第1話

だいたいゲームは2.3日で飽きる。たまに面白いゲームをみつけ、スタートダッシュするが一ヶ月もたたないうちに辞めてしまう。一昔前にとあるゲームでトップクランに所属し、楽しい経験をした俺からすると最近のゲームは物足りない。シナリオも目的地も決められた道筋を進んでいくだけのゲーム。固定化されたゲームの攻略法。それでもゲームの中にある楽しかった思い出から掘り出し物を探していた。


そんな中で今回発見したゲーム『brave new island』。公式ホームページにはゲームが開始する事しか書かれていない。普通はキャラクターやシステムなどを概要として載せるはずだが、一切ない。ゲームの種類がRPG、多人数型なのでMMORPGである事だけは分かった。ほとんど内容が分からないにも関わらずこのゲームを見つけた時には心が躍った。何も分からないものを探していく事。ゲームはこれくらいなものの方があって良い。

サーバーが開かれるのは…22時〜24時

今の世の中では比較的長い時間であり、開く時間も所謂ゴールデンタイムだ。

やるからにはスタートダッシュを決めたい。初日の2時間でどこまで差がつけられるか。今か今かとサーバー開放を待つ。後、10秒…9秒…8秒…

ログイン!

名前を決めてからの………だけ?

アバターとか種族とかは無しか…キャラゲーとしては成り立たないなぁ。アバターを決めないという事は自分の顔面。

職業などの選択も無し。ク○ゲーを始めてしまったのか…


ログイン完了!。ログイン後、周りを見回すと、どうやらどこかの町らしい。俺と同じようにログインしてくる人々が光のエフェクトとともに現れている。どのプレイヤーも次の行動は限られている。その場に立ち止まるか一緒にやるのであろうプレイヤーを探すためにカサカサ動き始める。どうやら俺は全社のようだ。

まず確認するのは…インベントリ、スキル画面、ステータス画面。

装備は細かく様々な部位に分かれている。メイン武器、サブ武器、防具5セット(足・腰・胴体・腕・頭)更にアクセサリー系が耳に二つ、ネックレス、ベルト、指輪10個。指輪指に一個ずつつけるのか・・・?

スキル画面は真っ暗。ある程度書かれている内容で推測できるものだが…スキル自体も自分で探さなければいけないらしい。レベルアップでも覚えたりするのだろうか。俺の探求心はポジティブに作動している。

アイコンの確認が終わった後は周りをうろついてみた。たくさんの建物があり、寂れてはいるが結構大きめな村である。ただし、開かれている店は殆どなく、店員が確認できたのは一箇所だけだった。そのお店も長蛇の列で、何が売っているかも確認が出来なかった。どうやらリアルタイムで店員が対応しているようで、現実世界のように並ばなければいけないようだ。結局今は何が売っているかも確認することが出来なかった。正直言うとポーションなど回復薬があれば買っておきたかったところだ。何も買えず何をしようか思案しながら歩いているとどうやら入口に戻ってきた。

入口には大きな城門があり、城門を出ると広い土地が区画だけ分けてある。区画整理され、これから家でも建つのだろうか?看板には万を超える数字が書いてあった。大きさや、場所により値段が違うようだ。その先は広い草原で、目を凝らしてみると所々木々が生い茂った林がある。

冒険をしてみたい気持ちもあったが、折角なので町の中の全体を確認してからにしようと思った。ポーションも買えてないという事で…。

入口から街の中央に向かいゆったりとした階段がある。階段を上がっていくと大きな広場に出た。中央には大きな掲示板があり、どうやら町長?からの伝聞として(この場合運営からに当たるのだろう)いくつかトピックスが書かれている。


