127話【新しい朝】
◇新しい朝◇
「ありがとうございます。マスター……」
メルティナは外した《石》を、事前に【クリエイションユニット】で作っておいたケースに仕舞った。
「身体は大丈夫……なんだよね?」
「イエス……少し違和感はありますが、いえ……違和感と言うよりも」
「よりも……?」
メルティナは普段から頭に着けていた、耳を
エドガーは「あ、それって取れるんだ……」と
しかしそれよりも、今まで人形っぽいと思って見ていたメルティナが、
「
「視点?それって……」
メルティナは、《石》を中心に行動、または考えを
それが無くなって、今は完全に人間の身体のみとなっている。
その結果、常に視界に
それは、“天使”のジャミングによって不具合を
「とても、気分がいいのです……まるで、生まれ変わったかのように……フフっ、ワタシがそんなセリフを言うだなんて、マスター……いえ、ティーナが聞けば喜びそうな事ですね」
前マスター・ティーナを引き合いに出して、これが人間の見ていた
「……嬉しいんだね。メルティナは」
「嬉しい……なるほど、確かに。理解できます……これは、初めて
「……親、か……そうかもしれないね」
どこか遠くを見るように、エドガーは言う。
「マスター。改めて、感謝します……言葉を
「い、いや……僕は何もっ。メルティナが、しっかり自分と向き合った結果だよ……」
「そうでしょうか……そうですかね」
「あ、そこは
二人は。
「フフフ……」
「あはは……」
笑い合った。
メルティナの笑顔は、いろいろな
「それじゃあ、僕は戻るけど……本当に一人で大丈夫かい?」
「イエス。マスターが持って来てくれた食事を取って、それから眠りたいと思います」
部屋の外に出てから、心配する父親のようにメルティナに問うエドガー。
メルティナも、それを笑顔で聞いているが
「本当に大丈夫?不安だったら、やっぱり僕も、今日は朝まで起きて……」
「大丈夫です」
「う~ん。でも……やっぱり――」
「マスター。しつこいと、
「……」
シュン――とする。
しかし、瞬時にシャキッとし直して。
「……分かった。戻るよ……
「……ノー。お気になさらずに、それでは、おやすみなさい。マスター」
「うん、おやすみ」
ぱたんとドアを閉めて、ベッドに向かう。
身体を何度も確かめながら。
「……ん?」
この違和感はなんだろうか。
なんだか、とても大切な物をスルーした気がするメルティナ。
「……」
『ありがとね――
ボッ――!!
一気に、
「あ……あわ……あわわ……」
両手を当てて、ボフッとベッドに倒れ込む。
顔だけを起こし目を開けると、先程の少年の笑顔が浮かび上がってきた。
「あ――ばぁぁぁぁぁぁぁ!!」
自分から進んで、メルと呼んで欲しいとエミリアやローマリアに言った。
だが、そう言えばエドガーには言っていなかった。
それが、なんだあれは。
突然、エドガーが勝手に呼んで来た。メルと。
「……ふ、
両方に一気に責められて、メルティナはそのまま――
◇
朝。メルティナは空腹で目を覚ました。
「……平気なようですね。身体も……心も」
胸に手を当て、トクントクンと音を鳴らす心音を確かめる。
ぐぐぐ――と背伸びをして、二階の一室である事での
「朝なのに火を
一階も二階もそうだが、【福音のマリス】は内装が
「……お腹が
「マスターが
メルティナはトレーを持ち、どうにかして温めてもらおうと部屋を出る。
「……」
(《石》を外してしまった以上、ワタシは何も出来ないただのお
メルティナは【クリエイションユニット】を腕にはめている。
しかし、
今は、何も出来ない。きっと能力、【
だが、エドガーが同じ考えを持ってくれて、それを超えられると信じてくれる。
「おや……?あれは……!」
一階まで下り、ロビーに出たメルティナが見たのは。
栗色の髪の――女性だ。
ドロシー。姓は不明。
聞く所、「自分の国では貴族しか姓を持たない」と説明したそうだが。
メルティナ見ている事に気付いたドロシーは、
「……」
昨日までのメルティナなら、彼女と目が合った瞬間に
(大丈夫……ノイズも、ハウリングもありません。頭痛も
逃げていた。
ドロシーに
顔が
しかし、
スノードロップ・ガブリエルは、確かにメルティナの《石》に《魔法》をかけた。
それは、記憶に
【東京タワー】で戦った
それはつまり、今メルティナの前にいるのは、
「おはようございます。えっと……メルティナさんですよね?」
「……イエス。あなたは、ドロシー……でしたか……?」
(普通です。違和感も、
「よかった……メルティナさんが普通に話してくださって」
「……申し訳ありません。体調が
メルティナはぺこりと頭を下げる。
ドロシーは「いえいえ!そんな」と
(やはり……ワタシの気のせいだったのでしょうか。それだけ、《石》が不調だった?)
考え始めてしまっては、キリがない。
しかし、空腹は待ってくれなかった。
ぐぅぅ――、とメルティナの腹の虫が鳴く。昨日から数えて、もう何度目だろうか。
「……た、大変ですね、
「……そうですね……では、これを温めて、一緒に食べましょう……」
その
「――そうですね!メルティナさん!」
そうして、ドロシーは
メルティナもついて行くが、その
「……ふんふん~ん」
鼻歌交じりに、ドロシーはスキップでもしそうな
「……ワタシの考えすぎでしょうか」
ぼやけた顔の人物に似た反応は、もう感じる事がない。
違和感は消え去って、メルティナの体調も良くなった。
それをよしとするべきか
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