72話【奔走1】
◇
何事もなく日々を
それは誰にでも出来る事であり、また誰にでもは出来ない事でもあった。
何かに恐れ、日々に
【召喚師】エドガー・レオマリスは、まさにその中間と言えた。
聖王国と言う
刺激の
しかしまだ、彼の物語はその
今後更に
◇
ある日エドガーは、ここ数日で集めた“魔道具”、特に《石》を
しかし。
「マークスさん……い、いないんだ……」
掛け
小窓から中を
自分が確認を
知りたい時に情報を知れないのは、コレクターとしてはストレスだ。
「仕方、ないよな……はぁ~」
深いため息を
何も、コレクターとして《石》の
エドガーが
【ルビー】、【ガーネット】、【ルベライト】、種類の
「この中で、どれか一つでもローザの足しになればって……集めたけど……」
はっきり言って、
それはコレクター目線でも、【召喚師】目線でも分かってはいる。
だが、世の中に知らない事は数えきれないほど存在する。
「これからは、もう少し勉強をしよう……」
今までは、誰かから
それは父であったり、マークスであったりと、師と呼べるものから
それでも、知らない事が多すぎる。
特に異世界の事に関しては、その世界から来た人物たちから知る必要がある。
過去の世界から来たローザ、フィルヴィーネのような
それが未来に
◇
【福音のマリス】に戻る
「【
気にした事は無かったが、今思えば
「……」
比べてしまうのは、母が生きていた頃だ。
【福音のマリス】が全盛期で
街には人が
「……」
しかし【召喚師】を
過去の
何度も何度も
それらの常連客は、母が死去した
子供ながらの記憶だったと、美化していた恐れはある。
しかし、成長し
それは、《石》の力だ。
母から誕生日に
付けていたのは数えるほどの回数ではあるが、
「……
今やサクラの《石》となった【朝日の
実際、サクラは異世界人同士を
仲間の
もし客にその力を使えば、どうなるか。
客に来た一人に広めてもらい、
そして力を失い、経営者が【召喚師】となった瞬間、「だれがそんな宿に泊まるか」となったのではないかと。
「考え
ははは、と
――すると。
「……ん?」
一軒の家の外壁に、女性が背をついて
一瞬で、エドガーの脳内には二つの
一つ、【召喚師】の自分が助けても、何の利点にもならないのではないか、むしろ自分がこの女性を
二つ、
「――あ、あの……大丈夫……ですか?」
恐る恐る、
女性は苦しそうに、身を
「う、うぅ……」
女性は、エドガーと同じ栗色の髪をしていた。
長い髪と優し気な
しかし、今にも消えてしまいそうに
「――だ、大丈夫ですかっ!どうしました!?……ど、どうしよう……薬?いや、なんのっ!?
「――だ、大丈夫、です……」
エドガーの方が
「……っ」
女性は、【
それは体調が悪すぎてなのか、単にエドガーを知らないからなのか。
答えは単純だった。
女性は
近所に住んでいるような
「大丈夫ですかっ!話せますかっ!?立てますかっ!?」
「そ、そんな一気に言われると、どれも出来ませんわ……」
「あ……すみません。つい……」
エドガーは顔を赤くして、女性に手を伸ばす。
せめて地べたから離そうとしたのだが。
「――ありがとうございます」
女性は簡単にエドガーの手を取って、ゆっくりと立ち上がった。
身長はエドガーと同じか、少し低い程度。
「
――ぐぎゅぅぅぅぅぅ。と、どこからか
どこから、などと言うのはおかしかった。
目の前だ。エドガーの目の前、栗色の髪の女性。
「えっ……と」
「……すみませ――」
――ッグルルルルるる!!
「ほ、ほ、本当にすみません!」
顔を両手で
おそらく手の下は真っ赤な
「は……ははは……お腹空いて
エドガーは、死の危険はなさそうだと笑う。
女性は
「あの、わたくし……ドロシーと申します、東の国から旅をしてきていたのですが……その、
「それは大変ですね!」
女性の
どうしたらよいものか、「う~ん」と少しだけ考えて。
「――あ!それなら……僕の家に来ませんか?」
「え……?」
しかしドロシーは、
「いいんですか?」
「も、
エドガーは笑顔で言う。
旅人で、【召喚師】を知らないと言う事だけで、ここまで出来るのか。
それとも他の理由なのか。
この時のエドガーには、一切分かりはしないのだった。
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