第7話 星の銀貨
ある町に、ひとりの少女がおりました。
少女にはお父さんもお母さんも亡く、また親戚もおらず、住む家もありません。
身に着けている衣服と、街を訪れた親切な人がくれた一欠片のパンだけが、少女の持つ全てでした。
そんな境遇でも、心優しい少女は、神様に感謝する心を失ったりなどしません。
しかし、少女の名前を誰も知らないっぽいこの町にいると、世界から捨てられてしまったような気持ちになるので、野原へと歩いてゆくことにしました。
高い草の中を歩いていると、やせ細った一人の子供に出会いました。
「お腹がすいて、もう動けないよう」
心優しい少女は、やせ細った子供に、自分のパンを食べさせてあげました。
「ありがとう」
子供は、パンを食べて、町へと歩いてゆきました。
「あなたに神様のお恵みがありますように」
そうお祈りをすると、少女はまた歩き出します。
森が見えてきたころ、裸の女の子に出会いました。
「寒くて凍えそうだわ」
心優しい少女は、自分の服を脱いで、パンツ一枚となって、脱いだ服を女の子に着せてあげました。
「ありがとう」
女の子は、ノーパンのまま町へと歩いてゆきました。
「あなたに神様のお恵みがありますように」
そうお祈りをすると、パンツ一枚だけとなった半裸の少女は、また歩き出します。
陽が傾き、暗くなった森の近くにやってくると、チビ禿デブの三重苦を背負った中年の全裸男が倒れておりました。
「着る物がなくて困っています」
どう考えても通報懸案ですが、心優しい少女は、パンツを脱いで全裸になると、中年男に履かせてあげました。
「ありがとう」
少女のパンツを履いたチビ禿デブの三重苦な裸中年男は、町へと歩いてゆきました。
「あなたに神様のお恵みがありますように」
お恵みどころか中年男は町で逮捕されるでしょうが、裸になった少女は、また歩き出します。
一糸まとわぬ全裸になってしまったので、やがて明るくなっても、もう町へは帰れません。
やがて、暗くなった森の奥で、少女は湖を見つけました。
誰もいない湖のほとりには、誰も住んでいない、立派な小屋があります。
広い湖はとても澄んでいて、清らかで、そして優しい光が溢れておりました。
「まあ、なんて美しい湖なのかしら。それに、お空のお星さまも、湖でとてもきれいに輝いているわ」
湖面で幻想的に反射する、美しい銀色の星たちを見ていると、少女の足下に、星たちがきらめきながら降ってきました。
「お星さまが、たくさん降ってきたわ」
そう思って、足下で優しく光る星たちを拾ってみたら、それはなんと、ピカピカの銀貨でした。
心優しい全裸少女の許には、たくさんの銀貨だけでなく、パンやお菓子、魚や野菜、紅茶や暖かいスープなどが、降り注いできます。
服だけは、降り注いできませんでした。
「神様の、お恵みだわ」
裸の少女は、銀貨や食べ物を拾って小屋へと集め、ずっと豊かに、幸せに、裸のまま暮らしました。
~終わり~
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