114話【久しぶりのお客様2】
◇久しぶりのお客様2◇
~ドロシー・サクヤside~
エドガーがローザの待つ地下に向かい、サクラがメルティナを休ませている中。
一階の広間では、サクヤが泣きながら
それは
「うぅ……わたしが悪かったのです……許してたもれ……」
しくしくと、誰かに
正確には。落ちて割れた、
メイリンお気に入りの
サクヤは先程、ドロシーの真上に出現した虫に対して、
虫は
「……あんた掃除しなさいよ?」と、サクラがスルーして行ってしまい、残されたサクヤが、こうして反省の意を込めて、
と、そこに。
「サクヤさん、お手伝いしますね」
ドロシーが、
「おお!ドロシー殿……なんとお優しい……わたしは初め、どこの馬の骨だと
「は、はぁ……それはどうも?」
(この子……
ドキリとさせられて、嬉しいやら不安やら訳の分からない気持ちになるドロシー。
「いやしかし、ドロシー殿なら……――先程の虫にも
「――何の事ですか?」
水に
「ふむ……いや、すまない……気のせいであったか」
(もしかしたら、この子が一番
割れた
それが何だか、今の自分の
しかし玄関口から、リーンリーン――と鈴のような音が鳴った。
「……ん?」
サクヤは初めて聞く音だ。
何の音かと考え、口を開こうとしたが、ドロシーが。
「あ、
「――お客様?」
先行し、つかつかと玄関ロビーへ歩いて行くドロシーに、
「……」
(今、あの女は
このドロシーのイージーミスは、宿屋【福音のマリス】が、依然と同じ風に営業をしていると思った点だろう。
更には、十数年前この宿で接客をしていた時の
ドロシーも、サクヤに見せない様に急ぎ背を向けたが。内心は。
(マズイ。マズイマズイマズイ……なんていう所で
背中に感じる
そしてそこには、それこそ
◇
~帝国side~
【王都リドチュア】に入ったエリウスたち一行は、暗くなるまで
目指すは、【福音のマリス】。
「【
小声だが、
「変わってない……いや、人は減ったかも」
昔は、夕も夜も人がいた。
それこそ、
「そんなに違うのかよ」
レディルが気付き、ノインを見下ろしながら言う。
「うん。昔は……もっと
「レディルさん!フードフード、ちゃんと
リューネが、顔を
「――いってーな!分かってんだよ!」
「ならしっかり隠してください!」
リューネは
「オルディアさん、そっちは大丈夫ですか?」
「――ええ。誰もいません、いけます」
道中、新たに同行者となったオルディア・コルドーという女性が、周りを見渡して述べる。
その手には
そしてその馬上には、くの字に曲がる
「もう
「おう」
「はい!」
「オルディアは普通にしてていいけど、アタシたちの名を呼ぶのは禁止。それと、
「わ、分かりまし……分かったわ」
聞き分けの良いオルディアに、ノインは笑顔で。
「よろしい。じゃあ行こう……くれぐれも、レディルとリューネはフードを取らない事。顔割れてるんだからね」
「るせっ。分かってんよ」
「はい、気を付けます」
そして【福音のマリス】に向かう道すがら。
宿についてからの行動も軽く説明する。
「シャルの事は、
ノインはエリウスをシャルと呼ぶ。
本人がそう呼べと言ったからだが、エリウスは案外気に入っていた。
【
特に、ノインが言うようにレディルとリューネだ。
リューネはエドガーやローザと面識があるし、レディルも完全に敵対を
ノインとオルディアのみ顔を
「オルディアには悪いけど、多分一番
「平気よ。頑張るわ……!」
「それは助かる」とノインは笑顔で答えた。
そして続けて。
「目的地は宿だけど、その後はどうするか……決めておかないとね」
「た、確かに……」
「……そういやぁそーだな。向かうって決めてから、エリウスも寝続けてやがるし。あん時、確か【召喚師】の所が
レディルが、
ノインもそれが分かってか、【召喚師】の場所が安全。の理由を話し始める。
「エド……【召喚師】の居場所が安全……ってのは少し違って、正確には宿が……【福音のマリス】が安全なんだよ」
「どー言うことだ?」
「あの場所は、歴代の【召喚師】が時間をかけて作ってきた、
「
「そ。宿自体、もともとは“魔道具”のようなものらしいんだ。それを、宿屋に
「建物が“魔道具”!?」
「マジかよ……」
リューネ、レディルが
「うん、マジだよ。ただ、見かけだけじゃ分からない。本体は
地下――【召喚の間】。
それが、安全な理由。
「その場所からは特殊な
「だけどよぉ……エリウスを
「それはそう。だからフード脱ぐなよ?」
見た目少女の、お姉さんのような態度に。
「……うっせ!ニヤニヤすんなっ」
レディルはツンケンと声を上げて反抗的だ。
しかし、フードをしっかりと
そんなレディルを見て、ノインは「
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