二日目:第五話
そうだった。こんなところでログアウトしたのか。明るいところでログインするかと思いきやフィールドでログインをした。真っ暗闇の中、しかもステージは幽霊の出る町だ。
お化け屋敷に来るならかわいらしい女の子ときたいなんて野暮なことを考えていたが、そんな淡い思いにふけっているとメッセージが届いた。
「今日の会議をします。2ステージボス前に集合してください。」
一楓からだった。
「昨日話に出ていたレアアイテム。それを集めることがしばらくの優先になります。なので、まずは2ステージのボスをクリアします。十希ちゃんのお願いで、素材を増やす必要があります。それぞれ報告はありますか?」
「昨日は野良パーティで1ステージのボスに挑戦しました。まだまだ力不足です。直近で戦力的に困ることはないと思います。クランを作るような話をしていました。」
「りーだーそのクランに参加したいの?」
「いや全く。ゲーム内最初のクランだから動向を見守った方が良いかと思いまして。」
「ちょこっと話したけど、装備の合成ができます。さらに派生があるかもしれないので、引き続きレベルアップめざします。」
「他にも話はあるかもしれないけど、まずはボスだけ先に片付けちゃいましょう。」
すぐにボスの戦いに移った。
『バグベアーリーダー』
ボスという事でものすごく大きい。、手にはソードを手にしている。ソロで挑戦したときに、一回やられているのをまだ忘れてはいない。
とはいえ、一度挑戦しているので苦戦もなく倒すことができた。ボス自体の強さは変わらない。注意しなければいけないのは、集団戦になった時に、ターゲット外を攻撃する全体攻撃だ。ソロでやっていればすべてが自分に攻撃が来るが、仲間がいると予想外の攻撃に見舞われる。要するに油断からくるピンチだった。
ボス戦が終わり全員で3ステージに移動する。この時に先ほどあったパーティとソロの違いを伝えた。
「なら貴方はなるべくどちらも経験する必要があるのでは?個の強さでどこまでも行けるでしょうけど、今後多人数での戦いは何かしら起こりうる。折角だからボスの野良パーティにできるだけ参加した方が良いでしょう。」
「仲間を守りながら戦うなんて性に合わないので!」
強くいったが、クスクスと笑われた。
「嘘ばっかり。」
分が悪いので別の話をすることにした。
「そのボス戦ですがいくつか試せたことがあります。実は被害者が6名出たのですが、そのうち4名のラストアタックは自分です。」
全員がびっくりして動きが止まったのが分かった。
「ばれてないの?そんな危険なことをして…」
「戦い終わった後に被害者の近くにいましたが、そのような話は出ていません。プレイヤーに攻撃をしても誰から受けたダメージかはわからないようです。誰に倒されたかもわからないのは、Eという人物と戦った時に知っていました。要するに町の中以外はどこでもpvpできるんです。」
「ただ、明確にプレイヤーに攻撃すると思わないとプレイヤーに攻撃は当たりません。弓や魔法の範囲攻撃も適用されていて、普通に発動では効果はないみたいです。」
「明確な意思・・・?」
「殺意です。攻撃する!だけではだめです。こいつを殺す。と思わないとpvpモードには移りません。これの怖いところは暗殺も可能ってことです。お互いの意思があるような、言い換えれば決闘のようなものではありません。」
「プレイヤー間の対立にはいち早く敏感になっていないといけないのね。百音ちゃんその辺も聞き漏らしないようにお願いね。」
そのような話をしているとすぐに3ステージのプレイヤーの町についた。
ここにいる女傑達は幽霊とと聞いて、ビビるようなたまではなかった。一人でも怖がって袖を引っ張ってくれればやる気も出るのに…なんて期待していたがそんなことは起こるわけなかった。
「このまま例のレアボスの位置まで行きましょう。一度ゲームのメンテナンスでサーバーを落としていればもしかしたら復帰しているかもしれない。」
思った通り、『見習いリッチ』は出現していた。
見本と言わんばかりに戦い、ポイントだけ伝えた。これからは彼女達にアイテムを集めてもらうことになる。
折角そろっているのだから、3ステージのボスも挑戦してしまおうという話になる。
見習いリッチが終わり、そのままボスの現れる地点に向かった。
「護衛ボーンナイトから鍵が落ちます。更に、鉄の剣もドロップしますし、ここでしばらく狩りでもしていてください。」
「どうしても最初はソロで戦いたいのね…。男ってどうしてタイマンにこだわるのかしら。」
「まぁまぁそういわず。カッコつけたいお年頃なのだから、好きにさせてあげよ。」
一楓と十希の一連のいじりに耐え、ボスの部屋へと入っていった。
第3ステージのボスの部屋。現れたのは巨大な骸骨の騎士だった。
『ボーンジェネラル』
「鍵を持つ護衛ボーンナイトの親玉ってわけか。」
見た目もあまり変わらない。が持っている武器がとてつもなく強力そうだ。
「日本刀…?でも武器が光っているのは気のせいだろうか…。」
