たまには



「歌ー、今日カラオケ行かない?」

「・・・・うーん、ごめんね、今日はパス!」


私は、そう言ってその場をやり過ごそうとした。


「歌がいないと盛り上がらなーい!」

「そうだよ歌~!めちゃ歌上手いじゃんよ〜」

「ごめん!また今度にしよ。それに先週も行ったじゃん、カラオケなら」



ごめん、また今度。

今日、ピアノのレッスンがあるの。


私はそういって鞄を抱えてその場を去った。

ピアノのレッスンがあるだなんて、嘘。

確かにピアノは練習しなくちゃいけないけれど、今日はカラオケっていう気分じゃなかった。


一人で帰り道を歩く。

一人で帰るなんて久しぶりだ。


「あれ?城之内?」


後ろから話したかけられた。

クラスメイトの青柳君だった。


私は青柳君のことがちょっぴり気になる。


「お前、仲村達とカラオケ行かなかったんだ。」

「え?・・・うん。」


まさかそんなことを聞かれると思っていなくて、嘘をついたことに罪悪感を覚える。



「・・・私、嘘ついたの。」

「え?」

「今日はピアノがあるって。」



私は、なんて馬鹿なんだろう。

こんなこと言ったって仕方ないし、青柳君に嫌われてしまう。

そう思った時だった。

青柳君はニコリと笑う。



「そうゆう時だってあるんじゃね?」



それは、なんとも頼もしい顔だった。

私はどんどん本音がこぼれてしまう。



「今日はあんまり乗り気じゃなくて・・・」



あぁ、なんて私はこんなことしか言えないんだろう。

そう思った時だった。



「じゃあ、今日は暇だよな?」


青柳君はそう言って私の腕を掴んだ。



「俺とスタバでも行くか」

「え?」


私、そんな間抜けな返事をする?


「ちょっとだけ贅沢してもよくね?疲れた時は甘いもの飲みたいじゃん。」


青柳君は、そういってニッと口角をあげる。

一緒に出かけるなんて、信じられない。

しかも二人で?


「行こうかな。」

「よしっ!えっと、俺のオススメはだな・・・・」


私って、ちょっと狡い?

でもいっか。今日ぐらいは。



私は青柳君をみて一言「ありがとう」とつぶやいた。



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