第44話 思い出の代々木公園 お弁当!

 渋谷の「詩仙堂」を後にして、代々木公園に向います。

時計の針はPM1;10過ぎ・・・お腹も相当減ってきました。


 穏やかな2月最後の日曜日です。家族連れの姿が目立ち、

バトミントンや親子でサッカーボールを蹴っているファミリーで混雑

しています。適当な木立を探して、ブルーシートを敷いて、待望

のお弁当になりました。


 由紀子が手際よく、準備をして行きます。

「ねー貴方・・・まだ食べちゃ駄目よ・・・今、おしぼりを出すから、

ちゃんと手を拭いてからにして・・」

「大丈夫だよ・・・今まで待ったんだからつまらないフライングはしないよ・・」

水筒からお茶を用意してこれで準備完了です。

「さあ・・・貴方、何でも、好きなものを召し上がれ!」


 ホイルに包まれた「おにぎり」から手をつけました。耐熱容器に綺麗

に並べられた、お惣菜・・・きんぴら、卵焼き、ウインナを順番に口の

中に運んでゆきます。「美味いよ・・・美味いよ・・・さすが由紀子!」


 わずか10分程度で彼女が用意したお弁当が綺麗になくなり

ました。「もうお腹いっぱい・・・食べた・・・食べた・・・美味かった!」


 彼女の表情を観察すると、「私も大満足!」そんな感じでした。

食べた後始末を彼女がしています。傍らでブルーシートに大の字に

なって寝そべる俺がいます。

 スカイブルーに晴れ渡った青空を一筋のひこうき雲が緩やかな

放物線を描いています。

 まぶたを閉じれば耳から聞こえるあたりの音に心が研ぎ澄まされ行きます。


 近くから聞こえる子供達のはしゃぎ声に遠い昔の自分の姿がだぶって

いました。

「ねー貴方・・・今、何を考えているの?」

「うーん、小学生の頃、公園で暗くなるまで遊んでいて、お母さんが探しに来た事」


「そーよね・・貴方って割りとマザコンなんだから・・・」

 自分だってファザコンのクセによく言うよ・・・

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