二日目:第2話
クランが決まった後、トキの店に向かった。どうやら本人がいるようだった。
「おはようございます!トキさん加工は出来ますか?」
「当店はNO.1を自負しております。お任せください。」
トキは笑顔でそう答え、早速作業に取り掛かった。といっても、システム的な事なので作業はすぐに終わる。「D」の分も合わせて数分もたたずに完成した。
「ここだけの話、出来上がりしだいで補正がだいぶ違うので安さに騙されないようにね!」
そう注意を受け、武器の情報欄を見てみると補正効果として攻撃力+の文字があった。
「補正ってどのように決まるものなの?」
「加工者の熟練度はもちろんだけれど、武器をどのくらい使用したかっていうのと素材の数とかレアリティです。後は私たち加工者の気持ち。」
最後は付け加えだろうか屈託のない笑顔でそういった。
「Aさん達クラン作ったんですよね。第一号おめでとうございます。しかもお二方とも幹部とはこれからも贔屓にしてくださいね。」
「トキさんもクラン加入どうですか?クランのランクを上げるのに素材やらお金やらがかかるらしく、そのあたりに精通した方を是非向かい入れたいと思ってまして。」
誘おうと思った自分よりも「D」が先にトキを勧誘した。
「うーん。まだクランとかは考えていないです。ごめんなさい。自分のペースでまったりやっていきます。責任重大そうですし・・・。」
少し考え断るのが悪そうな表情で答えた。
「気が向いたらお待ちしてます!」
すかさず言った。俺もこの人には是非加入してもらいたい。
町での活動が終わると迷わずに第二ステージへと向かった。
昨日戦ったあの建物に別の扉があり、そこをあけるとがらりと雰囲気が変わった。扉の出口は次の町に繋がっており、いきなり野に放たれるわけではなかった。
「まずはクエストだね。一つ一つしっかりと攻略していこう。そうだ、マップの先遣隊は「E」さんに譲ったけど、クエスト関連は俺たちが先遣隊になろう。これならメンバーの役に立てる。」
「そんなに他の人のことを考えなくても良いんじゃない?肩ひじ張らずに楽しんでいこう。」
「D」に言われ、少し力が入り過ぎていたことに気付いた。誰の為でない自分が楽しみたいと思ったゲームだ。自分が楽しむ事をまずは考えていこうと考えると気持ちが少し楽になった。
第一ステージでは食糧問題を題材にしたが、第二ステージでは資材、特に建物を建てるための資材集めという事がメインクエストになっているようだ。開拓者達として話はつながっている。町を作るだけでなく、先に進んだ時に前哨基地を作るという名目のようだ。クランのチャット、掲示板にはすでに第二ステージのマップやモンスターの詳細や所在地が少しずつ書かれ始めていた。「C」のパーティがすでに行動を起こしているらしかった。
クランの機能にはチャットや掲示板だけでなく、『書庫』というものがあり、情報を纏められるシステムがあった。文字だけでなく、マップの図やモンスターの写真などを纏められるようだった。その辺りを有効活用しようと、「C」がすでに数人を編纂者として登用しているようだった。これにより今後新規でゲームを始めるプレイヤーにも優しいクランが成り立つきがした。
始めに起こったクエストは『木材調達をする為に』クエストの説明きくと、木材を集めるために必要な『斧』を納品するというクエストだった。
「いきなりお使い系かぁ。とりあえず買ってくる?」
「素材を集めて作った方が安上がりかもしれない。」
「素材となると店で聞かないと分からないなぁ。トキさんに聞いてみる?」
「会いたい気持ちは分かるけどさ、あの人たまに居ないしクランお抱えの商人に頼んだ方が良くない?」
会いたい気持ちが見透かされていたと分かり、心拍数が上がるのが分かった。
クランのメンバーを集める中で、商人をやっているメンバーを数人登用したようだった。これがとても便利で、商人たちはクランメンバーという顧客を抱えることで仕事が安定し、スキルの上昇も見込まれる。作れば作るほどレベルが上がるのだからすごい応募があったらしい。
分かってはいたがトキはその中にはいない。だがそれは言わなかった。
一番スキルの高い商人に聞くと、作ることのできる斧だと『木の斧』『石の斧』『骨の斧』『牙の斧』の四つという事だ。
木や石の斧は簡単に手に入り、骨と牙はモンスターを倒さなければいけない。『牙の斧』に関しては1ステージのボスからのドロップなのでレアな武器になっている。骨の方は色々なモンスターからドロップするので、骨の収集をする事にした。また、同時に素材でできる斧も用意してもらうことにした。
骨を集めることは容易だった。ただ、レベルを上げることも考えていたので、1ステージでも難易度の高いモンスターを倒していた。
「この辺で狩りするプレイヤーも増えたな。」
「中にはうちのクランメンバーもいるね。」
「メンバー増やすにはどうすればいいのか分かった?」
「D」はクランを大きくする重要な役目があったが、どのようにクラン規模を上げるかはわからなかった。
「そんな情報も隠すのかよっ!」と会議の時に「F」が怒っていたのを思いだした。
「大体想像はつくよ。選択コマンドが無いってことはまだクランとして必要なものがあるんだろうね。建物とかかな。で結局は資金だとか素材だとかが必要なんだろうなって」
クランには参加希望が数百人来ている。骨を集めながらそんな話をしていると、二人の目の前にテロップが流れた。
『今日の1ステージボス戦は18時から』
これはクラン告知という仕様らしい。全員に通達される内容であった。
時を同じくしてもう一つテロップが流れた。
『新実装 闘技場が開かれました』
俺はどちらかというとこちらに興味を持った。プレイヤーと戦う事が出来るのだろうか。手合わせしたいプレイヤーが何人か頭に浮かんだ。
「今はクエスト集中ですよ。ワクワクしてるのが顔ににじみ出てますが…」
そうこうしているうちに大量の斧が送られてきていた。ドロップした骨はメッセージ送付を利用して送り、斧もそれを利用して手元に届いた。
「そろそろクエスト進めてみよう。」
二人でクエストNPCの前に行く。二人で100本ずつ用意したが、パーティを組んでいるので100本で済んだ。また、斧なら何でもよく、ボスドロップで作った斧は素材を使ってまで作ったが必要のないものになってしまった。
「クランの備品として今後利用する人のためにとっとくのは?」
「D」の一言でそのようにした。
「ありがとうございます。これで木こりを雇えます。もう一つお願いしたいのですが、木材を集めようとしている場所にモンスターがたくさんいます。駆除をお願いできますか。」
『伐採場を確保せよ』次のクエストは「コボルト」というモンスターを倒すクエストだった。500匹という途方もない数だった。
その時、目線の関係でもう一度NPCに話しかけてしまった。すると、
「とても一人では大変です。クランを作って大勢で挑戦してください。」
「クラン?」
「同じ目的を持つ仲間が集まる集団です。開拓やモンスターの駆除に役に立つでしょう。木材の供給にめどが立てば、私どもでクランの砦でもこしらえて見せます。」
「これだ!」
俺と「D」は声をそろえて言った。
「とにかく時間いっぱいまでクエストを進めよう。ボス攻略が18時ってことは、一時間前には作戦会議が入る!それまではどんどん進めるぞ!」
自分の考えが個人の強さではなく団体の強さに傾いている事に若干驚きを覚えつつもクランの為のクエスト攻略を進めていった。
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