139話【ヴァジュラ】
◇ヴァジュラ◇
異世界【ジュラ・レダ】。戦いの終わった、平和になった世界だ。
その世界で開発された【
人間だった彼女は、世界を救った【勇者】の武器だ。
見た目は
それは、エドガーにとって
そして略名で呼ばれるその名は、
「ヴァジュラ……さんは、“召喚”されて、怒っていますか?」
ヴァジュラを“召喚”した張本人。
エドガー・レオマリスは、テーブルの上に乗る彼女に問う。
『そんな事。知ってどうするのだ?
「……そう、ですか」
その言葉に、少しは安心できた。
そして、本来“召喚”するはずだった槍が目の前にあるという事にも。
「しっかしだなぁ……
「赤いの止めて。私はローザ、ローザ・シャルよ」
「クックック……
なんだか久しぶりに聞いた気がする。
そんな【召喚師】エドガーと、異世界人二人と一本の
「ヴァジュラさん。
その問いに、テーブルの上のヴァジュラは《石》を
『ふむ……“召喚
エドガーは、これでもそうとう
「す、すみません……」
テーブルの上に向かって頭を下げるエドガーに、ローザもフィルヴィーネも何も言わなかった。
それは、ヴァジュラの言いたい事が、
ヴァジュラの言いたい事。エドガーに
『違う。そうではないぞまったく……いつもこうなのか?いや、なのでしょうか……?』
ヴァジュラはフィルヴィーネを見ているらしい。
「……そうだな、そういう奴だ。この男は」
「そうね。初めの時からそうだわ……」
フィルヴィーネの言葉に、ローザも同調した。
他の異世界人の誰かが居ても、同じく
そして当の本人は、キョトンと意味も分かってなさそうに首を
「えっ……と、どういう事、ですか?」
そんなエドガーに理由を
『……エドガーよ。
「はい?武器……槍、なんですよね?」
『である。そのたかが武器である
「……」
エドガーは、意味が分からなかった。
彼にとって、ヴァジュラは人だという事なのだろうが、それは槍である彼女には通用しないのだろう。
『
「……で――」
いつもは
極力言わないように
「――僕にとって、
ローザとフィルヴィーネに見られている。
それに気付いて一瞬だけ止まる。止まるも
「
「でしょうね」
「だろうな」
赤と紫が同意した。
「私を呼び捨てにする時も、戦いの
「そもそも
「……は、ははは……」
『そうなのか……しかし
最後の言葉は、ヴァジュラの本心だった気がした。
人の身体を金属に変えて、この少女は世界の為にその身を
別の世界に来たとは言え、自分がもう人間ではない事は変えられようのない事実だ。
「……分かり、ました……
『わーっはっはっはっ。ああ……それでいいさ』
大笑いした後、ヴァジュラはエドガーの
そしてそれを聞いていたフィルヴィーネが。
「ふむ……それならエドガーよ。
まるでいいきっかけが出来たと、それを利用して。
ローザはフィルヴィーネの後頭部を見ながら。
「それもいいんじゃない?」
と、エドガーに言う。意外だ。
そして言われたエドガーも、苦笑いしながら。
「わ、分かりました……フィルヴィーネ」
「――クックック……いいものだな。だが、人前では止めるのだぞ?
ドヤ顔で、何とも
◇
話しは進む。
槍としての生き様をエドガーに
それは、エドガーとローザが一番気にする事であり、一番
『
「……誰でも使えるってわけではないの?」
ローザの言葉に、ヴァジュラは。
『当然だ。これは《石》の適正と同じでな……
「その
エドガーはローザと
聞かれたヴァジュラは、嬉しそうに言う。
『そうさな……一つは
「「……」」
その真剣な
そしてヴァジュラは、一呼吸おいて、四つ目の
『最後の
「……え?」
「……は?」
「ふむ。神話ではよくある話だ……」
その
「……エドガー」
「え?何?」
後ろから声をかけられ、エドガーは振り向いてローザを見る。
その赤い目は、どう見ても
エドガーも気付く。ローザは「エミリアに何もしてないでしょうね?」と言いたいのだと。
「……し、してないよ!この前も言ったじゃないか!!」
「そう。ならいいけれど……」
腕を組んで、安心なのかどうなのか分からないような
エドガーは一筋の汗を流すも、
「ヴァジュラ……それなら、一人紹介したい人がいる……」
四つの
そもそも、それが今回の“召喚”の目的だったのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます