二日目:第10話
朝、集合場所に行ってみるとすでに6人ともそろっていた。
「おはようございます。」
元気のいい新加入の男の子が声を上げていた。
昨日の段階で、決まっていたのだが今日はこの後1ステージのボスに挑戦する。
戦い方を伝えながらそちらに向かうのでしっかり聞いてください。
ボス攻略が決まったのは本当についさっきだった。もう一度だけ試したいと、「F」が言った。クラン総勢200人でだ。
「C」は被害者が増えると拒否していたが、一種のお祭りとして楽しめれば。と「H」なども賛成していた。
俺たちが着いたころにはすでにほかのメンバーはそろっていた。班編成とともに。攻略方法が伝えられる。
「この戦いで、人員の配置を決める。戦闘に向いているものには先陣を、向いていないものには向いている仕事を与える」
今日の「F」の口調は今までより強い口調だった。
200人の参加という事で、隊は25にものぼった。あまりにも多いので、2隊ずつ攻撃することになった。俺が加入を決めたメンバーたちは24隊だった。期待されていないという事だった。
「24隊という事は2隊とセットか。我々抜かされるんじゃないか?」
「D」がぼそっと言った。俺は笑顔でそれにこたえていた。
3回目の攻略戦が始まった。さすがに三度目という事でこなれた感じで攻撃を始めている。昨日よりも良いペースでHPを削ることはできた。そして2と24隊の攻撃になる。
今までは1隊とそれ以外で差が広がっていた。だが、今日は違った。1隊を上回る動きをする隊がいたのだ。それが24隊のメンバーだー女性陣だけならともかく、男性陣も奮闘している。この6人は1隊のメンバーと同等だった。
チノと呼ばれている魔法使いは今までにない魔法を使っている。もしかしたらゲーム内最強の魔法使いかもしれない。マチと呼ばれるヒーラー、BUFF,チャームともに途切れることなく続き、ヒールも完ぺきにこなすそれだけではない。シールドを使った多彩なアクションも軽々とこなしている。そしてなんといってもイチカだった。一撃一撃の間隔が俺たちと比べ物にならないほど早い。刀を使って攻撃をいなす。一発もダメージを受けていないだろう。
見惚れていた。1隊の全員が。いや、この場にいるすべてのものが24隊の攻撃に見惚れていた。
戦いが終わった後に彼女たちに話を聞いた。どう考えても1隊のダメージを軽く凌駕していた。
「ダメージだけなら魔法使いのチノです。あの子の魔法スキルの中にA級がありますよ。」
級というのはそのスキルの習得難易度だ。当然難易度が高ければ高いほど威力が増す。前衛職でしかも今覚えられるスキルはGやFがメインでEが出たら相当強い部類に入る。
「スキルの事はまた今度聞きましょう。今はこの戦いに集中します。」
「私の見立てではパーティの3割は魔法使いで良いかと思います。前衛がしっかりしていれば魔法使いまで敵の攻撃は来ません。とにかく前衛で抑えて遠くから高火力の魔法を打ち続ければ攻略も簡単になるのではないでしょうか。」
このイチカという女性は大局というものが見えているのだろうか我々が考えもしなかったことを言ってのけた。
「クランメンバーの人選をもう少し慎重にするべきかと思います。」
「分かった。その辺の話も後日時間を取るので教えてください。今はとにかく戦いに。」
そういって戦いに目をやった。減ることが分かった以上魔法使いの力を使わざるを得なかった。という事で、以前よりも早く全体攻撃が始まる。
24隊がいることもあり、1隊への負荷が大分減った。これなら何時間も戦う必要がなかった。チノ以外にも何人かは魔法使いがいる。その魔法使いを一か所に集めガンガン魔法攻撃を打ってもらった。
「魔法使いの消耗品はクランでどうにかする!ありったけのマナポーションを使ってもいい!だからガンガン魔法を打ってください。」
そういわざるを得なかった。この火力がこのゲームの正義なのかとさえ感じた。
おかげで今までで一番早く戦いを終わらすことが出来た。あの「B」がいた時よりも早かった。もうすでに「B」を呼び戻すことよりもクランの編成について考える余地があると感じていた。
戦いが終わり編成会議の場へと移る
話題に上がるのはどうしても魔法使いの存在だ。このゲームの中で、魔法使いはいまだに少数しかいない。マナポーションの消費が激しく、レベリングをするうえで非常に効率が悪い職業。多くのプレイヤーが敬遠していた職業だったが、今日の戦いを間近で見て幹部の意見は180度大きく変わった。魔法使いを攻撃の軸として前衛を配置する。攻略の糸口が見つかったような気がした。
「ではこれからは魔法使い系の人員を増やしていくことにする。また、職を変えようというプレイヤーにはいくらかの補助金を出して斡旋してあげよう。」
遂にこの会議中「B」という存在は消えてしまっていた。
また、今回のボス攻略で、24隊のメンバーの幹部候補生の立ち位置も決まった。
周りからは素晴らしい人材を見つけたと俺までちやほやされた。
幹部候補生として6人と一緒にパーティを組むことは諦めることになったが、彼らがクランで活躍してくれるのを願う気持ちは変わらなかった。
今日の残り時間もクエストの残りを進めることにした。普段通り「D」と二人で2ステージに向かって歩き始めた。すると、
「おーい、Aさん。」と呼ぶ声が聞こえる。
後ろを振り向くと、さきほど幹部候補生となったメンバーがこちらに走ってきていた。
「どうしたんだ?」
「2ステージのクエスト手伝わせてください。」
女の子3人組ではなく男3人組ではあったが自分を好いてくれ、このように追いかけてくれたのは本当にうれしかった。この日は夜までとことん狩りをした。クエストも終わり、鍵の場所まで見つけた。最初から筋は良かった。鍛えれば鍛えるほど強くなっていく。「D」と俺を兄貴分としてついてきてくれるこの弟分たちがとてつもなくかわいく見えて仕方なかった。
よし、明日以降もこのパーティでレベリングするぞ!と決めた。気まぐれで会議などは入るがそれ以外はこのパーティを鍛える時間に費やそうと思った。
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