115話【久しぶりのお客様3】
◇久しぶりのお客様3◇
宿屋【福音のマリス】。
過去、王都一の宿屋であり、しかし今は
その正体は超大型の“魔道具”であり、【召喚の間】をコアとした、複合“魔道具”だ。
昔からの歴代【召喚師】たちが、長年の時間をかけて
妻であるマリスの名を
今、二人の異世界人が帰って来た。
一人はスノードロップ・ガブリエル。
“天使”であり、ドロシーの名で帰って来た彼女は。
姿と名を変え、
そしてもう一人、ノイン・ニル・アドミラリ。
“
「なぁ。これどうすんだ?」
時間が遅いとはいえ、宿が閉まるには早すぎる。
そんなレディルに、十数年ぶりに帰って来たノインは。
「そこに置いてある呼び鈴があるでしょ。それは“魔道具”だから、鳴らせば誰か従業員が来るよ」
実際は、異世界【地球】などで使われる
ワイヤレスのセンサー式で、宿の部屋前などには全室に
それを見てリューネが。
「あ、そう言えば……以前それを鳴らせば
リューネが宿に
「へぇ……これがねぇ……」
【
全室に
「早く押しなって……」
ノインは、周囲を見渡しながら。
見たことのないタイプの“魔道具”に
「お、おう……」
そして、その音がきっかけで。
スノードロップはサクヤの前でミスを犯すのだった。
◇
(失敗だ……こんな凡ミスっ!わたくしは何のために《魔法》まで使って……)
スタスタと
元凶となった鈴の
宿が
それを、サクヤの反応で
逃げる様に玄関ロビーへ向かうドロシーだが、後ろからはサクヤの
これ以上
ロビーの
ドロシーは玄関を開ける。そして。
「――ど、どちら様でしょうか?」
「……と、
お
(ノイン……近くにいるのは分かっていましたが、急すぎです!)
(――マリス?……い、いや……そんなわけない。スノー……だよね、きっと)
後ろにいるサクヤには見えないが、ドロシーの顔は引きつっている。
一方でノインの方も、誰が対応してくるかは予測できなかったが、まさか旧友であるマリスによく似た女性が出てくるとは思わず、声が上ずってしまっていた。
「……
ドロシーの何気ない
【福音のマリス】は
「五人いけるか?」
ドロシーにそう言う、フードの男。
見れば、
そしてドロシーは、サクヤを
「――サクヤさん。メイリンさんはまだ残っていますよね?」
「……ああ。帰りの
しかしサクヤは。
「しばし待っていてくれ。呼んでくる」
「助かりま――」
シュン――。
「……なっ」
「「「「……」」」」
目の前で、《魔法》の反応もなく消え去った黒髪の少女。
男に
ドロシーの背後から、ノインが小声で。
「スノー……だよね?」
「……ええ」
「何してんの?」
「……いろいろあったのです」
「なんでマリス?」
「……分かりません」
「あの小さいの、何者?異世界人だよね、確か」
「名はサクヤ。わたくしたちが《石》を置きに来た時に地下にやってきた子ですよ」
「あ~。あの時の
「ええ。それにしても……」
ドロシーはちらりと、
「エリウスはまだ回復しませんか……」
「――うん。むしろ、
ノインはドロシーから離れる。
すると。ロビーの右手側からやって来る、
その女性、メイリンは開口一番。
「……ほ、本当だ」
と、何かを確認するように
そして後ろから。
「だから言ったではないか。お
どうやら、メイリンはサクヤの言葉を信じなかったらしい。
いきなり「客が来た」と言われても、今の【福音のマリス】の
「そんな事を言ったって!――あ!、いやすみません……」
メイリンはサクヤに文句でも言ってやろうかとも考えたが、目に入った眠る少女を思い。
「ようこそ【福音のマリス】へ……本日はご
営業スマイルがぎこちない。
久しぶりのお客様に、
「……二部屋お願いします。一つは大部屋がいいのですが……」
答えたのはオルディアだ、
「それでしたら一階の109号室、二階の209号室が四人部屋になっております。どちらも隣室が
メイリンの説明に、オルディアは確認するようにノインとレディルを見やると、ノインが人差し指を立ててオルディアに向ける。
コクリと
「では、一階の部屋をお願いします……期間は……」
と言い、もう一度ノインを見る。
するとノインは少し
「――あ、っと……」
(やば……決めてなかった)
(そういう所ですよ、ノイン)
ドロシーの視線を一瞬感じながらも、レディルと目を交わせて。
「うん……取りあえずは十日ほど
メイリンが
「かしこまりました。お一人様一泊、銅貨3枚になりますので……」
「「……ぇ?」」
その
「メイリンさん……あの……その価格は、正常ですか?」
「そうですよ」
「そ、そうですか……」
あまりにも
しかしそんな事に気付かぬメイリンは、お構いなしに。
「では、ご案内いたしますね……こちらへどうぞ。お連れ様も、お休みのようですから……」
エリウスに一度目をやり、案内をし出す。
「……う、うん。じゃあ行こうか……」
ショックを隠し切れないノインは、てくてくとメイリンについていく。
宿に着いてからやり取りをしていなかった他のフードの人物たちも、それに
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