133話【進んで行く者たち2】
◇進んで行く者たち2◇
【王都リドチュア】。宿屋【福音のマリス】の一室で、
今日、この女性の“契約者”である少年は、“召喚”を行う
最近、この女性は
それを少年にも心配されたし、仲間の女性には「引きこもり“魔王”」とも言われて腹を立てたが、何とか怒りを抑えて今に
しかし、その怒りが頂点に
その代わりに部屋にいるのは――。
「……あ、あの……ニイフ様――いえフィルヴィーネ……わたくしは、どうして呼ばれているのでしょうか?」
「――
ギロリと、“魔王”フィルヴィーネ・サタナキアは、ドロシー――いや、スノードロップ・ガブリエルを
スノードロップは冷や汗を
「い、いえ……存じています……
あの話。スノードロップがそう言うソレは。
スノードロップが言い出した事だった。
仲間が来たら、フィルヴィーネの仲間たちに事情を話すと、そう約束していた。
そして、フィルヴィーネも当然気付いている。
「……」
無言の圧だった。
それだけでも、一般人なら
魔力も《石》も
がしかし、スノードロップも
「もう
スノードロップは、ドロシーの姿のまま床に
真剣に、圧に
「わたくしは……必ずや約束を果たします……その後にどうなろうとも構いません!ですので、ですのでどうかお時間を……!!」
スノードロップの仲間、ノイン・ニル・アドミラリ。
そして帝国
眠ることの多いエリウス、それに
はっきり言って、計算違いも計算違いだ。
本来、
しかも、魔力を分け与えている
スノードロップからすれば、どうしてそこまでするのかとノインを疑いたくなるレベルだったのだ。
フィルヴィーネは、指をトントンする事をやめ、しゃがみ込んでスノードロップの
「……ならば
ゾッとした。一瞬で“神”の如きオーラを発して、
目が合う。たったそれだけで、
「……何を、すれば……」
“天使”は“神”に
それは自然の
そしてニイフは、“魔王”でもあった。
スノードロップの問いに、口端を盛大に
「――簡単な事だ。お前が【召喚の間】から持ち去った……《
「――!!……初めから、それが目的だったのですね……フィルヴィーネっ」
スノードロップも気付いたが、もう遅い。
“神”の言葉で
「……遅いのだよスノードロップ。
「くっ……仕方ありません。それでも、待っていただけると言うのなら……」
そう言って、スノードロップはこの宿にドロシーとしてやって来たその日に回収した《石》を取り出す。
「まさか、そのためだけに怒った
「――クックック、言うなガブリエル。
「世界を……変える?エドガー様が……?」
世界を変える?エドガーが?その為に、わざわざ演技までして《石》を?
「……わたくしに
「
フィルヴィーネはスノードロップの
しかしスノードロップは、そのまま流し目で。
「違いますわ……世界にではありません……――エドガー様に、です」
「……」
その答えに、フィルヴィーネは何も答えなかった。
しかし、否定もしないその表情は、どことなく気まずそうに、けれどもどこか満足そうな顔だった。
◇
【召喚の間】で、エドガーとローザが“召喚”の為の最終チェックを行っていた。
一つ一つ“魔道具”を確認し、それぞれ複数個ずつ用意した“魔道具”もある。
その理由は、エドガーの通常の“召喚”の
エドガーの“召喚”は、一つの物しか呼び出す事が出来ない。
複雑な
詰まる所、槍を“召喚”し、完成させる為には、何度かに分けなければいけないのだ。
「よし。一番重要な金属が手に入った事が、やっぱり大きいね。しかも加工されてるから、手間も
特殊金属【アルヴァリウム】は、槍の
「
ローザの疑問にエドガーは、【アルヴァリウム】を
「そのための一本化だよ。強度をあげれば、パーツが少なくても強力なものが作れると思ったんだ。それこそ、ローザが作り出す炎の剣のようにさ……」
「……なるほどね」
元々ローザの考えとしては、槍のもとになる
しかし、エドガーは初めから、ローザの力を求めなかった。
それならば、ローザだって強くは言わない。
彼の成長を喜ばしく思うのは、何も“魔王”だけではないのだ。
「でも、
「……うん。聞く所だとね」
南の情報を知らないエドガーは、以前にちょこちょこ聞いた情報や、マークスから教えてもらった事などで想定した。
だから、“召喚”を急ぐに越した事はない。
「でも……本当に
「“召喚”する為の“魔道具”がこれだけあって、まだ何か足りないの?充分だと思うけれど……」
エドガーが不安視するのは、“魔道具”が足りるか、なのだろうか。
固めて置いてある“魔道具”を見て、エドガーは「う~ん」と
ローザはやれやれと言いたそうに立ち上がり、エドガーの隣に。
一言掛けてあげようと、息を吸った瞬間。
「――それならば、
後ろから掛けられた声に、二人は振り返る。
「……フィルヴィーネさん?」
「……何しに来たのよ、引きこもり“魔王”」
エドガーは
久々に部屋から出てきた“魔王”様、フィルヴィーネが、【召喚の間】にやって来た。
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