126話【人として生きる】
◇人として生きる◇
【異世界召喚】の責任を持つエドガーは、誰の想いにも答えない。
たとえ自分が誰かに恋心を
近い未来の戦いを
少年にそう決意させたのは、
人に
エドガーが初めてそれを手にした時、確かにエドガーの【召喚師】としての物語が始まった。
それと同時に様々な場所でも、同じく動き出したものがある。
【
彼女が、異世界人たちの最大の
だが、エドガーたちはその事実を知らず、そのエリウスでさえも、【
そして“天使”スノードロップ・ガブリエルを始めとする、他の異世界人たちの物語。
過去にエドガーから“召喚”された彼女らは今、エドガーのもとだ。
身分を隠し、素顔も名も隠し、かつての主の
そこには、【
更には、同じ【王都リドチュア】に、【魔女】ポラリス・ノクドバルンまでもが、エドガーに近付こうとしていた。
そして、エドガーの父であるエドワード・レオマリスの物語。
彼はシュルツ・アトラクシアと名を
目的はエドガーだと言うのは間違いない。
しかし、エドワード・レオマリス、その真の目的はいったい――。
いづれにしても
そして、その意志の向かう場所は全て――【リフベイン聖王国】だと言う事だ。
◇
メルティナとの
先程からかった
「それでは、《石》の解除……お願いします、マスター」
「わかったよ。メルティナの言う通りにやればいいんだよね?」
「イエス。自分で出来ればいいのですが、
メルティナの《石》は、
手だけなら届くのだろうが、
だから、エドガーが代わりにやるのだ。
「ではまず……ベースの連結を外します」
「ベース?って……《石》が乗ってる台座みたいな?」
「イエス。そのベースは、《石》の
「そっか……うん、それで、このベースをどうすれば?」
「まずは、右上、左下のボタンを同時に押して、右を左に、左を右にスライドさせて下さい。そして離します」
「……うん」
エドガーはそっと親指だけで触れようとするが。
「マスター。それでは
「――い、いいの?」
「イエス。もう変な事は言いませんので、
「言い方!」とエドガーは
「フフフっ……」
(なるほど。マスターは押せばいいのですね……)
エドガーは、押せば攻略出来るかもしれない。
そう思ったメルティナだった。
「それでは、お願いします」
「――分かったよ。こう、だね」
カチっと右上、左下の突起を押し、横に
すると、《石》を固定していた四つの
「では……次は右下、左上のボタンを同じ様に」
否定しないメルティナ。エドガーは正解だったと安心し次に進む。
「分かった」
カチっ――。
スライドさせて、四つの
ベースの中では、金属で
「……」
「――メルティナ?」
「あ、ノー。なんでもありま……いえ、少し……怖いのかもしれません」
メルティナの表情は
その顔色から
「マスター。《石》はワタシの本体と呼べるものです……以前のワタシからすれば、心と呼べるものは、《石》の中にあったのです……今、《石》を外せば――ワタシの心は、
メルティナは人工知能として生まれ、まさか身体を持つという事は考えられなかったのだろう。
《石》の魔力を媒介にして作り出された人工の心、それがメルティナの考える、
「……メルティナ。大丈夫……大丈夫だよ」
エドガーは、そんなメルティナの頭に手を置き、優しく
「メルティナは、ここにいる。《石》じゃない……僕の目の前にいるよ」
「マスターの?」
「心の
「
言葉は分かっても、理解が
「安心出来る……落ち着く……
「手を?……胸に?」
メルティナは言われるがままに、胸に手を
すると感じる、命の
「トクン……トクンって、感じるでしょ?」
「……はい」
「メルティナの命も、心も……《石》じゃない……きっかけがなんにせよ、メルティナは生きてる。命を貰って、ここにいる。起きてても眠ってても、ここにいる。僕たちの
後ろからそっと
「……はい。マスター……感謝します。命は、ワタシなのですね……《石》ではなく」
「ああ。そうだよ……人なんだ、メルティナも、僕も……生きているんだ」
優しさに
――人。人間。たとえ異世界から来た存在でも、同じだと。
機械であった存在でも、命だと。
メルティナに
人として生きていく覚悟。真に、人間になった瞬間だった。
「すみませんマスター……何度も中断させて……」
メルティナは、何度も不安定になって遅れた事を謝罪する。
エドガーは笑顔で「いいんだ。分かるから」と
もう、メルティナに
自分の
「いいって。さ、次はどうするんだい?」
「イエス!お願いします!」
背を向けるメルティナ。心なしか、縮こまっていた背中が、シャキッと伸びているように感じられた。
「では、ベースから《石》を外す工程に移ります。
エドガーはそっとエメラルドを
ジリリと磁場のようなものが肌に来るが、ゆっくり回転させ。
「回したよ」
「では、ゆっくりと押し込んで……そのまま上へスライドさせて下さい。そうれば、ベースから離れるはずです」
「こうかな?」
エドガーは持ったままのエメラルドを上へ。
カシャ――っと、スロットから抜き取るように。
「……あ。だ、大丈夫?」
聞いたのは、突然取ってしまってもいいのかと思ったからだ。
「構いません。ワタシは、ここに居ますから」
「……そっか。うん、そうだね」
その返事に、エドガーはスライドさせて止めていた《石》を、外す。
《石》を乗せていた台座は、コードのようものがびっしりと
これが、【
形は、エメラルドに固定されているらしく、他の《石》は
そしてメルティナの様子を、エドガーは。
「どう……かな、メルティナ?」
「……」
下を向き、ジッと目を
まさか意識が、とエドガーは
しかしメルティナは、ゆっくりと顔をあげた。
そして、エドガーを向き。
「マスター……」
「メ、メルティナ?大丈夫?」
「はい……心配ありません。ワタシは、ここにいます」
胸に手を当て、優し気な表情を浮かべ。
エドガーがが手に持つエメラルドを受け取る。
自分がこの中に居たと、
「ワタシは、この異世界で。人として、生きていくのです……
人として、この少年の
《石》の中で
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