第4話

俺が幼き頃、父も母も祖母も皆んな死んだ!

それでも礼儀正しく挨拶も良く出来るいい子であったらしい。


親戚も現れないまま施設に引き取られた俺は歳を重ねるごとに自分の能力に気付き始めた!

それと同時に母の記憶が甦えって来た・・・


「決して人前で本気を出してはいけません!」

幼き俺に母は2人だけの秘密だと言って、色んなことを教えてくれたのだが俺はその全てを何故か覚えている。


繰り返し繰り返し語られる吸血鬼の歴史と緑色の瞳が示す正統な血筋の証など子供では到底、理解出来そうもない話の内容を俺は全て覚えていたのだ!


いつ覚醒し化け物となるかわからない吸血鬼・・・


その事実は俺を人から遠ざける一因となり、逆に孤独を楽しむようになって行った。


小学生だった頃は好奇心旺盛な周囲のクラスメイトから興味を持った目で見られ話し掛けられたりからかわれたりもしていたが気にもならなかった。


中学に進むとからかわれたりすることは無くなったが緑色の瞳と他とは明らかに違う髪の色はやはり目立った!

入学当初から上級生に目を付けられ、何度も挑発を繰り返されるが俺はそれを無視した。


ある日の帰り道、しびれを切らした上級生の不良グループは俺を帰る途中で待ち伏せていた。


「1・2・3・・・全部で6人か?」

面倒臭そうに言った俺に彼等は数を頼んで余裕の表情を浮かべ笑っている

その憐れさが可笑しくて「何か用でも?」と笑いながら言った。


「生意気に笑ってるぜ」、「頭オカシイんじゃないか!?」・・・

口々に言いながら近付いて来る!

こんな奴等を殴り倒すなど造作もないことだが争いは避けるに越したことはない・・・だがこんな奴等はしつこく付きまとうに違いない。


気は進まないが一度は軽く懲らしめて置くか・・・!?

そう思いながら彼等に歩み寄ろうとした瞬間

「喧嘩はやめて下さい!」

彼等の背後から女性の声が聴こえ彼等は背後を振り向いた。


「私、学校に言います!イジメがあったって言いますから!」

彼女が凛とした態度で彼等に言うとマズイと思ったのか彼女と俺に捨て台詞を残しながら去って行った・・・


俺は彼女に近付くと「助けてくれてありがとう!」と素直にお礼を言ったが彼女を見ると涙ぐんで震えていた。


名前までは知らないが確か同じクラスの女子だった様な・・・

そんなことを考えながら

「怖かったのなら知らぬ振りで素通りすれば良かったんじゃ?」

助けてくれた人になんてこと言うんだ俺は・・・と後悔したのだがそれは言ってしまった後だった。


案の定、彼女は俺を睨んでいるが相変わらず涙目でじっと俺を見ている顔は意外と可愛かった!


さっきから何も言わずに睨まれたままなのだが心はピンク色だし・・・って、こいつは恥ずかしのに俺を睨んでるのか!?


人の心の色がわかる俺には彼女の真意が全く理解出来ない?


こんな女は苦手だ!

何とかこの場は穏便に切り抜けてさっさと帰った方がいいのだがこの沈黙を一体、どうやって切り抜ければ俺は無事に帰れるんだ?


そうだ名前を聞いてみよう・・・

「君の名前は何だったっけ?」

尋ねた俺にいきなり「バカっ!・・・私の名前は如月花音(キサラギ カノン)よ」

怒った声でそう言い残して走り去った。


ああ!そう言えば・・・でもあんなに可愛かったかなぁ?

俺の記憶の中ではヤンチャなちびっ子だった。

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