二日目:第3話
『コボルト』の討伐500体は思いの外時間がかかった。まとまって枠が、ポップする位置が広範囲にわたっていた。強さも1ステージ後半のモンスター並みだ。一番のネックは敵の大きさだった。1ステージのモンスターは人間よりも大きかったが、今回のコボルトは小さく、攻撃を当てる事に気を付けなければならなかった。「D」は特に遠距離攻撃という事もあり、四苦八苦していた。
それでも繰り返すごとに命中度を増し、最終的にはほとんど必中させていたのはさすがと言わざるを得ない。
クエストが終わり、NPCへ報告をする。すると、クエストとは別の項目で『クラン基地』が出現した。この中に『クラン基地の建設』というコマンドがある。「D」と目を合わせハイタッチをする。
そしてすぐに幹部達のチャットを使い報告をした。
「クランの基地、建てる事が出来るようです!」
「おぉ!グッジョブ!すぐにでも準備しよう!
「F」や他の仲間が喜んでくれているのを本当にうれしく思った。
「今すぐは難しいようです。資金を貯めないといけない。」
喜びが一瞬にして冷めたのが分かった。
「初期の基地が¥100000かかりますね・・・」
「いきなり100kか!皆所持金いくらだ・・・?」
「それだけじゃなく、建てるための土地の料金も払わないといけないようですね。これはお店関連と一緒のようです。」
「店と一緒なら借金は!?」
「C」が機転を利かせ望みをつないだ。
「借金制度は店を開くときにしかできない仕様になってます。」
「現実世界みたいなことやってんな・・・」
ポロっと出た言葉は妙にクランチャットで笑いをとれたようだった。
結局クランの幹部メンバーの所持金を合わせても目標金額の半分にも満たなかった。埒が明かないという事でクラン加入者には毎日の納税の義務が発生した。なるべく無理がない程度でクラン積立金という仕様を生かして積立してもらうことにした。
現実世界みたいなことといったが、まさしく国家の維持するための納税のような仕組みが出来上がった。
不思議と不満は上がらなかった。クランが出来立てという事で盛り上がっているという面もあるのだろう。
今すぐ貯まるとは言えないがいくつか光明はある。これから始まる日課の1ステージボスの攻略だ。ボスからのドロップ品はレアな素材が多く、今後ある程度の額で取引する事が出来るだろう。各地に散らばっているレアモンスターから価値のあるドロップ品の報告がいくつかあった。
「Aさん、あの情報取引にしてる人にチャット送ってみれば?もしかしたら良いお金稼ぎ方法教えてくれるかも。」
「D」の発言はとてつもなく納得させる。
「よし、試しに聞いてみよう。」
ログインしているのを確認し、個人のチャットメッセージを使い、質問をしてみた。
『こんにちは。クランの基地を作りたくて、お金が必要なのですが…もし稼げそうなモンスターとか方法があったら教えてください。なるべく安めで…。』
メッセージを送るとすぐに返信が来た。
『すぐに調べます。結果によって値段は変わりますので♪』
最後の♪が妙に腹立たしかったが、背に腹は代えられない。情報を少し待つことにした。
そこからボス攻略までの間クエストを進めた。
500体討伐後のクエストは、『木材の運搬』、『前哨基地の防衛』、『基地に蔓延した病気を回復するための薬草探し』、『希少な木を探せ』と順番にこなした。クエスト中はなるべく余計なことは考えたくなかったが、どうしてもクエスト完了の報酬額には目が行ってしまい、もらうたびに二人でためいきが出てしまっていた。ここまでクエストを進めると、そろそろ時間という事で、ボス攻略のための編成会議に向かうことにした。
1ステージのボス前には前回挑戦した人数よりも多い人数が集まっていた。
初めてのプレイヤーも中に入るが、半数近くは手伝いとしてもう一度挑戦してくれるプレイヤーのようだった。
手伝いという気持ちを持ったプレイヤーもいれば、クリアの報酬目当てのプレイヤーもいるであろう。どちらにせよ参加者は多い方が良いに決まっている。
一度クリアしたプレイヤーは装備も一段階パワーアップし、相まってスキルのレベルも上がっているであろう。だが、一抹の不安はぬぐい切れなかった。死にそうになった時に助けてくれたプレイヤー「B」はやはりその場にはいなかった。2ステージのクエストの最中もその姿を見ることは出来なかった。だいぶ奥まで行ったのであろうか。また更に差をつけられてしまったのだろうか。色々と不安になることはあった。
今回は1隊から9隊まで隊が作られた。それだけ大勢の人数が攻略に参加することになった。約半数は前回挑戦したプレイヤーが集まってくれた。先に進みたいであろうに。組織に所属する以上は仕方ない事なのかもしれない。
前回同様に戦い方についてレクチャーをする。作戦幕僚長の「C」が丁寧に説明してくれた。前回と違う所は注意点だ。あの戦いを経験したおかげで気を付けなければいけない点をあらかじめ伝える事ができたのはとても大きい。
どこか、楽勝ムードが漂っている気がした。自分自身も経験を積んでいたので勝てるだろうという気持ちが強くなっていた。一隊は殆どメンバーが変わることなく組めたという事もある。
気がかりだった「B」の不在もいざ戦いとなると消えていた。
態勢も万全だった。戦う前にクランから参加者へ無償でポーションが配られ、持っていない人には盾まで支給された。万全を期しての戦いである。
予想よりも遥かに組織として成り立ってる感じがした。運営しているメンバーの質の良さもあるだろう。
戦いの準備が終わり、いよいよ入場になった。一回目に感じた緊張や不安は無くなっていた。参加している人の為、クランの力を示すため再びボスの部屋に侵入する。
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