第13話 「悪夢の始まり」

山の中腹に古くなった神社がある。


昔はこの辺も畑が耕され民家もあちこちに点在し村祭りなどの行事が毎年、行われ神社がこれほど傷むことも無かったのだが現在では住む人もなくどこにも人影は見当たらない。


この日はこの神社の前に人々が集まり何十年振りであろうか?

神事が執り行われていた。


この山の中腹に高速道路が通るらしく古くなってしまった神社を解体し別の場所に規模を小さくして移転させようというのが町の議会で可決されたのであった。


あの日から間もなく神社は解体され候補地に移転も完了してるはずだったのだが折りからの大雨により候補地は土石流に流されてしまい更なる候補地選びを始めた。


話し合いは紛糾し神社の主である白蛇様は物置きみたいな村の土蔵に棄て置かれたまま人々の心から次第に消えていった!

更に数年が経過した時点では話し合いさえも議題に上がることも無くなっていた。


日照り続きで干ばつに喘ぐ村に恵みの雨が数日、降り続き作物は全滅をまぬがれた!

降り続いた雨もやがて上がり村人が田んぼに出てみると白い蛇がそこに死んでいた・・・多分、突然変異の白蛇であろう。


村人達はその白蛇を雨を恵んでくれた龍の化身だと崇め神社を建立し、そこに祭り上げたという記録さえ今となってはどこかに紛失し誰一人として一時保管されたこの村で知る者もいない。


そんな小さな村に異人が現れた・・・緑の瞳をした男と病弱な女に腹を空かせて泣き止まぬ女の赤ん坊である。


村で一番古い家を借り、家族はこの村に住み始めた!

男は早朝から村を出て街に行き、仕事が終わると夜には帰って来るという毎日を繰り返していた。


女は垢抜けた美人で病弱な体は細く透き通るような白い肌は誰の目にも魅力的に映っていた・・・村の数少ない若者達は彼女を好奇の目で次第に見るようになって行った。


ある日、男が居ない昼間を狙って家に押し入ったのだ!

女は必死で抵抗したが病弱である上に数人掛かりである、抵抗も空しく乱暴されてしまった・・・3歳になる我が子の目前である!

女の気持ちを察して余りあるものがあろう。


いつもの様に仕事を終えると男は帰って来た。


家に入るなり妻の異常に暗い赤・・・心の色が見えた!

「一体、何があったんだ!? 話してくれないか?」

言葉は穏やかであるが女にはわかっていた・・・穏やかな口調で男が話し掛けて来る時は何かに気付いているのだと。


彼女の手首に赤く残るアザや首筋に残る痕跡と生々しい男達の異臭は彼を想像させるに十分な材料であった!

誤魔化すことも不可能だと知ってうなだれる彼女の前から彼は消えてしまった・・・

途方に暮れ涙をこぼす母親を幼いながらも心配そうに見上げ抱きついた。


1人目の若者は農作業から帰る途中、目の前に現れた男を見て微かに笑った!

男の瞳がグリーンから赤に変化して行くのを目の当たりにし恐怖を感じた若者は走って逃げ出すが行く手を化け物となった男に阻まれ、血飛沫をあげながら肉の切れはしとなり辺りに転がる。


その光景を偶然、目撃した村人が岩陰に隠れ警察に通報した!

「もしもし! 大変です!化け物が人を殺してます、そうです!場所は・・・」

携帯を切り彼が見たモノはその化け物だった!

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