110話【出兵の時1】
◇
ローザとの話は楽しかった。
その
「あっ……と。そろそろ時間だね……行かなきゃ」
【聖騎士】で新たに
それに加えて、
「――エミリア。エドガーたちには会わなくてもいいの?【
エドガーとは
「……うん。平気だよ……わたし、ちゃんと帰ってくるからさ」
エミリアは笑顔で言う。もう死への
全て
「そう……ならいいわ。戦いが起こらない事、
「――うん!ありがとっ!!」
「……っと、その前にエミリア」
「ん?なに?」
ローザは右手を差し出し、エミリアに何かを
なんとなく、手を乗せてみると。
「――違うわよっ。槍よ槍……直すって約束したでしょう?」
「あ、ああ……」
思い出したかのように、エミリアは【
「でも本当にいいの?魔力使っても……」
受け取るローザは、
「最低限はね……それに約束したし。戦いに行くのに武器が不安だと身も入らないわ」
「それはそう……だけどさ」
「本当に大丈夫?」とローザを心配するエミリアに、ローザはウインクをして。
「任せなさい。オーラを
右手を
友の為に
「……お願い。ローザ」
ローザの心配そうな、それでも優しく
◇
ローザは、エドガーがエミリアの為に“召喚”をしようとしている事を言わなかった。
理由二つ。一つは、
二つ目は、エドガーが“召喚”を確実に成功させられるかの問題だ。
エドガーが今回“召喚”しようとしている物は人物ではない。
――
成功例は
何せ【異世界召喚】では無いのだから、通常の“召喚”と言う事になる。
それはつまり、エドガーは“召喚”のルール上、槍のパーツを一つ一つ“召喚”しなければならない。
それがエドガーの“召喚”の
物によっては時間もかかるし、魔力が増えているとはいえ
だがしかし、急ぐに
きっと今日からでも、エドガーは“召喚”に入るだろう。
ローザは、そんな思いを
「……」
(
背に生えた赤い翼は、メラメラと
空中で足を組み、王城から出てくる馬車を見つめて。
「――頑張りなさい……エミリア」
そう言い残して、ローザは翼から生まれた出た炎と共に、姿を消した。
◇
【リフベイン城】から
その馬車内には、【聖騎士】が三人、【
前方の馬車に【
今出発したエミリアたちは、今日一日【
今日は前準備と言う訳だ。
それでも、エミリアにとっては今朝が知り合いに会える最後の時間。
それを分かって、ローザも会いに来てくれたのだ。
「……き、緊張しますね……」
前方の馬車で、胸の
エミリアの【
それに答えるのは。
「そ、そうですね……
明るい茶髪の少女、リエレーネ・レオマリス。
エドガーの妹にして、ノエルディアの【
そしてもう一人。一番緊張気味の
その少年に、リエレーネは気を遣うように声を掛ける。
「大丈夫ですか?――ゼレンさん」
「……――だ、大丈夫です!」
真っ白い顔で、リエレーネの言葉に返答する。
声は上ずり、緊張で身体はカチコチだ。
この少年の名は、ゼレン・ホロート。
つい昨日、【聖騎士】オルドリン・スファイリーズの【
「大丈夫には見えませんけど……」
「そうですね……ゼレンさんの緊張がうつりそうです」
少女二人に言われる16歳の少年。
このゼレンと言う少年は、騎士学生ではない。
幼い頃から
しかし、その剣の腕を買われてオルドリンの【
この
「本当に大丈夫ですからっ!平民生まれの俺なんかが、オルドリン様の【
落ち着かせるように、リエレーネは自分たちの仕事を説明する。
「――私たちは、
その通りだ。リエレーネ、レミーユ、そしてゼレンの三人は、【聖騎士】三人の世話係として
初めは、【
第一王女セルエリス王女も、【
昨日の深夜に決まったばかりの、急すぎる【聖騎士】の
だが、向かう事が出来るのは、城にいた三人だけ。
報告をしに戻って来た【聖騎士】ギルオーダ・スコスバーは、休ませるために
エミリアの兄アルベールは、第二王女スィーティアのお付きとして
【聖騎士団長】と【聖騎士副団長】、クルストルとオーデインも、貴族
「……【
リエレーネはそう言うが、レミーユも何か思う所があるのか、指を
「十代とかそんな事を言ったら、エミリア様だって17歳ですよぉ?」
「確かに。エミリア様は【土の月】生まれ……なのでしょう?」
ゼレンの問いに、レミーユとリエレーネは
エミリアの誕生日は、【土の月72日】(3月10日前後)だ。
その時期は、アルベールの騎士学校の卒業式の少し前。
異世界人ローザが“召喚”される、ほんの少し前だった。
「それはそうなんですけど……エミリア
リエレーネだって、
内心、
兄エドガーに、【
それは
一つ年上ではあるが、彼女は今や全騎士学生の
学生の身でありながら、
本人に自覚が無いのも、彼女の
「【聖騎士】とは言え十代、まだエミリア様は学生です!危険な戦いに出るのは私は反対ですよっ」
エミリア
「――でも、国の為だろ?」
ゼレンは窓の外を
これにはレミーユも分かっているようで「むぅぅ」と
これ以上は、きっと
それが分かるから、レミーユもリエレーネも、それ以上は何も言わなかった。
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