1.情報は己自身で集めるべし

2.ルールはゲーム内で決めるべし

3以降は操作方法や必要最低限の情報のみ





そして最後の二つ。


・PKが許される場所がある。

・キャラクターの死亡はアイテムの全ロスト、スキルポイントの減少、経験値の半減のいずれか


中々シビアなゲームだなぁとこの時はそれだけしか思わなかった。


読み終わる頃にはだいぶ人が増えてきたようだ。今いる中央広場も賑わってきている。入口の手前にある先ほどの商店が空いていたので、急いで並ぶ。売っているのは他のゲームと変わらず初期アイテム類だ。ポーションを数本買い、外に向かって走り始めた。新しいゲームを始めた高揚感とスタートダッシュを決めたいと言う焦りが出てくる。城門を抜け、しばらく走っても永遠と草原が広がっている。

ポツポツと他のプレイヤーがいてどうやら狩りをしているらしい。こんな近くではだめだ。敵が弱すぎて経験値が稼げないだろう。あまり他のプレイヤーがいない所が好ましい。周りに目を配りながら走り続けた。

あまりプレイヤーがいない場所を見つけるとがむしゃらに目の前に現れる敵モンスターを倒し続けた。最初に支給されたのは気の棒。とにかく気の棒で殴りつける。敵の攻撃を避けるのも自分で動き、攻撃も自分で腕を振る。ボタン一つで攻撃回避ではない。今いる狩場は大きめの犬がいる。走ってくる犬を大きく横によけ、距離を詰めてお腹に一撃。どんなに力強く降ってダメージが増えるわけではない。避けるのを失敗すれば攻撃を受ける。避け方によってはかすり傷にもなる。タイミングを見てよけなければならないのだ。

狩りを続けていると、武器が壊れた。「バキン!」と割れる音がしたかと思うと使っていた武器の攻撃力が著しく下がった。町のトピックスにもあった通り修理しなければいけない。商人か鍛冶屋が直せるそうだ、またあの商人のところで並ばないといけないのか…とがっかりする時間もあったが、すぐに気持ちを持ち返し、今は町に向かって足を進めていた。

最初は本当に長蛇の列だった。

2回目に修理のために戻ってくるとお店がもう一つ増えていた。

最初の店と比べて目に見えるほどお客のさばき方が早かった。興味を持ったので、そちらの店に並んでみる。

並んでいる際に利用したプレイヤーの声が時折聞こえてくる。

「こっちの方が可愛い・・・」

「修理早かった・・・」

お店によって修理の速さが違うのか、若しくは鍛冶屋なのか様々な思いを巡らせるととうとう自分の番になった。

「いらっしゃい。まだ初期ポーションの販売と修理加工しか出来ないけどいかがしますか?」

優しそうなお姉さん。

「お兄さんだいぶ鍛えているようですね?スキル増えました?」

これはNPCじゃない!びっくりした顔をしてしまったのか、

「私はNPCじゃないですよ。びっくりしてるようですが、戦うだけでなく商人もできるみたいで、始めてみました。」

店員は作業をしながらいろいろと話しかけてくれた。


聞かれてスキルを確認すると[殴打ⅰ]と言うスキルが点灯している。

「やっぱり木の棒で殴ってるだけだと[殴打ⅰ]ですか?」

ニコニコしながら俺が話をする暇もなく心を見透かしているように喋り続ける。

「あ、あの、加工って何ですか?」

コミュニケーション能力には自信があったが少し吃りながらも質問をしてみた。


「最初に支給された木の棒は加工することによって様々な武器に変わります。」

「お店を開くことで誰でも出来るみたい。」

「剣!お願いします。」

相手の言葉を遮って注文した。


代金を支払いすぐに狩場へ戻る。木の棒だった武器は剣の形をし、ようするに木刀だ。攻撃力も上昇し、狩りの効率は格段に上がった。

大きめな犬は気の棒で殴っていた時よりも数回攻撃を減らして倒すことが出来るようになった。[殴打]は鋭利な武器では使えないようで、木刀では発動しなかった。木の棒の通常攻撃50回で[殴打]は覚えたようだ。木刀でも同じことが言えるだろう。スキルを覚えればさらに先に進める。レベルが上がれば能力も上がる。

強くなりたい。このゲームで最強を目指したい!

すでに俺はこのゲームの虜となっていた。










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