第7話 やはりお家騒動
西郷によれば、写真の4人は、子供の頃から仲が良く、先代の師匠が亡くなって、先代の長男である元春を3人で支えていこうと奮闘していたらしい。
『それほどの方々が、3人で
戻られて。
後で、元春先生が京都で。
なんのことかと思ってま
した。』
『なるほど、示現流総本部では
そういう見方をしてはった
んですね。
ということは、この写真の
シャッターを押した人が誰
かということですか。』
勘太郎の質問は、少し違った答えになった。
『いいえ・・・
最初、鹿児島を出発しはる
時には、各々の家老が着か
れていて荷物係とかもで20人くらいで。』
本間と木田と勘太郎は困ってしまった。
的が絞れてきたのかと思っていたが、まだまだ20人。
しかし、的外れではなくなってきているようだ。
西郷からの手配で。次春・高春・宗春の3人が、鹿児島港で勘太郎達を待っていた。
『京都の刑事さん達が、捜査
に来られたと聞いて、もの
すごく嬉しかったです。
元春が、なぜ誰に殺された
のか。
俺達の誰の何が悪かった
のか。
その辺がわからないまま
では、前に進めません。
ですから、今日は各人の家
老には知らせてません。』
3人も、自分達の家老の誰かが犯人ではないのかと疑っているのだ。
それにもまして、木田と勘太郎の来訪が嬉しかった。
『北辰一刀流の木田先生と柳生新影流の真鍋先生にお越しいただけるなんて。』
と浮わついている。
本間は、とにもかくにも、家老以外の荷物係の付き人に事情を聞きたいと3人に頼んだ。
3人は、快諾したのだが、来ない人間が数人。
いずれも、高春の家老田中新吉が準備した者。
『その田中さんって、まさか
田中新兵衛の子孫とか。』
勘太郎は、まさかと思っていたのだが。
『そうですよ。
新兵衛のひ孫に当たります。』
その質問を頭からわからない梨田と佐武。
『勘太郎・・・
なんや、その田中新兵衛。』
さすがに本間と木田には、わかるようで。苦笑いしている。
『幕末の維新志士や。
幕末の四大人切りの1人。
土佐藩の岡田以蔵と並ぶ
暗殺の達人。
やけど、まさかな。』
それが当たりというなら、幕末のような動乱期の暗殺者の子孫というだけで、殺人犯と疑われては、たまらない。
幕末の動乱の中、田中新兵衛と言えど、上役の命令もなしに暗殺をすることなどあり得ない。
勘太郎達は、とにもかくにも、少し休憩することにした。
天文館通に案内してもらった。
『鹿児島に来て。
このくそ暑い夏に。
白クマ食わんで帰れる
かい。』
本間が言い出してくれたので、京都府刑事は、これ幸い。
白クマは、鹿児島発祥の氷菓。
分類はかき氷なのかアイスクリームなのかは、意見が分かれるところ。
『むじゃきでしょう。
むじゃき。』
木田がはしゃぐ。
天文館むじゃきという白クマの名店。
店の前には行列ができることもしばしばという。
本間達6人と示現流の面々では、さすがに入りきれない。
しかも、店の前にツアコンの清水がいる。
『ということは。
祇園乙女座の連中が中に。
下手したら萌ちゃんのファ
ンが。』
木田の危惧が的中。
『こんな時に。
的中せんでもえぇやないか。』
本間と勘太郎は大爆笑。
釣られて梨田と佐武も爆笑している。
示現流の面々にはちんぷんかんぷん。
『今。むじゃきの中に、高島萌がいるんですよ。』
勘太郎が説明すると、付き人が騒ぎ出した。
『サイン欲しい。
握手したい。
そう言えば、高島萌ちゃん
って旦那さんが、京都の刑
事さんやって雑誌で見まし
たけど。
まさか。』
と6人を見る付き人の面々。
『ごめんなさい。
それ、俺です。』
勘太郎が手を上げた。
付き人達は、納得した。
『いやいや・・・
真鍋先生やったら、なんか
なるほどですね。』
変な納得ではあるが、それで彼等が落ち着くならそれでいい。
白クマを食べながら、捜査について話しをしていると。
勘太郎の携帯電話が鳴った。
『あら・・・
女将さん・・・
情報ありがとうございます。
すぐにでも行きたいんです
けど、実は今、鹿児島で
して。
ハイ・・・
帰ったら、すぐにご連絡し
ます。
それで、ご都合が良かったら
お伺いするということで。
ハイ・・・
ありがとうございます。』
余呉湖のレストランの女将から、貸しボートの事務所に取り付けた防犯カメラに東郷元春が写っているという。
『しかも、2人でボートに乗
ったらしいんです。』
『お前、それって手がかりか
もしれへんぞ。
こんな所で氷食うてる場合
ちゃうやろう。』
木田が勘太郎を急かそうとした。
『いやいや・・・
警部補・・・
今から、帰る言うても、鹿
児島空港で伊丹行きに乗れ
るかどうか。
清水さん、鹿児島空港発伊
丹行きの今日の便って取れ
ますか。』
ツアコンがいると便利だ。
『旦さん・・・
今からやったら、
不確実な飛行機より
新幹線の方が良いと思いま
すよ。』
そう言って、何やら電話をして、ニッコリ笑った。
『旦さん・・・
的中しました。
京都まで6人さん指定席。
今日中に、京都に帰って、
余呉湖は明日の朝てな予定
になりますけど。』
さすがにプロである。
勘太郎達が考えるより、確実に早く京都に帰れることになった。
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