第36話 由紀子がいない!

 PM9;30のバイトが終了・・簡単に夕飯を食べて、急いで、風呂

に入り、帰宅の準備です。

更衣室で調理場・和食の親方に遭遇・・・


「里中君・・・ずいぶん慌ててるようだけど、レストランの山口課長と

合流するのかな?」

「いいえ・・・課長は今夜はひとりで飲みにゆきました。僕は友達が下宿で待っているので、PM11;00までに帰らなければならないので、お先に失礼します。」


「そうか・・・風呂に入ったあとのようだけど、風邪を引くなよ!」


 和食の親方は、調理場では鬼のように厳しい方ですが、1歩、仕事を離れると面倒見が良くて、上下の隔てなく、気さくに声をかけてくるので、とても好きな

タイプの方です。


 京都四條流の本格調理人で、その世界では

知らない人はいない重鎮でした。一介のバイトの分際でこうして声

をかけてもらえるので、嬉しい出来事でした。

  さあ・・・急ごう・・・

 思いながら、フロント裏の事務所へ・・・今夜のナイトは仲がいい

中村さんでした。丁度、内線で電話中だったので、軽く会釈をして

右手でバイバイの合図を送ります。そうすると頭を2度ほど上下

に動かしていたので、「お先に失礼します」と告げて、地下鉄泉岳寺

駅に走ります。


 西馬込行き電車の発車のベルが鳴っています。

飛び乗りで何とかセーフです。中延で乗り換えて大井町線

で自由が丘で東横線に・・・乗り継ぎがうまく、下宿のある駅には

PM10;50に到着しました。やった・・・これで約束どうりPM

11;00には帰宅になります。

 彼女の部屋のドアーから灯りがもれています。

いつものように自室のドアーにメモ用紙の

メッセージが挟まっていました。


「貴方!・・・お帰りなさい!・・バイトご苦労さま・・・引越しの準備で

バタバタしていたの・・・今から、銭湯に行きます。帰りしだい

貴方のお部屋にお邪魔します。PM10;00 由紀子」


 なーんだ・・・せっかく急いで帰ってきたのに拍子抜けですが・・・

まーこうした事もあるさ・・・銭湯だから・・・1時間くらい・・・


 そんな事思いながら炬燵の電気を入れて、TVのスイッチを入れました。

当時、流行りの11PM「ウイーシャバダバー」(古い話)が流れていました。

ボンヤリTVを見ていましたが、時計が気になります。


 PM11;30を過ぎても帰ってきた気配がありません。どうしたのかな?

ずいぶん長湯だと思いながら・・・11PMのお色気メニューが面白くて

TVに集中していました。

 TVの時報がAM12;00を告げています。

 おかしい・・・遅い・・たぶん商店街のはずれにある松の湯に行っていると

思いました。

  何かあったんだ・・松の湯まで行ってみようと部屋を

         あとにしました。

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