第2話
「おい、爺さん!何だかちょっと寒くなって来たよなぁ?」
俺が山神の話し掛けると
「いつからわしはお前の爺さんになったんじゃ!?」
案の定、山神は反論してきた。
「だって山神っていうぐらいだから長生きしてんだろ?」
「爺さんに比べりゃ俺なんて一瞬で死亡みたいな人生なんだ、どう見たって爺さんと呼ばれてもいい歳なんじゃないか?」
山神は感心した様に「ふ~ん」と言った後
「お前はバカなのか利口なのか良くわからん奴じゃな!?」
「わしはかれこれ800年近く生きておるがお前のいう爺さんという年寄りではない!」「神としてはまだまだ若いんじゃ!」
山神の反論を聴きながら雨宿りしている軒下から見える電柱に何かが貼ってあるのを見ていた俺は「あ~っ!?」と大きな声を出してしまった。
「なっ・なんじゃ!何があったんじゃ!?」
突然の大声に動揺した山神は突拍子もない声で俺に聞く
「いやぁ~スマン爺さん!電柱に貼ってある凶悪犯の顔写真にソックリな奴をさっき見たと思ったんだよ」
山神は彼の返答を聴いて言った。
「その男をお前はどこで見掛けたんじゃ?わしはお前と同じ目線で見てる訳じゃがそんな男には気付かなかったぞ!?」
「さっきコンビニの前を歩いていた時に黒い帽子をかぶった奴とすれ違っただろ?」「そいつの顔に似てるんだよ」
「俺が住んでる近くの高校の制服を着た女の子の後をつけてた様な感じだったんで怪しいなぁって思ってたんだ・・・」
本当はその娘が可愛かったので印象に残ったのだが後ろの男に異様な雰囲気を感じたのは事実だ。
山神は相槌をしながら聴いていたが
「お前は何という奴じゃ!その頭を勉強に使っておれば人生も違っていただろうに・・・よし、今から急いでその男を追い掛けるぞ!つけられていた女が危ない・・・」
そう言った山神に彼は呆れた声で言った。
「こんな姿で追い掛けてどうすんだよ!こんな子犬がどんなに頑張ったとて、その娘を助けられる訳がないだろう!?」
「追っても無駄なんじゃないのか?」
そんな彼に山神は含み笑いをしながら言う。
「わしにいい考えがある・・・わしはこれでも神じゃぞ!」
「とにかくその男を追い掛けるぞ、ホイっ!早く走るんじゃ」
子犬に言った後に彼に対して更に言った。
「お前も走るようにこの犬に言うんじゃ!わし等は3身1体、走るようにイメージせんと走ってくれないじゃろうが!?」
やけに気合いが入ってるなぁと思いながらも同感した俺は子犬に向けて言った!
「さっさと走れよ、さあ追い掛けて走るぞ」
子犬は元気良く走り出したが所詮、子犬なので猛然と速いスピードで走れる訳では無かった・・・それでも彼は励ますように
「頑張ってくれよ!きっとオマエなら追いつけるぞ!」と声を掛ける。
子犬は雨の中を懸命に加速した。
「お前はわしが思っているより優れた男の様じゃの!」
「これならばあの少女を救えるかも知れん・・・お前が持っている狂気を怖れていたんじゃがな」
山神は意味不明なことを言うと高笑いした。
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