「それに守らなくちゃいけない人間がこの中に居るのなら俺も一緒に守ることにするから頭は爺さんが遣ってくれよな」
俺がそう言うと山神はいつもの高笑いをした後
「お前は何と素直で頼り甲斐のある奴じゃ!」
「きっと今の言葉を聴いて守られてる人間もさぞや喜んでいるじゃろう」
山神がそう言った後に子犬が「ワン!」と吠えた。
美月の歩みが突然、遅くなりリードで繋がれた俺達は引っ張られるような体勢で辺りの異様な雰囲気に包まれた!
悪意の塊・・・真っ黒な悪意に満ちた人間が周囲に群がっているのが彼女にもわかったのだろう。
「マズイなぁ・・・何だかすっかり囲まれちゃってるけど爺さん、どうするよ?」
「何か考えてくれるんだろ!?」
俺が山神にそう問い掛けると
「確かにここではマズイな・・・彼女は危険を察知してるようじゃから逃げ出す時にお前を外に出そう!」
「奴等は5人、武器も持っておるようじゃが1人で大丈夫か?」
「わしは彼女と子犬を守らねばならんでな・・・任せても良いな!?」
山神は俺を信じてくれているのだと感じた!
「敵はまだ他に居るかも知れないからな!?」
「爺さんこそ任せていいんだろうな? 神様なんだからきっと守ってくれよ!」
俺は柄にもなく熱くなり山神に言った。
「人間ってのは困った時だけ頼むんじゃがお前は逆じゃ!」
「神様を心配してどうする? お前は知らんじゃろうがわしは意外と強い神通力を持っておるから心配せんでいい」
山神は俺の言葉が嬉しかったのか静かな口調で言うと
「吠えて彼女を逃げるように促すんじゃ!」
「そこの路地から向こう側に抜けられる・・・さあ、思いっ切り引っ張れい」
もう猶予が無いことは明白になっている山神は珍しく大声で子犬に命令した!
「ワンワンワン!・・・」
子犬は小さな体を懸命に動かし彼女を路地の方へ引っ張り始めるとハッと我に返った彼女はココアに誘導されるように山神が言った路地へと走り出す!
男達も気付きこちらに全力で向かって来る、不気味な光沢を放つナイフがその手に握られていた。
彼女が路地に入った瞬間、「お前がここで奴等を止めるんじゃ!後はわしが何とかする・・・頼むぞ」
山神が言うと俺は陽炎の如く路地の手前に立ち塞がる格好で姿を現し始めていた。
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