74話【奔走3】
◇
「「「……」」」
誰も言葉をなくし、時間は
エドガー、サクラ、そしてメイリン。三者の考えは、
エドガーは、メイリンに対する
サクラは、初動の失敗を
メイリンは、【福音のマリス】に自分は不要なのではないかと、不安を
そんな
女性は、それでも話しかけなければいけないと言い聞かせるように気合を入れて、三人に声を掛けた。
「――あ、あのー。すみません……」
「っ!あ……ド、ドロシーさん」
エドガーは
「すみません……わたくしのせいで……」
「い、いや……その、僕が」
ドロシーは
自分のミスで
メイリンは、この
「……あなたが?」
しかし、メイリンは一歩足を動かして、その
「――!!」
ピタリと動きを止めて、まるで時が止まったようにドロシーを
「メ、メイリンさん?」
サクラはメイリンの様子がおかしいと分かり、
ちらりと横顔を
(そっか……メイリンさんも、ドロシーさんがエド君のお母さんに似てるって気付いたんだね)
「あの、わたくしやはり……お世話になる訳には」
「あ、いや……そういう事じゃ、なくてですね……」
更にしどろもどろになるエドガー。
そんなエドガーに、メイリンは。
「……エドガー君。この人……」
「は、はい。この方がお客様の、ドロシーさんです」
困ったような、信じられないような
当然のことながら、エドガーの母マリスが生きていない事は知っている。
それでも、その
「ドロシーさん、ここは
スタッフ以外立ち入り禁止だと言いたいのだろうが、エドガーも
「あ、申し訳ございません……声が聞こえたものでして」
「いや、お食事持っていくって言ったの僕なのもに、遅くなってしまって……」
「――あ、じゃあコレ」
サクラが
持っていけるよ。と言う意味合いに、エドガーは
メイリンの事は当然気になるが、ドロシーがここに居てもややこしいことになると思い、部屋に戻ろうという事だろう。
「行きましょう。ドロシーさん」
「――え、でも」
「いいですから」
エドガーは銀のトレーを持って、サササッと
去り
「――オッケー任せて、エド君」
「?」
なんのこっちゃ分からないメイリンの
「それじゃ、お話でもしましょっか。メイリンさん、あたしも
「え?」
「ほらほらっ、休憩所に行きましょうよっ」
「えぇ?でも、あの方……」
複雑な
しかし、気にかける理由はそれだけではないだろう。
それはきっと、エドガーとサクラが気にする理由と同じだ。
◇
パタンと閉じられた扉は、101号室の扉だ。
少々気まずさをも持ち込んだ室内のテーブルに、エドガーがトレーを置く。
「ではコレ……食べて下さいね。まだ
「……」
「ドロシーさん?」
ドロシーは
そして
「え、ドロシーさん!?」
「申し訳ありません……わたくしは、
「……そんな、事は」
ないとは言えない。しかしそれはドロシーのせいではなく、エドガーが勝手に決めてしまった事から始まっている。
そして今更それを、ドロシーのせいだなんて誰が言えるだろうか。
「大丈夫ですから心配しないでください、ドロシーさんはお客様なんですから……まあ、仕事はしてもらいますけど」
「……はい」
返事は小さかった。元気もなく、そうとう心配しているのがエドガーにも
「ドロシーさんには、
「大切なんですね、あの方を」
「はい。家族のようなものですから」
だから、言わなくても分かるとか、
それが大きな間違いだったと、今更理解した。
「なら、わたくしなんかよりも、メイリンさんを優先してください。わたくしはお食事をして、
ドロシーは
「美味しそう」と
「……ありがとうございます。じゃあ、食べ終わったら
「分かりました。それではそうさせて頂きますね」
エドガーはドロシーにそう言うと、メイリンにキチンと理由を説明しようと戻っていく。
ドロシーは、スプーンで
「お腹が
そう、笑顔で言ったのだった。
◇
エドガーは、急いで
しかし、メイリンもサクラもそこにはおらず、誰もいない
「……どこだ?」
「
「――あ、サクヤ!サクラとメイリンさん知らないかい?」
エドガーの後ろから来たサクヤが、
「い、いえ……存じませんが、何かあったのですか?サクラを探しておられるのなら、【心通話】をお使いになればよろしいのではありませんか?」
「あぁそうか。何で忘れてるんだよ僕は……さっきも使ったのに」
サクヤはどうやら小腹を空かしているらしい。
おもむろに
「ほっ」
腰に下げた短刀を引き抜き、
スパパパっとカットされた
満足そうに笑みを浮かべるサクヤを尻目に、エドガーは【心通話】をサクラに送る。
<サクラ……今どこだい?>
<あ、エド君……今は……メイリンさんの家に向かってるところだよ?>
「<えっ!?>」
どうやらメイリンは帰ってしまったらしい。
サクラが付いて行っているようだが、それでもどことなく【心通話】がぎこちなかった。
<その……メイリンさん、大丈夫かな?>
<うん。少し
<
やはり怒っているのかと、エドガーはそう思いそうになったが。
<違うよエド君。メイリンさん、もう怒ってないよ。むしろ逆かな、お客様……ドロシーさんだっけ、その人の事、もうお客様として見てると思うけど>
<そう、なの?>
<うん。多分だけど、エド君があの人を連れて来た理由を、自分なりに考えたんじゃないかな。でも、小さな怒りはあるみたいだから……今日はあたしも帰らないね?>
<え……それって>
サクラが宿に帰らないと言い出して、逆にエドガーは少し
それでも、続きの言葉を待つと。
<あたし、お
「そっか……よかった」
【心通話】には乗せず、口を動かして言う。
心から安心した。
「よかったですね。
「え。う、うん」
どうやら【心通話】を聞いていたらしいサクヤも、
<そんな感じなんだけど、大丈夫かな?>
<うん、
<あはは、いいっていいって。あたしもさ、
サクラがメイリンを友達と言ってくれたことが、
サクヤは、そんなエドガーを見ながらサクラに【心通話】を送った。
<サクラ。
<解説しなくていいから!>
「解説しなくていいって!」
エドガーにも聞こえていて、二人にツッコまれるサクヤ。
シュンとしながらも、「あむ」っと
「モグモグ……そんなぁ……」
良かれと思って言った結果、残念なことに。
サクヤは涙目になるのだった。
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