97話【言葉を胸に1】
◇言葉を胸に1◇
その
深夜、エドガーは小さな【
すると突然、心に問いかけてくる優しげな声。
<エドガー……起きている?>
ガタン――!と、エドガーは
「痛っった……ロ、ローザ……?」
エドガーは気を取り直して、久しぶりに掛けられた【心通話】に
久しぶりに聞く声に、思わず声が上ずってしまう。
<うん。起きてるよ……ローザ、その……久しぶり、だね>
<もう
「<えっ……!?ちょ、ちょっと待って!>」
今度は
<
「私……たち?」
その言葉は、
ましてやこんな深夜。エドガーが起きていたとはいえ、他の人たちは眠っている。街は
「と、とにかく外に出て……ローザを待とう」
エドガーは外に出ると、
この夜遅くだが、城から馬車が来る可能性と歩いてくる可能性を考えてだ。
「いない……」
<もう
<そんなこと言っても……姿が見えないん……じゃ>
エドガーは
そこには――燃えるような翼と尾を持った、
「ただいま。エドガー」
「ロ、ローザ……え?――エミリア!?」
感動の再会なんて使い古された物では無かった。
ローザが
エミリアだったのだから。
◇
着地すると、炎の翼と尾は自然と消えていった。と言うよりも、ローザの身体に戻っていったという方が正しいかもしれない。
しかし、
ローザの肌が、そのまま宝石なのではないかと思わせる程だった。
「ローザ……その力、いったい――」
「それよりも、今はこっ……ち!」
「うぅ」
エドガーの言葉を
エミリアは気まずそうに
「……エミリア……?」
「……え~っと」
エドガーは思わずローザを見るが、そのローザは天を
しかしローザも、何か意地の様なものがあるのか、気を取り直して。
「――ほらっ!エミリア、何のために来たのよ。時間は無いわよっ」
ローザは文字通りエミリアの尻をペシリと叩き、気合を入れさせる。
「うぅ……分かってるけど」
「ええ。なら頑張りなさい。それじゃあエドガー。私は久しぶりに部屋に行くから、後は任せたわ……」
「――へ?もう……!?」
止めようかとも思ったエドガーだが。
「エミリアをよろしくね」
「……」
それだけ言い残して、ローザは二階の部屋に向かった。
そしてエドガーも、エミリアが普通ではないのだと深く理解した。
泣いたと思われる赤くなった目元、ぐじゅぐじゅの鼻声。
何かあったのだと、もしくはこれからあるのだと、真に理解させられた。
「……」
「……」
と、内心そんな言い訳を用意しそうになったエドガーは、左右に首を振るって。
「――エミリア」
ビクッ――と、エミリアは
ゆっくりとエミリアが顔をあげると、エドガーが目を合わせてきて、優しく問う。
「少し、歩かない?」
エミリアは何も言わないまま
◇
会話はない。無言のまま町を歩いて、星を
この世界は空が広い。
そしてエドガーは、
「もう
「……」
「そう言えば昔、石ころを僕にくれたよね。エミリア」
その石ころは《石》とは呼べない、本当に石ころだった。
エドガーが《石》を集めていると知ったエミリアが、そこらへんで
「……」
「その石ころさ。実は僕、まだ持ってるよ」
「……」
返事はない。だが、顔は赤かった。
なんでそんなものを
笑顔でそんな事を言うエドガーを、ちらりと見るエミリア。
「……あ!」
目が合った。
「……ほらエミリア、
「……え?」
エドガーが言うあそことは、小さな広場だった。
子供が数人で遊ぶのが限界のような、何の
「
「……まだ、
フラッシュバックのように、幼い自分が
そしてその時と同じ笑顔で、幼馴染の少年が隣にいる。
「エド……私」
「――エミリア」
何かを言おうとしたエミリアを
古びた
「こっちに来て座ろうよ、ほら、星が
「……エドのコートに座るの?」
「そこはほら、使えるものは使わないとさ」
夏
「……わぁ……」
コートを広げた
「凄いね」
「……うん」
星なんて、最近はゆっくり見上げたことなど無かった。
それは二人きりの世界を作り出してくれているようで、少し嬉しかった。
しかし反面、これが最後なのかもしれないと、心を
エミリアの心は段々と、暗がりに差し掛かってしまう。
「……」
「……」
ついにエドガーも無言になってしまう。
だが、エドガーはエミリアを見つめて、言葉を待っているようにも見えた。
無理に聞き出すことは簡単だ。
でも、エミリアの口からそれを言ってもらわなければ、真の意味はない。
それをエドガーは分かって、時間がある限りは待とうと思ったのだ。
「……」
「……」
そしてエミリアは、重々しくも口を開いた。
その言葉は、直球だった。
沢山考えたのだろう。悩んだのだろう。
だが、もうこのまま直接言ってしまうのがいいと、思い切ったのだ。
「――私。
「……」
一瞬だが、目を見開いたエドガー。
しかし返事はせず、エミリアの言葉の続きを待つ。
「南の国……【ルウタール王国】が、
「私、怖くてさ……
自分が【聖騎士】に成れば、“不遇”に
そんな単純な理由で【聖騎士】を目指した少女は、少年が“不遇”職業だと知ってから、更に頑張った。
そしてその努力は
しかし、
その【聖騎士】という
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