100話B【繰り返す未来《ルフラン》】

この話は、100話Aのスノードロップの会話相手である、フィルヴィーネのセリフを追加したバージョンになります。セリフだけですが。      you-key。

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繰り返す未来ルフラン


『転移完了だ。少し先に……いたぞ、エドガーだ……』


「エドガー様……この感覚。やはり……」


『ガブリエル。念話ねんわで言った事は……』


「ええ。噓偽うそいつわりの無いものです」


『そうか……では行くぞ。介抱かいほうしながらでもいい、話せ』


「はい……そうしましょう……」





「取り戻したようですね、契約の力を……」


『契約の?念話ねんわで言っていたやつか……』


「はい。今お話した事が、現状げんじょう言える全てです」


『やはり、信じがたいものがあるな……今お前に聞いたエドガーの話は……だが、エドガーの能力、いや……何か特別な物、【真実の天秤ライブラ】と同じようなものか?』


「ええ、しゃくですが……わたくしと【魔女】の【接続能力リンクスキル】……【繰り返す未来ルフラン】を発動されたようですね、エドガー様……」


『やはりそうか。われとロザリームの《紋章》が同じ右手にある様に……お前たち、一つ前の異世界人の能力も、しっかりと引きいでいるのか……その反動と言った所だな、倒れたのは』


「そうです。わたくしともう一人、そして【魔女】が。その【魔女】の《石》は脳内にあります……その反動が、ここ最近の不調ふちょう原因げんいんでしょう。まぁ、わたくしの《石》のせいでもあるのですが……」


『これほどの状態じょうたいでも、隠し通していたのかこやつは……それだけ強いきずなが、あるという事か……』


もうし訳ないとは思っています……“きずな”……ですか。いえ、今となってはのろいでしょう……」


のろい、か……確かにそうかもしれんな……今のエドガーには、何一つのぞんだことではあるまいに……しかし、因果いんがまわるものだ』


「本当に……面影おもかげがあります」


『そこまで似ているのか?前世ぜんせである人物に。それならば、転生したというのもうなずけるが』


「ええ。やはり、成功していたのですね……【魔女】のあの《魔法》は」


『《転生魔法》か……“のみぞ使える神域・・・・・・・・にまで足をみ入れるとは、【勇者】になるだけの事はある』


「よくもわたくしやノインをあざむいたものです。一人だけエドガー様を監視かんししていたのでしょうが、これからはそうはさせません。もうぐわたくしの仲間、ノインたちが王都に到着するでしょう……そうすれば」


『全てを話してもらうぞ?そのもう一人もふくめてな』


「はい、かまいません。あの【魔女】が何をたくらんでいるか、分かったものではありませんから……」


『そうか、ならばいい』


「わたくしとノインが貴方エドガー様に気が付いたのも……あの【魔女】の行動をあやしんだから。思えばまだ、それ程時間はっていないのですね……」


『お前たちからすれば、十数年か……我等われらからすれば、まだ一年もっていないからな』


「エドガー・レオマリス……しかし本当に、同じ名前を付ける事だけは反対だったのですが……」


『なるほど、悪趣味あくしゅみな事をする……』


うらみを込めた、にくむべき相手だから……そう言っていましたよ、彼の父親は」


『自分の子に、親と同じ名か……威厳いげん尊厳そんげんのある人物ならばめずらしくもないが。にくしみを当てるか……』


「ですが、今になってよく分かりますよ……【召喚師】としての力を持たなかったあの方が、彼……エドガー様をうらむのも。帝国にいてなお、その向けるべき悪意あくいは……エドガー様にあったのだと、理解させられました」


『……前世ぜんせのエドガーは、そこまでの人間だったのか?』


「確かにきびしいお方でしたが……でも、愛情はあった筈なのです。だからこそ、わたくしが守るのですわ……今の彼を、エドガー様を」


『……?』


「ですが、彼女はもういない……」


『まさか、エドガーの母親は……お前たちの仲間か?』


「はい、エドガー様の母親は、異世界人・・・・です」





「ぅ……ぅぅ……」


『むっ?』


「……(苦しむ顔は似ているでしょうか……?)」


『おいガブリエル。エドガーが苦しんでいる……話しどころではないっ』


「気休めでしょうが、ドライハーブです……少しは効くはずですが」


『【月のしずく】は?』


「いえ、もう【月のしずく】はありませんよ」


『なんだ使えん。ふむ、それにしても……エドガーが年老としおいている姿が想像できんな』


「もう四十年もすれば……あのようなお姿になるのでしょうね、きっと」


我等われらの時間の経過けいかは早いからな……無限むげんひとしい我等われら“魔王”や“天使”の生は……人間とはくらべられぬ』


「……すぅ……すぅ」


可愛かわいらしい寝息ねいきを立ておって……』


「正直、もう関わらない方がいいかとも思いましたが、あの【魔女】が何かをたくらんでいる以上……わたくしもノインも、指をくわえて観測者かんそくしゃてっしていられるほど、吞気のんきではありません」


『――その【魔女】が何をたくらんでいようとも、われには関係の無い事だ。エドガーをがいしようとするならば、それをふせぐだけ、そうであろう?』


「……はい。わたくしは、守るためにここに戻って来たのですから……」

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