先ほど女傑達にいじられたが、男たるものタイマンにはこだわりがある。太刀一本同士での戦いになればタイマン冥利。
しかし何分か戦ったが、NPCのボスにしてはこちらの攻撃をガードするのがうまかった。刀でいなす、といった方が早いのだろうか。タイマンにこだわりはあるものの、攻略が遅くなっては、またどやされてしまう。距離を置き、武器を変える。短剣の二本持ちだ。以前やっていたゲームからこのスタイルが一番しっくりときている。
このゲームではソード系のスキルはソードの分類に入る武器ならばどの武器でもスキルを共有する事が出来る。スキルの種類によっては二刀流でないと発動できなかったりとスキルそれぞれに細かい設定がされている。
短剣の長所はやはり攻撃速度だった。単純に二本持っているわけだから一本よりも倍速い。更に太刀に比べ短い分早い。一発一発のダメージは減るが回数が増え、100%のクリティカルを誇る自分の能力を込めれば、太刀を持っていた時の数倍の強さを発揮する事が出来た。
戦士というよりはアサシンという感じだが、このスタイルを気に入っていた。太刀での活動は目立ちたくないことと、ある一定の剣士への憧れはあった。
では、太刀の二刀流にすればという選択肢もあった。確かに挑戦はした。だが、いかんせん片手に一本ずつは重すぎた。筋力ステータスを振ればもしくはとも思ったが、回避能力を考えると筋肉ダルマになるのはごめんだった。
そもそも攻撃力というものの考え方がこのゲームは細かく調整してあり、独特だった。筋力を上げる事で剣の重さ、一撃の重さに直結する。素早さの能力を上げると、剣の速度に直結する。どちらも攻撃力として必要なものである。どちらか一方でもある程度攻撃力は向上する。バランスよく降ることが一番なのだが、装備する防具や武器に必要能力があるので、筋力と素早さだけを平均的に上げていくのは難しい。ということで、筋力か素早さはどちらかをメインであげていかなければいけないのである。自分のスタイルから素早さを選び、剣の速度、攻撃回数という結論に至った。
今いるプレイヤーのほとんどの前衛職のプレイヤーが筋力を上げているだろうことは分かっていた。戦い方がそもそも違うのだ。「E」との戦いでも分かったが、筋力振りのプレイヤーはどこかで一撃入れなければいけないのだ。一振り一振りすべてに攻撃の意思がない。牽制で剣を振る場合がある。逆に、素早さ振りの場合は一撃一撃のダメージが大きくない。逆に言えばどのような攻撃でも一定のダメージを与える事が出来る。牽制のための一撃とダメージを与えるための一撃では気持ちの持ち方が変わる。
このボス『ボーンジェネラル』は良い意味で筋力振りプレイヤーに似ている。このようなプレイヤーは一番の大好物だ。これなら、魔法使いや弓矢など距離をとって戦う敵の方がむずかしいとさえ思った。
変則的な動きがない分今までの3体のボスの中で一番簡単だった気がした。時計を見ると2時間になろうとしていた。集中していた分時間が過ぎるのは早かったが危機もなく倒すことができた。
うれしいことに、報酬の中に、ボスの持っていた日本刀があった。後は普段のように素材、そして情報だが、装備についての説明だった。ボスが使っている武器だが光っているのは、『日本刀+7』という事でプラスの値が7以上だからだそうだ。それだけではなかった。装備にはすべてに補正がつけられる。ここまでは十希がすでに解き明かしていたがそれ以外にもあるようで、「PS」といわれるものがあるらしい。これは、個人個人どのように過ごしてきたかの能力で、武器や防具の種類で決まっているのではなく、装備をしているものに宿る能力のようだ。発動条件も隠されている。つけ外しも可能で、行動によって現れたものを自分で選ぶようだ。
このゲームの装備は、『頭』、『ジャケット』、『ガントレット』、『下半身』、『靴』の装備、武器や盾は右手と左手に分かれていて、何でも持つことができる。
それ以外に、アクセサリーとして、『イヤリング』右と左で一個ずつ、『ペンダント』、『ベルト』、そして『指輪』に関しては最大10個も付けられる。
今あげた防具、武器、アクセサリーすべてに『PS』は宿るのだという。
「最大で21個もの個人技か…。どのようなものがあるかわからないが、個人個人のプレイヤーの差がどんどん大きくなりそうだ。」と感じた。
そして最後に、闘技場を作り、イベントを開いてくれという仕様変更を望んだ。そして、闘技場内の対戦にはデスボーナスは付けないことを添えた。
これで少しでも、プレイヤー間の戦いが起こらなくなってくれればと思った。
プレイヤー間の争いが頻発するとだめな理由。プレイヤーを殺せば殺すほど強くなるという仕様が良くない。それを許せばそのような集団が出来てしまう。プレイヤーが楽しむ場所を汚してはいけないのだ。自分が異質な存在だという事は理解していてもみんなが楽しめるゲームを個人の理由で汚してはいけないという思いはあった。
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