第35話 由紀子の生き方が好き!

 向いのアパートの若奥さんとの出来事があったので、気分爽快で

バイトに行く支度をして外出です。


 丁度、彼女の部屋が30センチ程、ドアーが開いていたので、声をかけました。「今から、バイトに行ってくるから・・・部屋の整理、頑張れよ!」


「あら・・・貴方・・・もうそんな時間なんだ・・・時間も忘れていたわ・・・バイトね・・・気をつけてね・・・行ってらっしゃーい・・・約束忘れちゃだめよ!・・」


 足早に駅に向かいます。

電車の中でいろんな事を考えていました。誰だって、他人には自分

を良く見せたいし、良く思われたいさ!・・・でもこの思いが強ければ、強い

程、自分の生きる道を狭めてしまいます。


 由紀子だって大家さんの前では良い子でいたかったはず・・・

俺との付き合いで警告のサインがでた時にも、怒りと愚痴で

ご機嫌斜めで荒れたけれど、2人の関係には全然、影響がなかった・・・


 むしろ制約が強くなればなるほど、彼女の気持が一途になり真っ直ぐでした。

普通の女の子であれば、たぶん大屋さんの事が気になり、別離の道も選択していたかも知れません。


 由紀子は他人が自分の事をどう思っているのか、どう評価しているのかを

心配せずに・・・自分がやりたい事や自分の素直な気持を大切に行動

しています。

 自分の人生・・・主人公は自分自身・・・自分が主役・・・

そうした事をよく解っているんだ・・・彼女の生き方に素直に共鳴できる・・・

・・・そんな事をつらつら思いながら、バイト先に到着です。


 ランチは週末の金曜日にしては、大した混雑もなく、平穏無事に終了。

25日の月曜日が大手企業の給料日なので、20日を過ぎると

「小使いのやりくり」の為か、若いOLの姿がめっきりと減少して行きます。

これは、毎月のサイクルなので、調理場もレストランの山口課長も承知済み

です。


 夜もPM6;30にキャノンの海外事業部のグループと

清水建設のグループが2組だけ・・・あとは宿泊の夕食対応だけなので

のんびりした時間が過ぎて行きました。


 PM9;00に誰もいなくなりました。今夜は早仕舞いかな?

ラストオーダーのPM9;30にお客さまがいなければ、そこでクローズの

指示でした。


 レストランの山口課長は、しきりに時計を気にして

います。

なんかそわそわしているので、「山口課長!・・・今日は、今から

お出かけですか?」

 「うーん・・・古川橋のラフォーレのママから、電話で

どうしても相談したいことがあるんだって、だから、仕事が終わり次第、行くんだ」

「クラブ、ラフォーレのママって・・・課長の同級生でしたよね・・・この間・・・

一緒に連れていってもらった時に、とてもいい感じなので、初恋

の女性かな?なんて思っていました」


「馬鹿言ってんじゃーないよ・・・おまえは今夜は連れてゆかない・・・」

「課長・・・照れてますね・・・僕も今日は用事があるので、PM11,00には

下宿に帰りたいので、失礼します。課長・・・せいぜいママとの逢瀬を楽しんできてください。

 「この野郎・・・早くクローズの準備しろって!」と

言われた時に内線電話が鳴りました。


「課長!・・・交換からで・・・外線からお電話だそうです・・・」

「わかった!・・早くホールに行け」と指で指示するので、その場から去りました。たぶんママからの電話だと思いました。


 「里中!・・・今夜はPM9;30でクローズ・・・配膳はPM9;00で帰したから、あとは頼む・・・」

 PM9;20でしたが、課長が上がって行きました。

   よし・・!・俺も早く帰ろう・・・由紀子の話が聞きたい!

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