二日目:第八話
敵を見つけ攻撃をする。攻撃をすることで初めて相手のHPバーが眼前に現れる。数度攻撃をするがHPのメモリの減り方が今まで見たことがなかった。
動きはのろく、攻撃を避ける事に難しさはなかった。逆に気になったのは風圧だった。動くたびに風の圧力を感じる。今はまだダメージに直結していないが、おそらくこのステージの最後では脅威になる存在だろう。
このステージはまさにパーティでの活動がカギを握ると感じた。仲間を二分させたばかりなのに、なんとタイミングの悪いことだろうか。
1体を倒すのに時間がかかった。次のモンスターに攻撃するのが億劫に感じるほど時間がかかる。
「この程度の動きならすぐボスまで行ってしまおうか…?」
動きが単調で、のろい。HPが高いだけという点だけ踏まえるとボスとの戦いも容易に感じてしまうのも無理がない。だが、少なくとも十希のBUFFが来るまでは狩りで時間を稼ぐことにした。もしあの単調な攻撃でも一発でも食らえばそれで終了だというのは分かった。何が起こる変わらないのだ。
巨人は武器を持っているタイプと何も持っていないタイプに分かれる。だが、どのモンスターも基本的には脳筋だ。攻撃パターンも限られてくる。特に張り付いている場合は主に踏みつけが大半を占めていた。
倒し、奥に進んでいくたびに、HPは増え、スピードも上がっていった。攻略の難しさは増していった。マップの真ん中で戦っている時に、ふと4ステージのモンスターを思い出した。関節部やなど弱点があった事を。もしかしたらここの敵にも当てはまるかもしれない。攻撃を繰り返し、弱点を見つけることに優先度を置いた。そこからは急に攻略が楽になり始めた。どのモンスターにも弱点がある。どこが弱点かは攻撃するまでわからないが、エフェクトのおかげで弱点の時はすぐにわかる。目だったり、脇だったり。中にはほくろやヘソなんて巨人もいた。種類ごとに異なるので、一度覚えれば困る事は無かった。
そうこうしているうちに最奥地までついた。もっと時間がかかるかと思ったが夕方には着く事が出来た。しかし、今までと風体が違った。筋肉が隆々とし、パンチを食らったら跡形もなくなりそうだ。
ドキドキしながら攻撃に移った。HPバーの減りは今までと変わらなかった。とにかく弱点を探そう。気持ちは弱点へ向いていた。
その時、モンスターがサッカーボールをけるような攻撃をしてきた。若干の追尾性能があったが、避けるのは難しくない。だが、足を振ってできた振動で、砂嵐が起こる。目視が出来なく、砂が当たることで、若干のダメージを受ける形になった。このままではまずいとモンスターと距離を開けることにした。煙のないところまで離れ様子をうかがう。モンスターの方もこちらの姿が土煙で見えないようで。踏みつけを繰り返していた。
「今度はパーティ泣かせの攻撃だな。」
一楓達の事が頭をよぎったが、まぁ情報だけ伝えておけばやられる事は無いだろう。
それよりも目の前の敵をどのようにするかが大切だった。
いざ攻撃に移ろうと構えた時だった。
「あ。」
急にチャットが流れた。続けて、
「BUFF覚えたけれど、もう必要?」
願ってもないタイミングだった。
「攻撃アップ、防御アップ、HPアップどれがいい?」
「全部お願いします!!」
食い気味でいった。
名前の上にBUFF効果が表れた。詳しく見るとすでに万智と同じレベルのBUFFだった。
「BUFF系のスキルアップは回数みたい。だから何度も唱えれば比較的簡単に上がるよ。まちちゃんはヒールもチャームも一遍にやらないとだからBUFFをそうそう何度もかけ続けることは難しそうね。」
「ありがとうねーさん。」
若干の上積みが心強く感じた。万智ならこれにチャームがあって、敵の能力を下げることもできるが、今はそれを言ってられない。
先ずは目、続いて首、脇と弱点になりそうな所を攻撃した。残念ながらどれも弱点ではなかった。敵をしっかりと観察して攻撃に移る。脳天でもなく、ヘソでもなかった。
足の攻撃が基本になっていたせいか、足には弱点がないと思っていた。ふと思いついたように脛に攻撃をする。すると、効果があったようで、ものすごい痛がり方をした。エフェクトもでた。やっと正解を導き出すことが出来たのだ。しかし、しっかりと観察といってもその辺の能力は自分にはなさそうだった。
弱点が分かれば後はこっちのターンだ。一体二体三体と屍の山を築いた。完全に日が暮れるころには鍵は7本も落ちていた。
BUFFは30分ごとに切れるが、十希は切れるたびにかけなおしてくれていた。このへんの気遣いは本当に素晴らしい。20時を回っていた。会議まで残り4時間だが、ボスに挑戦しようか考えつつ、十希や百音にお伺いを立てた。
「5ステージのボス行くけど、二人ともどうする?」
忙しいのか百音からは返事がなかった。
「私はまた今度でいいよ。移動、面倒くさいし。」
町からここまで1時間はかかるだろう確かに面倒くさい。
BUFFのお礼にできる事をしようと思った。十希が喜ぶものはと考えた。結果は一つだ。残りの時間は5ステージにいるであろうレアボスを倒すことにした。落ちたアイテムを十希に渡すために。新しいものを発見した時の彼女の輝く表情を見たいがために時間を使うことにした。
このステージのレアボスには壁のようなゴーレム。巨大なサソリ。巨大なクマと、何もかもがスケールアップしていた。いるであろう全てのレアモンスターを借り終わったときには時間はすでに23時を回っていた。ドロップしたアイテムを十希に鑑定してもらうために送る。すると、
「すごーい。こんなにたくさん新しいものがみられるなんて!」
とても感動していた。
「このステージの素材はどれもアクセサリーになるようなものが多いみたい。素材によって効果が違うアクセサリーが作れるからこのステージあたりからはレアモンスターの価値が跳ね上がりそう。」
ここまで言われたからにはこのステージも管理せざるを得ない。
こちらが渡す以上に十希からは素晴らしいアイテムが送られてくる。おかげで防具や武器は+補正が高く、外には出せない国宝となっていた。
「そういえば、リーダーレベルいくつになったの?」
ふときかれた。あまり気にしていないステータス項目だったが確認して伝えた。
「38だよ。」
「高すぎwww私今日一日で6も上がったけどま19だよ?楓たちでもやっと二桁乗ったくらいなのに。」
「ちょっと進めすぎ位な方がちょうどいい!」
二人して無駄話をしながら会議の場所へと向かっていった。
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