73話【奔走2】
◇
「どうぞ、こちらですっ」
「――は、はい……」
栗色の髪の女性。ドロシーと名乗った女性は、
すたすたと歩き、
そんな中、ロビーの横にある管理人室から出てくる一人の少女が、エドガーを見かけ。
「あ、エド君お帰り、マークスさんどうだった……――は?」
黒髪の少女サクラが、女連れで
明るかった少女の
「あ、サクラ……こちらドロシーさん」
「……へー」
「……ん?」
エドガーによる女性の紹介を聞き流して、サクラは女性をまじまじと見る。
気まずそうに汗を流しながら、ドロシーは。
「あ、あの……何か?」
「……いえ、どこから
「え?はい?」
「――ちょっ!」
「いや、だからどこの世界――んぐぅぅ!!」
「サクラっーー!?」
サクラの変な
回り込み、身体に腕を回して
「――っっっ!!」
急転して赤面し、暴れるようで暴れない
ドロシーはそんな二人を見て、少しだけ
「仲がよろしいんですね」
「えっ……?」
「んぅ……?」
目を点にするエドガーと、更に赤面するサクラ。
いちゃつくバカップルに見えなくもない
「……あ、ごめん!」
「……う、うん。あたしもごめん」
ドロシーの言葉に、二人は離れる。
エドガーは更なる
「この人はお客様だよサクラ。変な
「お、客様……?」
「なんの?」と顔に出ているサクラ。
そういえば初めてだ。サクラとサクヤがここに来てからの
「あの、よろしくお願い致します……その、お金も無いのですが……」
「はぁ……ん?――はぁっ!?」
「ちょっとエド君こっち!」
「なに――わっ!!ちょちょ……サ、サクラ!?」
エドガーの肩に腕を回して、グイッと引っ張る。
成長中の胸が顔に押し付けられる形になって、
「――しっ!ちょっとどういうことなの?」
「え……な、なにが?」
後ろを向き、口に指をあてて。
ドロシーに聞こえない様に、サクラは小声でエドガーに
◇
「はぁ~~~~~」
盛大なため息だった。ドロシーは東国からの旅人で、
それを、
エドガーいわく、
「バカなの?」
「――うっ」
「アホなの?」
「――ぐっ」
「
「――うぐ……」
「ムッツリスケベ」
「――それは関係なくないっ!?」
ドロシーは置いてけぼりだが、そのドロシーは
自分が聞く話ではないと、気を遣ってくれたのかもしれない。
「だって困ってたし……
「それに?」
「あ、や……なんでもないよ。本当に困ってる人を、
「それは、まぁエド君らしいけど……でもなぁ~」
サクラは理解している。
金
(でもまぁ……
サクラは、腕組をしてドロシーを見る。
そこで
(……
「サクラ?」
「え、あぁ……うん、分かったよ。でも、働いて貰って、その分から宿代と食費を引かないと
「ありがとう!ドロシーさんに
サクラの答えに、エドガーは嬉しそうにドロシーに
「あ~あ……メイリンさんに何て言お……いや、それにしても……」
本当に似ている。見た目
髪の色と言い、物腰
(……むぅ……なんか嫌な
一瞬だけ、【朝日の
このサクラの
◇
エドガーは、ドロシーを部屋に案内していた。
二階は、異世界人たちが9部屋中4部屋を
元々客は少ない(
サクラに言われた「働いて貰って、宿代と食費を……」と言う説明もしたところ、彼女は。
「それでよろしければ、お願いします」
と、あっけないほどに簡単に首を縦に振った。
そんな
「ここです。101号室……角部屋で隣もいませんので、静かではあるはずですよ。あ、上には居ますけど」
「――そうみたいですね」
「え?」
「あ、いえ……なんでも。ふふふ……」
「は、はぁ……あ、コレ
エドガーは部屋の
「はい。すみませんがよろしくお願いします」
そう言ってドロシーはエドガーを見送り、部屋に入ると。
「――さてと……」
誰もいない部屋を見渡し、その
客がいると言う、201号室だった。
◇
「え……っと」
近くにはサクラがいて、フルフルと急速で首を横に振る。
すると【心通話】でエドガーに。
<エド君、説明無理だった!
<そ、そっか……ごめん、僕が言うよ>
サクラでも、最近のメイリンを
メイリンもメイリンで、そうとうストレスがあるのだ。特にプライベートで。
「あの……メイリンさん。お客様を取ったんですけど……」
「知ってる」
「それで、お金がないと」
「知ってる」
「でもって、働いて貰おうと思って……」
「それも知ってる」
<めっちゃ怒ってる!!>
<だから言ったじゃん……!>
メイリンは【福音のマリス】の
それも
「エドガー君は、私にここを
「え!?……えっ?」
どうしてそういう話になるのかと、エドガーは
「ちょ、ちょっとメイリンさん……エド君もさ、そういう事を言いたいんじゃなくて」
「サクラは
「――は、はい……ごめんなさい」
「私が毎日、掃除や食事……花の手入れをしてる。確かに人手が足りないのは分かってる……でも、この
「それは……すみません」
「しまいには働かせるって……私はいらないって言われてるのと、同じに聞こえたかな……」
「……」
圧倒的に
メイリンがそこまで思ってくれているとも知らずに、不用意な選択だった。
せめて連れて来た時に、真っ先に相談するべきだったのだ。
「でも、エドガー君がお人好しなのは知ってる……そんな気が無いのも、
「……」
久々に聞いた。人の口から両親の名が出てくるところを。
メイリンがどういう
気付けば
「……」
(メイリンさんなら、ドロシーさんを受け入れてくれると思った。けど、それは勝手だった……バカだ、僕は!)
申し訳なさそうに、エドガーは
「「……」」
「……」
一番居た
自分も、もう少し
(失敗だったなぁ……でも、そうだよね。メイリンさんはここで何年も働いてるんだもん。言い方が悪かった……あたしの
サクラは、エドガーがドロシーを案内している
それが失敗だったと
それにしても、メイリンとここまで
十代前半の時から何年も働き、世話になったエドガーの両親に
他の従業員たちは、マリスが亡くなった時に
幼馴染である二人と妹のリエレーネを
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