第32話 下宿の前で大家さんと!遭遇

 パン屋で行きつけの中華料理屋のママに遭遇・・・今日は、朝から

短時間に色々な出来事がありました。


「ねー貴方・・・マスターの話しが面白かったわね・・・貴方が私にフラレて格好が悪くて店に顔が出せない・・・私、思わず噴き出しそうになったのを懸命に

こらえたの!・・・そのあとの、ママがあの2人は本物!そんなチャランポラン

じゃないというコメントには感動したわ・・・とっても気分がいい・・・朝から

ラッキーの連続だもん・・・」


 「ねー由紀子!そんなに良いことばかり続かないよ・・・人生、山あり谷あり・・・」


「貴方って・・・いっつも冷静でそうした所が、私とは違うのよ・・・

私はいつも自分に気持ちに正直にいたいだけ・・・」


 そんな話しをしながら下宿への道を2人で歩きます。

大きな道路から小さな路地を入ると下宿があります。まずい・・・


 下宿の前の玄関を路地ホーキで掃除している大家さんの叔母さん

を発見しました。先方もこちらを見ています。完全に確認されて

しまいました。「どうする?由紀子・・・まずいよな・・・」


「もう見られちゃっているんだから、逃げる訳にゆかないでしょ・・・

普通にしていればいいのよ!」


 さっきまで笑顔の連続だった彼女の表情が暗く、険しくなっています。

仕方ありません。そのまま接近です。


 こちらから大きな声で「おはようございます。」挨拶をしました。

すると大家の叔母さんが「あら・・・お2人で・・・

こんなに朝早くからお買い物・・・仲が良くていいわね・・・」


 なんか嫌味な感じに聞こえてしまいます。

「由紀子さん・・・ちょうど、良かった・・・実家のご両親からも

電話をもらっているけれど、引越しの件で、お話があるの・・・今、いいかしら?」


 彼女がうつむき加減に「はい・・・大丈夫です!」と応答しています。


 「ねー里中君・・・由紀子さんが今月25日に引越し

をするんだって・・・たぶん聞いて知ってると思うけど、由紀子さんがいなく

なれば里中君も寂しくなるわね・・・」


 全く大きなお世話だと思いながらも俺はまだ、この下宿に厄介にならなければ、

なりません。


 嫌な態度を見せる訳にゆかないので・・「そうですね・・・せっかく仲良くなれたのでほんとに寂しくなると思います。」と丁寧に返答しました。


「まーでも大井町線の下神明だから、ここから30分くらいでしょ・・・いつでも

逢えるわね!・・・」


 詳しい話しを実家から聞いているんだ・・・すると・・・


 彼女が「里中君・・・これ先に食べていて・・・」とパンが入った紙袋

を手渡します。たぶん早く、部屋に行って!という合図でした。


 玄関前の話しなので、長居は無用でした。大家さんに「それじゃ・・・

ここで失礼します。」と告げて自室に戻りました。

朝から良いことの連続でしたが、最後は1番逢いたくない人に

逢ってしまいました。


 「やっぱり人生山あり、谷あり」良いことばかり

も続きませんし、その逆の悪いことばかりでもありません。

 それにしても、彼女が心配です。テーブルの上のパン屋の包み

を開封する気持になれず、ボンヤリした時間が流れて行きます。


 しばらくして、部屋のドアーを叩く音でした。ドアーを開くと、生気を

失った表情の彼女が部屋の前に立っていました。「さあ・・・早くと・・・

由紀子の手を引っ張って、部屋に招き入れました。

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