62話【逃亡者「その3」】
◇逃亡者「その3」◇
暗い暗い闇の中で、“悪魔”の声を
『――お前が
ゴリゴリと精神が
エリウスは、騎士たちの命を救った。
それはエリウスが見せた甘さであり、自分を追い
『いいかエリウス。死にたくなければ、
次に行動する分の
『よし、いいぞ。起きろ……お仲間が待ってる』
顔など分からないが、ベリアルが優しく
それは“悪魔”の
エリウスには分からない。
◇
ガタンゴトンと、
「――エ、エリウス様……!」
「……リュー、ネ?――うっ!」
「ね、寝ていてくださいっ!全身の筋肉がボロボロだそうですから……精神もかなり
「……そう」
リューネの説明に
「……本当に、生きていてくれて良かったです……」
涙目でエリウスの手を
「……ここは?」
「聖王国に向かう道中ですよ……
「あの、人?」
「――よぉエリウス。
聞き覚えのある声は、
「!?……その……声は……」
グググっと、何とか身体を起こして、その背を見る。
振り返ろうとしたその顔は、リューネの「前見てください!」という言葉で見えなかったが、見なくても分かる。
「……レディル」
「おお。わりぃな……遅くなった」
「本当ですよ……まったく」
「仕方ねぇだろ、お前らを探すのも一苦労だったんだぞ?」
「……どうして、レディルが……」
「ああ~。リューネ、わりぃけど馬車いったん停めるぞ」
その
「よっ……と」
そんなレディルに、飲み物を渡す女性がいた。
村娘のような
「……え、オルディアさん?」
「はい、
「……おはよ……ではなくっ!どうして
エリウスは取り乱しながらも、リューネに問い
「お、落ち着いて下さいエリウス様!お身体に
「落ち着けよ、エリウス……」
「落ち着いてくださいませ、
三人に
そして、隣にも誰かが横たわっている事にも。
「……ノイン」
隣で横になっていたのは、異世界人であるノインだった。
すぅすぅと
「傷は回復できました。レディルさんが持っていた【月の
リューネは安心したように言うが、そのスノードロップは
エリウスから見ても姿は見えないし、
第一、ノインよりも
「スノードロップは……?」
「あの“天使”のねーさんは……傷が回復して、一足先に聖王国に向かったぜ?」
「……な、どうして……」
「村を出て少ししてから、
「そ、そう……忙しいわね……彼女は」
「ですね……でも、それだけ平気な
笑うリューネに、エリウスも釣られて笑う。
「ふふ……そうね、そうかもしれないわ……それで、どうしてまたレディルがいるのかしら?」
「おう。それはな……」
今や
実際、
しかし、
そしてその映像にエリウスが
二人は行動を起こした。そして
「じゃあ……カルストは……」
「ああ。
その後、一人になったレディルは考えを
エリウスが
一つは、
二つは、最悪の場合だ、殺された。
そして
「いやまさか、“天使”のねーさんとこのチビッ子が
その三つ目を信じて、レディルは北へ向かった。
自分が南東部にいる以上、北へ向かえば合流出来ると
「
「そ、そうですね……」
「まぁなんだ……とにかく合流は出来たんだ、それで一つは安心だぜ」
レディルは両手を頭の後ろで組んで、へらッと笑う。
エリウスも「そうね」と笑った。
「じゃあ、オルディアさん……は、どうしてまたこの馬車に……?」
レディルやスノードロップたちの事は分かった。
それでは、一番の
【コルドー村】村長の娘であるオルディアは、父である村長が亡くなった以上、
「はい……私は、村から
「……え?」
エリウスは
「い、いえ……お気になさらないでください。私は、自分で選んだんです……」
エリウスが気を失ったあの後、騎士たちが
オルディアも、
父の覚悟は聞いていた。「
だが、村人は違う。村長
父の
事実、村人たちの
関わらぬを決めていた村人たちも、
人外のようなノインと、それを
現れた
村の広場は、戦いの
それを
村長がエリウスを、
オルディアがもういられないと言うのも、無理はなかったのだ。
そうして、オルディアは父を
「……ですので、私は聖王国に向かうのにお
オルディアの夫は、
あの騎士たちは言うだろう。「村の村長に
「それに、この子……」
オルディアは、眠るノインを見る。
オルディアは村に残るか共に行くかを
「村長さんに頼まれたから」と、簡単な事しか言ってはくれなかったが、父の最期を
それをノインがしてくれたんだと、理解できたからだ。
「分かったわ……よろしくね、オルディアさん」
「はい、エリウス
こうして、エリウスたちの同行者となったオルディア。
完全に
エリウスの為と言う訳でもなく、自分で決断したという事も
「よし。んじゃ出発すっぞ……おちおちしてらんねーしな。その何たら騎士団が、どうせまたくるんだろーしな」
「……おそらく」
「なら早いとこ出るか。って、俺が停めたんだけどな」
そう言いながら、レディルは
エリウスも身体を起こし、ちらりと見えた馬がヘルゲンだったことに安心する。
背を預けゆっくりと考える。
その先は、【召喚師】エドワード・レオマリスがいる、【リフベイン聖王国】だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます