132話【進んで行く者たち1】
◇進んで行く者たち1◇
【リズリュー
エミリアたち【聖騎士】の面々は
夜は必ず休み、
食料も節約して、水浴びなどもしていない。
女性にとっては最悪な
そんな中で、エミリアは馬上にて、槍を
「……」
今は休憩中であり、
エミリアが対面しているのは、同じく馬上のオルドリン・スファイリーズ。
二人は武器を
そして、その始まりは
「――はっ!」
「……!!」
オルドリンが馬の腹を
遅れてエミリアも走り出させるが、やはり一歩遅い。
「――遅いっ!」
「……くっ!それでもっっ!」
オルドリンの
槍のように長い刀身は、ローザの使う剣とはまた違い、中々に戦いにくいものだった。
何せこの数日エミリアは、休憩の
一度も負かせてはいない
「
「――いぃっ!!」
ガギィン!とエミリアは腹に目掛けられた剣を槍で
訓練な以上、寸でで止める約束だがそれでも怖い。
エミリアは馬上で
「――ぅんんんんんんんんっ!!」
「――!」
今までにない反撃に、オルドリンはハッとしてそれを
すると、ガッ――!!と音を鳴らした槍は、そのまま
エミリアの槍、【
しかしオルドリンは、馬ごと身体を無理矢理
ヒヒヒヒィィィィン!!
「え!!……ス、スティング!あぁぁぁぁ!落ち着いてぇぇぇ!!」
エミリアの愛馬、栗毛の
どうどう、と何とか落ち着かせたエミリアだったが、背後に感じた剣の冷たさに。
「……ま、参りました……」
と、
車輪を
槍の刃はまた
「……」
(これってやっぱり……王都から離れたからだよね)
槍の魔力はローザのものだ。そのローザから離れてしまい、魔力を
しかし、そうではない。
槍は正常であり、魔力だってそこまで
では
エミリアは、
自分の魔力を。エミリアは
それが、ローザの魔力と相反して、槍の強度を
しかし現在、魔力を持つ人間はここに誰も居らず、その事実は誰も知る事はなく進んで行く。
もしローザや他の異世界人でもいれば、エミリアが持つ魔力を感知する事は出来たかもしれないが。
そんな見当違いの答えを考えているエミリアに、他の騎士たちの訓練も終えたオルドリンが声を掛ける。
「お疲れ様エミリア。最後のあれは、いい攻撃だったわね」
「――お疲れ様ですオルドリンさん。今日も勉強になりました、ありがとうございます!」
オルドリンは|革水筒をエミリアに渡す。
それを受け取り感謝するエミリアの隣に、オルドリンは腰掛けて髪を
「ふぅー」とすっきりしたように笑顔を見せて、エミリアも笑う。
訓練を終えた他の騎士たちは、どう見てもへとへとだった。
なお、ノエルディアは馬車の中で爆睡中である。
「サボりのノエルは後で個人的に訓練をするとして……」
オルドリンの視線は、槍だった。
「……とても良い物ね、その槍」
「……はい。幼馴染と、親友からの
大切そうに、槍の手入れをしながら言うエミリア。
その
「……好きな子かしら?」
「――えっ!!……な、何でです?」
「そんな顔をしていたから……どちらかと言えば、幼馴染の子かな?親友っていうからには、多分女の子なのでしょうし……でもって、その親友とは恋のライバルって感じなのではない!?」
「――え、ええ!?」
(オルドリンさん!?どうしちゃったの急に!!)
目を
しかし、
「……ごめんなさい。取り乱したわ……」
恥ずかしそうに、
「も、もしかして……オルドリンさんって」
もしかしなくてもそうだろう。
「……え、ええ。私、こう言う話をするのが好きなの……大好きなのっ!!」
オルドリン・スファイリーズ。
騎士学生を卒業後、【聖騎士】に昇格した男爵家の娘。
学生時は【騎乗の
そのクールで優し気な見た目とは裏腹に彼女は、恋愛話に
「そ、そうなんですね……」
(い、意外だなぁ……でも、なんだか可愛い。
「そうなの……昔からこう言う話の本ばかり読んでいて、経験もない
「いや、でも……」
もっとこういう面を出してもいいのでは?と言おうとしたエミリアだが。
「いいの!お願い忘れて!お、お願いします!!」
「――えぇぇぇぇ!?」
エミリアに深々と頭を下げるオルドリン。
どうやらそこまで知られたくないらしい。
「オルドリンさん!見てます、皆見てますから……あ!忘れた!なんだっけなー、何の話だったかなー。私、記憶力
身振り手振り大げさな
「そ、そう……それならいいけど……」
まるで下手なお
◇
軍行を再開し、疲れ果てた
「つ、疲れた……」
「あんたねぇ……もう
向かいに座るノエルディアに言われ、少しカチンときたエミリア。
ついつい。
「……サボリディア
「――ぐっ……」
あの後、サボリディア――ではなくノエルディアは、オルドリンにシバかれた。
個人的に、騎士たちの目の前で。
お仕置きも
「あんたねぇ。
「なら、言って良い事言いましたけど、言いましたけどぉ!?」
「――ぅぐっ!!」
予想以上のエミリアの
すると、窓がコンコンとノックされ。
「二人共、着いたわよ?」
「……あ、はい」
「……はぃ」
オルドリンにそう言われて、二人は馬車から降りる。
そこには、森林地帯に
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