違う世界


同じクラスで、同じようにクラスメイトから頼られていているのに、俺とあいつは違う世界にいるように感じている。


別に仲が悪いとか敵対しているとかじゃないけど、やっぱりと女子と男子では何か壁があるのかもしれない。


「城之内って、可愛いよなあ」


クラスメイトの男子が言った。

遠目から見えた城之内歌を俺も見た。


軽やかなボブヘアーで、やや痩せ型。

色白で、コロコロと変わる表情は可愛い。

元気で明るくて人気があるのも頷ける。


「太陽はあんまり恋愛とか興味無さそう。」

「って、思うじゃん?しっかり告白されてたぜ」

「え!?まじで!?」

「4組の田中さんだっけ。」


よくつるんでる友達のグループの中で、そんな話が繰り広げられていたが、俺はあんまり盛り上がれなかった。


「でも太陽さあ、断ってたよね。」

「まじか!田中さんって結構美人じゃない!?」

「いや、俺は今はそうゆうのいいよ!俺にはつわなくない!?」


俺は今は彼女が欲しいとか思っていなかった。


昔の初恋が、わりと最近二度目の失恋をしたばかりで、もうしばらくそうゆうのはいいかなって気分だった。


たまに、本当にたまに、そうゆう会話が疲れる。


友達が嫌いとかそんな事は思ってないけど、ずっと明るく振る舞うのは難しい。


「城之内って可愛いけど、住む世界が違ってそうだよなあ。てか、特定の男子と仲良いとか話してるとかあんまり見ないよな。」

「クラスのまとめ役ではあるけど、基本女子といるもんね。」


ふーん、そうなんだ。と俺は話している内容を聞いていた。


(そうか、こいつら城之内がゴリゴリの現代曲弾いてんの知らないよなあ。

こんだけ可愛いとかなんだって言われて、弾いてる曲がショパンとかならまだ分かるけど、ハチャトゥリアンだぞ?)


ハチャトゥリアンが悪い訳では無い。

あのゆるふわ系でいきなりハチャトゥリアンの「トッカータ」を弾くなんて誰が想像できただろうか。


(普通にアラベスクとか弾いてそうだったけどなあ)



俺とあいつは違う世界にいた。

しかし俺はあいつの世界に少し踏み出した。


(今度は城之内に現代曲を聴いてもらうか。)



俺は遠目から城之内を見た。

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