119話【虚無の国】
◇
【王都リドチュア】を出て西、【カラッソ大森林】。
何もなく、ただ
多少の野生動物と
動物など必要としない、強力な馬力。
その【
一回り大きい【
バルク・チューニ。黒騎士たちの団長だ。
バルクは、手に持った小さな
しばし
「……やっぱり、王都へ近付くほど、魔力が
【
【カラッソ大森林】に入り数日、ついに【王都リドチュア】を目前にした黒騎士たちは、
「――団長ぉ~」
「……あ?」
小さな声でバルクを呼ぶのは、団員の一人ウォイスだ。
【
バルクは糸目を更に細くして、嫌そうな顔をして戻る。
「どした?」
ウォイスはちょいちょいと手招きし、指を自分の座る隣、助手席に向ける。
そこでは、副団長のノーマが眠りこけていた。
シートを倒し、外側に向いて。
ウォイスはノーマのスカートを指差して、「見ろ見ろ」とにやける。
「……お前……」
眠るノーマのスカートは、シートベルトで
それをウォイスは、わざわざ見ろと呼び出したのだ。
団長は仕事をしていると言うのに。
「……ほら見ろよ……黒いぞ~」
「お前、マジで死ぬぞ?」
「バレなきゃいいんだよぉ……へっへっへ……
バルクは「付き合ってらんねぇ」とため息を
魔力の数値はドンドン低下していっており、0~1を行ったり来たりしていた。
「……こりゃ、人員が足りねぇかもな……」
その意味は。
この数値0~1。つまりは、ほぼ魔力がない状態だ。
【
魔力タンクが無くなれば、残るは自分たちの魔力のみ。
エリウスは、騎士団の数人を倒している。
戦うことになれば、おそらく無傷では済まない筈だ。
休憩を終え、【王都リドチュア】に潜入するにしても、これではメンバーの
「……まさか、ここまで魔力が
帝国の
彼もまた、18歳の若者だ。
しかし、彼の知識量は
「……――げっ!!ち、違うんだ……ノーマちゃん……ち、ちがっ」
「……」
どうやら起きたであろう副団長ノーマ・グレスト。
聞こえてくるウォイスの
「――私の下着を
「ち、違うんだ!――ふんぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!!」
ノーマの怒りを、ウォイスはどこで受けたのだろうか。
そんな事考える事もなく、バルクは。
「うるっせーんだよ!!お前らぁぁっ!!」
黒騎士たちは、もう
それは、また一つ、戦いの幕開けであった。
◇
ドサッッ――!!
「――うぐっ……」
ベッドから落ちて、メルティナ・アヴルスベイブは目を覚ます。
「……ワタシは」
自分の身体を触ると、ぐっしょりと
「ボディを
何とか立ち上がり、自室を出る。
すると。
「――え!?」
「――うわ!?」
入口で、丁度部屋に入ろうとしたらしいエドガーと
「マ、マスター……?」
「メルティナ……平気かい?」
エドガーは、トレーを持っていた。
乗せられているのは、軽食と飲み物。それと明かりの小さな【
「ワタシは平気です……マスターは、このような時間に……何を?」
本当は気付いている。エドガーがメルティナを心配して、様子を見に来てくれたのだと。
しかし、昼間のように。メルティナは突き放すような
「……メルティナ。もういいよ……」
「――何が、でしょう?」
エドガーは何も言わず、右手を見せる。
それは、《紋章》だった。
「……それは」
【
エドガーの能力であり、ローザとフィルヴィーネの契約効果による【
右手甲に光るその
それは、
異世界人限定だが、エドガーと契約した異世界人の
「もう、分かってるから……そんな
「……ワタシは、そんなつもり……」
「「……」」
無言。真夜中の宿の
先に言葉を
「とにかく、部屋に行こう。そんな汗じゃ、
「ノ、ノー……ワタシは」
「うん。だから待ってて……お湯を持ってくるよ。悪いけど、タオルを用意しておいて?ごめんね?」
スタスタと、エドガーはメルティナに
メルティナは、エドガーの背を見ながら。
「……どうして、『悪いけど』なんて言えるのですか……?マスター、悪いのは……ワタシなのに……『ごめんね』と
エドガーの人を思いやる優しさと、その
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