99話【視えるもの】
◇
エドガーは一人、宿に向かっていた。
「エミリア。
もしかしたら、少しだけ気まずかったのかもしれない。
(エミリア。大丈夫かな……あんなこと言っておいてなんだけど、正直言えば不安だな……)
エドガーは確かに言葉を掛けたが、それは
それで本当に、エミリアの心に
だが、
(
エドガーは知らない。その国がどのような
それどころか、【リフベイン聖王国】以外の国の
(西の国、【レダニエス帝国】……じゃなくて、【魔導帝国レダニエス】、か。その国も、何も知らないんだよな……僕は)
自分の
勉強なんてしたこと無くて、学ぼうとすることすらしなかった。
ここに来てそれを
(
自分を
(確かに戦った事も、あの人を斬ったことも
エドガーにだって、男としての意地がある。
「エミリアに嫌われたくない――って、思っちゃってたんだろうな、きっと」
あそこで引き離すことも出来た。
それでエミリアが【聖騎士】として、強く
だが、心に残ったほんの
ならばどうするのか、それは。
「努力しよう……!せめて、
そこでハッとする。
「……【
右手の甲に、赤と紫の《紋章》――【
「こ、これって……もしかして、ローザ……力が戻って!」
一度、ローザが弱った際に消えていた、赤の《紋章》。
右手には、フィルヴィーネの紫の《紋章》しか残っていなかったのだが、今見ると。
「戻ってる!ローザの《紋章》だっ!!」
右手を星空に
「ローザ……もしかして、エミリアの為に……?」
深夜にも
もしかしたらと、エドガーは更に嬉しくなる。
「話、聞かないと!」
今後の
◇
タタタッ――と走る素早い影は、
エミリアは走って汗を流しながら、元の自宅である【
城に
「父様と母様にも、ご報告をしておかないと……」
父アーノルド・ロヴァルトは、【元・聖騎士】と言うのもあり、仕方がないと言うだろう。
しかし、母はどうだろうか。病弱な母は、
「言わない方がいいのかなぁ……でも、エドの言う通り……私は」
守りたい。家族を、大切な人たちを。
エドガーに言われるまで気付けなかった、
前線で
その先に待つのは、エドガーの言った通り最悪の
「あ~……好きだなぁぁ……私、エドが大好きだよぉ」
こんなことで
エミリアは
きっとエドガーも、星空を見ながら帰っているに違いない。
同じ
「うぅ、
顔を
本当はもっと一緒にいたかったし、もっと話したかった。
「……エド。エドは、私よりも騎士っぽいよ……」
その精神は人の為に動き、人の為に
自分を
「私も、エドと同じように考える。エドを、皆を守るために戦うよっ」
星空に
◇
そしてそのエドガーは。
「お!ラッキー……」
月明かりを通して小石を見ると、キラリと赤っぽく
「……
帰り道、一人で《石》
腕に掛けたコートのポケットにその小石を入れて、ホクホク顔で立ち上がる。
光によって昼には緑、夜には赤と色を変える。
今
色もまばらで、本来は
「フフフ……」
それでもエドガーは嬉しそうに、一人笑いながら帰り道を急いだ。
見る人が見れば、
しかし、その笑顔は一瞬で消え去る。
「――ぐっ……!!」
突然襲って来た胸の痛みに、エドガーはしゃがみこむ。
「――うっ……痛っった……」
胸の中心を押さえて、二度目の痛みに
ズギンッッッ――!!と、
「ぐぅぅ……な、なん……で、こんな……痛っ……たぃ」
「これ……もう、何度目何だよっ!痛ったぁ……!」
エドガーは
「ぐぅ……なん、だ……これ……なんで、
エドガーは痛みに目を閉じている。
しかし、暗いその
◇
そこには、一人の少女が横たわっていた。
戦場と思しきその場所で、エッグゴールドの金髪が地面に広がっている。
腕は
細い身体に突き刺さっているのは、
そして、その少女の最後の言葉は。
『……エド……』
瞬間、何か
「――うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!!」
「ぁぁぁぁぁ……ぁぁ……あ、ああ……はぁ……はぁ……はぁ……」
声は切れた。
しかし、そんな事は気にならないほどに、
「今のは……エ――っ!!」
言ってしまえば。口に出してはいけない気がして、エドガーは口を
(な、なんだったんだ……今の、
現実のような、
しかも、不吉
「……うぐっ……!!」
張り
「……エミ……リア……」
段々と
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