二人の共通点
「えー、山下君?ないないない!もっとカッコイイよ!!」
「泉君は?」
「うーん、そこそこ?」
女子たちがカッコイイ人とそうでもない人のランキングをつけていた。
あー、俺は?
さりげなくその会話を聞いてみる。
「青柳?」
「あー、顔はいいけどねさあ、馬鹿じゃん。体育以外。」
「そうなの?意外だね!!」
「青柳のお兄さんとお姉さんが双子なんだけど、格好いいし、美人で成績も優秀だったんだって!」
俺はこの会話にムッとした。
確かに、兄と姉はも頭いいし、俺はそんな二人が大好きだけど、比べられるのが果てしなく嫌だった。
だって、あの人たち絶対特殊型だから。
兄は勉強が好きだし、姉は要領がよかった。
「青柳はなんか逆だよね。」
「お姉さんと似てるよ!スポーツはできるから!」
くそ!すき放題いいやがって!!とは思ったが、いくら番付が良くたって、好きな人に振り向いて貰わなくては意味が無い。
(どっかで寝よ)
とりあえず、いつもの音楽室へ向かう。
二重になっているドアを開けると、ピアノの調べが聞こえた。
心地好いピアノのメロディー。
俺は、教室での殺伐とした雰囲気から一気に解放された気分になる。
そして、そのピアノが停止をしたときに、城之内が俺を見ていることに気づいた。
「青柳君だ。」
にこりと笑った。
「どうしたの?また昼寝しにきたの?」
「まあそんなとこ。お前は女子たちと一緒に番付しねぇの?」
「番付?」
「クラスで誰が可愛いとか、誰がカッコイイとか。」
「あぁ、聞かれたけど、上手く撒いてきちゃったから。」
くすりと笑う城之内は、ピアノの近くに椅子があるのに気づき、俺に手招きした。
「意外だったな。青柳君って、みんなの人気者でしょ?
みんなとワイワイしてるのかと思ってた。」
「いや、それ俺が城之内に対して言いたかったんだけど!」
俺はピアノの近くの椅子に座った。
城之内とは初めて同じクラスになった。
「皆とわいわいとするの、好きだよ。」
城之内はぽつりと言った。
そしてその後、困った笑顔をした。
「でもね、時々疲れちゃうの。」
同じだ、と俺は思った。
だから寝てとけば、誰も話し掛けてはこないって考えて、いつも机に突っ伏してみたり、適当に教室から抜け出してみたりした。
「わかるな、それ。」
俺も同じことを思っていることを、知ってもらいたかった。
「本当に心から話ができる人っていないんだよな。
笑顔でいろんなこと包み隠してさ、疲れてさ。」
ほんと、悪循環だ。
そう言うと、城之内もまた口を開く。
「だったら、もっと自分らしくいればいいに・・・友達を失うのが怖いんだよね。」
「そう。」
二人でそんな話をすると、どちらからともなく笑い出す。
「あーあ、まじかよ!」
「青柳君だって!」
「俺らなんなんだ」
「ほんとにね!」
クラスではこんな会話できなかったのに、今こうして二人で話した。
女子の中心の城之内。
男子で中心の俺。
こんな共通点にびっくりした。
「安心した。城之内ってあんまりにも完璧だから。」
「私も。」
「俺は違うよ。勉強とかできねぇし!」
「そうゆうものじゃなくて、青柳君には不思議なものがあるんだよ。
人を引き付けるような、ね。」
城之内はそういうと、再びピアノに手を置いた。
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