のぼれない歩道橋
千尋
夜
夜になると歩道橋にのぼる 途中で缶コーヒを買って
大した高さのない歩道橋から光を放って前進する塊を見つめる
別に意味なんかない 意味なんかない
アルコールで自我を失いかけた男女が楽しそうに通り過ぎる
死ぬところだったりして 女が笑う
ソレも面白いなあと思う
先月はセックスせず新しい月を迎えたことを思い出して
セックスしてからにしようと思う
スマートフォンの連絡アプリを開いて 一番すきな人間の名前を探す
セックスを誘うために探す 友達の連絡は無視して
いっそのことアプリを消してしまおうか
アプリを消したら私と連絡を取れる人間は何人いるのだろう
みんなの記憶から消えちゃえば 私は死んだのと同じだ
連絡を返していない友達は そんなこと許してくれないかな
どんなに冷たくしても 連絡を返さなくても
しつこく連絡をしてくる彼女は
痺れを切らして家まで押しかけてくるのだろう
しつこくていやになる
そんなことになる前に夜が終わったら連絡を返そう
のぼれない歩道橋 千尋 @la_t_r
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