二日目:第七話
チャットの音が鳴り響いていた。それだけではないメッセージも大量に来ていた。
送り主は百音だった。
時間はまだ早朝の5時半。メッセージに要件を言付けすればいいものを永遠と
「おーい」
「おきてー」
「大変だよー」
となっている。
「おはよう。」
朝の挨拶をすると返事もなく一気にチャットが来た。
「やっと起きたかこの寝坊助め!。要件は皆そろってから話すから!4ステージの町に集合ね!」
チャットでいえばよいものを何故かチャットで話すことをしなかった。
「そういえば数時間前に移動用のポータルが出来てたよん。もしかして運営さん希ねぇの話でも聞いていたのかね?」
それは4ステージの報酬だよと脳内で突っ込みを入れた。
連絡が来てから数十分たったころ、ようやく皆が待っている場所に到着した。
今日は別段怒られることなく話が出来るようだ。
「まず一つ目なのだけれど、私の感知スキルが上がったの。そしたらね、警戒していない人のチャットが見えるようになったの。警戒っていうのは周りにばれないようにっていう精神的なものみたい。これはさっき希ねぇと試したから分かったの。もっとスキルを上げれば盗み聞ぎもできるようになるかもしれない!スキル発動中だけだけどね。」
「そんなことを言いに全員を集めたのか?…もう戻っていいすか?」
「話を折るんじゃない。大切なのはこれからだ。」
一楓が真面目な顔をして言う。たいていこのような場合は本当に重大な案件がある時だ。
「昨日新しくクランが出来たのを知っているな?そのクランがリーダーを血眼になって探しているらしい。」
「昨日はずっと希ねぇの所にいたのだけれど、そのクランの数人がリーダーについて情報をくれって言ってきたの。」
「もしかしてボス戦で4人にとどめを刺したことがばれたのか?争いを起こすつもりは無かったが…大変なことになってしまった。」
若干パニックになってしまった。目立つ行動は慎めと言われていたが、どうしても試したかったことだった。
「いや、話ではそうではないらしい。そのクランなのだが、昨日再びボス攻略戦を行ったらしい。その時に、1回目以上に人数を増やし、装備も増強されたはずなのに倍くらい時間がかかったとの事。クランの中では繰り返しボスを挑戦すると、ボスの強さが上がっていく仕様と落ち着いているが、ごく少人数だが、リーダーの強さで1回目は楽に終わったという結論を持ったメンバーがいるらしい。そいつらがその強さを確かめたく探しているみたい。」
安堵したのと同時に冷静になってくるのが分かった。
「今まで何度も挑戦したが、ボスが強くなることなんて一度もなかった。あの時、あまりにも長引きそうだったので少し力を入れて戦ったんだ。最終日だし、戦ったままログアウトなんて怖くてできなかっただろう。でも、そんなの3回目4回目と挑戦を続ければすぐに分かってしまうはずなのに…
。」
一楓は考えながら続けた。
「多分、クランの力を誇示したいのであろう。リーダーがそのような強さで、クランでも立ち上げたらすぐにトップという立場が危うくなってしまう。私たちも彼らにトップとして君臨してもらう事で、ゲーム内の秩序が保たれればと思っていたが、揺らぎが生じてしまっているみたい。」
「最初は戦力になるプレイヤーを集めるべきだったのに、だれかれ構わず参加を許してしまったのが影響しているのね。人数はそのまま力になるけれど、人数がクランの強さとは言い難いわ。」
心配そうに十希が続けていった。
「私の所にもクランについての情報を求める声が届いたよ。最初は100人しか参加できないけどクランクエストをこなしていくうちに人数が増える事をしったら、彼ら目の色を変えてクエストに励みだしたもの。」
「そもそもそのような連合体は同じような目標を持ち、ゲームへの考え方が一緒なプレイヤーが切磋琢磨し合いながら向上していくための物だけれど、最初の段階で、主義主張が違うメンバーが集まり過ぎたのね。これでは内部分裂は免れない。」
「で、どうするんだ?」
少しの沈黙の後、一楓が言った。
「私たちもそのクランに参加しましょう。今はまだ、プレイヤー同士のいざこざを起こすわけにはいかない。中に入って上手く舵を取ってあげなければいけない。中に入ることでリーダーの存在を消すことだってできる。」
「一度断った手前僕は参加しづらいのだけれど…。」
「今化け物がクランに入ったら逆に一強時代になってしまうわ。そうすればモチベーションも下がり、ゲームの攻略、私たちの目的が達成することが困難になるの。同様の理由で十希も参加は無し。内政の化け物もおとなしくソロプレイしていなさい。」
「私はどちらでもいいです。」
ニコニコしながら十希は答えた。
「百音も情報屋として外の情報をお願いね。クランに潜入するのは、私、千乃、万智ちゃんにします。」
「万智は僕と一緒に行動しないか?そろそろ敵も強くなるころだろうし、僕の攻略も捗る…!」
「貴方たち二人を一緒にして、また悪魔のような存在にするわけにはいかないの。一人で攻略しなさい。」
一楓にはきつめに注意された。
過去の話を持ち出されたらどうしようもない。諦めるしかなかった。
「足りない分は十希が手を貸してあげて。」
「はーい。」
その様な会話があり、3人はクラン加入をするためにステージを下って言った。
「くよくよしたってしょうがない。出来る事をやりましょう。お姉さんも手伝ってあげるから何でも言って!そうだ、これをあげる。」
渡されたのはアクセサリーだった。
「まだ実数を上げるような強いアクセサリーではないのだけれど、どのアクセサリーも補正はつけられるの。」
「ちなみにどんな補正があるの?」
「今はまだ攻撃力アップ(小)だったりと不安定な物なのだけれど、スキルのレベルが上がれば筋力、素早さみたいな実数値とか%を上げるブースト系の向上も見込めるよ。」
「こんないい物融通してもらって申し訳ないのだけれど、もしクリティカルダメージ上昇や回避率を上げられるようになったらすぐに教えて欲しい。」
十希は何も聞かずに了解といってくれた。
今できる事をするしかない。自分の力に不安があるわけでもない。とにかく先に進むしかなかった。このゲームが一体どのような目的で誰が作ったのか。まだまだ知らないことが多すぎるのだ。
「まずは5ステージだ。」
勇み足で次なるステージに向かっていく。
昨日の段階で小島という事は分かっていた。まずはとにかく最初の敵を見つけないといけない。町を出て少し経つと、遠くに生き物の姿を見ることができた。
「人型…?遠近感バグってるのか…?」
認識してからもしばらく走った。走れば走るほど別のことに気付く。
あまりにも大きかったのだ。
「巨人か…」
びっくりして驚くよりもやってやるという勇んだ気持ちが先走った。これからもガンガンいってやると自分を奮い立たせた。
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