第12話
花音はその場に崩れ落ちる様な形でバランスを失う。
「危ない!」
子犬に憑依した山神は崩れ落ちる花音の体を子犬に素早く取り込むと路地の奥へと走り出した!
男は路地に来ると辺りを見廻して誰も居ないことを確かめ仲間のもとへと引き返して行った。
パトカーのサイレンが激しく鳴り響き現場へと急行して来たが彼等は逃げる様子も見せず、動かなくなった女性の遺体のポケットなどを丹念に探していた。
きっと花音に彼女が渡した袋を探しているのだろう?
「何をしてるんだ! 凶器を捨ててそこに伏せるんだ」と言う警官の警告にも耳を貸さず動きを止めない。
あっという間に数十人の警官に囲まれた彼等はやっと周りの状況に気付いたようにふらりと立ち上がると凶器を手にしたまま立ち去ろうとするが警察がそれを許すはずも無く双方の距離は次第に縮まって行く・・・
無線機で指示を待つ警官と次第に詰め寄る男達は急に走り出すと警官の1人をナイフで突き刺し逃亡する!
5人のうち、3人は確保されたが警官にも多数の負傷者が続出し、大混乱になる隙を突いて2人は逃亡してしまった。
犯人が逃げる前方のコンビニから1人の少年が外に出て来て犯人と鉢合わせしてしまった!
ナイフを振りかざし襲い掛かる2人組だったが何故かナイフは空を切り、1人はコンビニのガラスを突き破り動かなくなり、もう1人は店先に設置してあった赤い郵便ポストを異様な形に曲げ犯人の体は曲がるはずも無い方向に折れ曲がって動かなくなっていた。
後を追って来た警官は目の前で起こった事実を信じられないような目で呆然と見ていた!
出て来た少年は口に買ったばかりのフランクフルトをくわえ、何があったのかを問い掛けるような目で警官を見ていた。
恐らく2人とも生きてないだろう?・・・生存出来るはずも無いような状態で転がってピクリともしない!
後から追い付いた刑事らしき人物が状況を見て警官に怒鳴る
「一体、何が起こったんだ!? トラックにでも跳ねられたのか?」
警官はその問い掛けに答える・・・
「いえ・・・自分で飛び込んだような・・・あの少年に飛ばされたような感じにも見えたんですが・・・そんな訳ないですよね?」
意味がわからない返答をしている間に少年は何事も無かったかのようにその場を立ち去り消えてしまっていた。
その一部始終を花壇の陰で見ていた子犬と山神は
「あれがジルの言ってた少年か?・・・何とも凄まじい強さじゃ!」
「殺気も全く無かったのに一瞬であれじゃ、ジルが心配するのもわかるわい」
サラは山神の言葉に頷きながら言った
「私はあの刑事に憑依して帰ります、後は任せてもいいですか?」
「大丈夫じゃよ! わしは少年の後を追い掛けて上手く取り込んだらそのままこの子犬の中で同居して考えを探ってみよう!」
「ジルには心配せぬ様に伝えて置いてくれんか!? 少女も一緒に預かりわしが守るとしっかり伝言を頼むぞ」
サラが憑依して去ると山神は子犬の中で目覚めた花音に向かって話し掛ける・・・
「どうじゃ? 目が覚めて今の状況がわかるか?」
山神の問い掛けに彼女は「確か・・・倒れたような気がします」
「そうじゃ! お主が気を失った所をわしが子犬の中へと取り込んだがお主は奴らに狙われておるかも知れんので不便じゃろうがしばらくそこで我慢してくれんかの!?」
「残念じゃが言葉はわしが預かって置くからお主は喋れんが身を守る為じゃ」
そう言った山神は琢磨の後を追った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます