第4話 顔を出す

勘太郎は、やはり俊寛僧都が無関係とは思えない。

レストランの女将さんが、出来上がった防犯カメラの画像プリントを持ってきてくれた。

その頃、梨田が湖畔のボート乗り場で水を採取していた。

近くに佐武が付き添っている。

最近、梨田と佐武は師弟のようになっている。

梨田が採取したペットボトルの水の水質を、佐武が即刻検査していくという連携をしていた。

そこに、勘太郎と萌が手を繋いで近づいた。

『先生、出ました。

 そこの木の先の水です。』

勘太郎も意味がピンときていない。

ましてや、勘太郎と萌の後ろにいた本間と木田には、ちんぷんかんぷんな行動。

『サブちゃん、やったなぁ。

 被害者は、ここで。』

その時、梨田が4人に気がついた。 

『警部・・・

 ここですわ、

 被害者は、ここで死にま

 した。』

本間は、梨田と佐武がなぜ強硬に同行したがったのか、意味がわかった。

しかも、佐武がボートに木刀が残っていたのを発見。

『勘太郎・・・

 関係ないとは思うけど。

 こんな物。』

木刀を見た勘太郎。

『サブちゃん・・・

 木刀の握り手の指紋頼む。

 下手すると、被害者の物か

 もしくは犯人の物もしれ

 へん。』

それを聞いていた木田、剣道の達人だけに反応した。

『なんでや・・・

 なんで、その木刀が被害者

 のやねん。

 ましてや犯人のって、』

勘太郎が、驚くべき事実を打ち明けた。

『僕が調べたところ。

 東郷元春さんは、東郷重位

 の子孫です。

 僕は、流派の跡目争いやと

 考えてます。

 もし万が一、その木刀が被

 害者の物やったら。』

本間と木田は、飛び上がるほど驚いた。

『勘太郎・・・

 東郷重位の子孫というこ

 とは、被害者の東郷元春さ

 んはまさか。』

『ハイ・・・

 薩摩次元流の次期総帥です。

 次期家元の座を争う。

 お家騒動かもしれません。』

勘太郎の想像に過ぎないが、本間と木田には、インパクトが十分過ぎた。

流派は違うが、2人共かなりの剣道の達人。

東郷重位へのリスペクトは強い。

『一撃必殺・・・

 二の太刀要らず・・・か、

 たしかに、類い希なる豪劍

 だが、今の時代に・・・。』

本間は、何か考え込んでいた。

本間は、薩摩次元流と同時期に創設された鹿島新当流の使い手で、その腕前は免許皆伝。

木田は、毎年全国警察官剣道大会や日本選手権大会で優勝を争うほどの達人。

千葉周作による、北辰一刀流の免許皆伝。

2人は、勘太郎が三島村に行くべきと考えていることを理解した。

勘太郎は、余呉湖に来て、レストラン余呉湖の女将がくれた写真の東郷元春以外の3人も気掛かりになっている。

女将の記憶は曖昧な点があるとは言うものの、人数や行動を覚えていた。

それによって、余呉湖のどこの水で溺死したのかを特定することができたのは間違いのない事実。

となると、この写真の3人に犯人がいる確率が非常に高くなる。

『この3人も、人物の特定が必要になりましたね。』

そうは言いながらも、まだ手を繋いで湖畔を散歩する勘太郎と萌。

後ろを歩く、本間と木田と梨田と佐武の4人。

はた目には、同じグループには見えないだろう。

本間と木田は、鹿児島県へ行く段取りを考え始めていた。

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