60話【羅刹の使者1】
◇
雨の降る村に
倒れる異世界人、ノイン・ニル・アドミラリもまた、可能な限り顔を動かして、その姿を目に焼き付ける。
「……シャル……どうし、て……」
そして、声の
倒れるノインに対して、安心させるような笑顔を見せて、騎士たちに。
「――
一歩一歩を確かめるように踏み込む。
エリウスは、
しかしこれに
もう逃げたと思っていた
「こ、これはこれは……エリウス
隊長格の男は左手を上に挙げ、部下の騎士たちに
「手を出すな」という事だ。そして反対の右手をエリウスに向けて差し出し、ジェントルを気取る。
「――
「と、止まっていただきましょうか!」
(……どっちだよ)
エリウスの言葉に
男の足元で倒れるノインは、思わず内心でツッコんだ。
男の言葉に、エリウスは素直に停止をする。
言葉を待つことにしたのか、魔剣を騎士たちに向けたままピタリと止めようとしていた、が。
フルフルと、切っ先が
「――!……で、
震えるエリウスの手、それを目にした男は
男は、エリウスが怖がって
しかし
そのエリウスの震えを、この男は
「――
「――あぐっ!!……ぐっあ……うぐっ!」
男は倒れるノインの腹をブーツの固い先で足蹴りし、
落ちた反動で顔を打ち、それでもなお男は
「……」
当然怒りはある。それでも、エリウスは魔力を
騎士の男は、エリウスの
「はははははっ!おら!おらぁ!!その耳は
「――ぐっ!がっ!……ぎゃっ!」
ノインの顔にブーツの甲がガスッ――とぶつかり、痛々しい悲鳴が
エリウスは
「――もうやめなさいっ!!」
「……お、おっと……これは失礼しました……」
エリウスの叫びに、男は「ははは……」と言いながら
両手を大げさに上げて、
「――さぁエリウス
「……貴様……!!」
「……へ?」
エリウスの
そして、エリウスを
「「「……!!」」」
「「「――!?」」」
男の心のない言葉で、場にいる全員が凍り付いたことだろう。
更に、エリウスから発せられ始めたドス黒いオーラが、ノイン以外の人間に
「な、なんだ!?」
「う、うわああ!」
「か、顔!?」
ドス黒いオーラは、騎士たちの周囲を何度も何度も周り、
「なんだお前たち、
エリウスの一番近くに居ながら、隊長格の男は気付けなかった。
とぼけた様に振り返り、部下の様子を
「――どわあああぁぁぁぁっ!!」
ドスンと尻をついた先は、エリウスの足元だった。
「お前は、帝国の騎士に
見上げ、“悪魔”のようなエリウスの
「……は、はは……ははは……し、失礼いたしました……」
ゆっくりと立ち上がり、ガクガクと足を
その
おそらく怖かったのだろう。なんという小物感だろうか。
騎士たちも、顔の様に見えるオーラから
エリウスも少しずつ歩き出し、ノインの前まで来ると、ようやく右手の魔剣を下した。
「大丈夫?ノイン」
「シャル……その、力……《石》の……」
笑顔を見せるエリウスに、ノインは
エリウスの持つオーラは、自分にも心当たりがある。
スノードロップとはまた違う思いで、エリウスの《石》を感じ取ったからだ。
「さぁノイン、立て……ないわね。ごめんなさい……もう少し待っていて」
そう言うと、エリウスはノインを
ヒュンッと
「――
「「「……」」」
騎士たちは
「――ふ……ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「「「!?」」」
「
男は結構な
「ラインハルト
それを、この男は言葉にしている。自分が
周りの騎士たちも、
しかし、そんな言葉にもエリウスは動じずに返す。
「――言いたいことはそれだけ?ならばさっさと帰って兄に報告しなさい“失敗しました”ってね」
だが、この男は別だった。
「……な、なんだとぉおおお!!
「お、落ち着いてくださいマシアスさんっ!」
「そうです!言いすぎですよっ」
「クビ飛びますって!」
騎士たちは、飛び出していきそうな男を必死になって押える。
名前で呼ばれていたので、どうやら隊長ではないらしい。
「うるさいっ!お前らも俺に
なる程どうやら、この男たちは正式にエリウスを追っている部隊ではないらしい。
もしそうでないとしても、何か
「そ、それは……」
「……いやぁ」
「は、はは……」
「なら残りの槍を持ってこいよっ!
このマシアスと言う男、どうやら根っからのクズだったようだ。
言葉の
騎士たちも自分の身が大事なのだろう、わたわたと
数人の騎士が村の入り口
「へへへ……エ、エリウス
エリウスは無言のままでいたが、ノインの
「シャル……アタシの事はほっといて……逃げてよっ、その《石》は……なんだか、危険な気がするんだ……だからっ」
槍の
「――平気よ。“彼が言ってる”」
「……か、彼?」
「ええ。だから心配しないで寝ていなさい……あと、スノードロップも無事だから安心していい。あなたと同じ、ケガはしているけど」
「……そ、っか……」
「――じゃあ仕方ないね……
「ええ……
エリウスが立ち上がると、一人の騎士が
合わせて他の騎士たちも、エリウスの周囲を
「へへへ……さぁエリウス
わざとらしく指をパチリと鳴らし、槍を持った騎士に
槍の数はたったの一本だ。しかし、その威力は
◇
『おいエリウス。分かってるんだろうな?』
その声は、《石》の所持者であるエリウスにしか聞こえない。
「……ええ。分かっているわ……」
『おおそうか……ならいい。存分に使え!俺様の力!!
しかし、確かに
『「――【
エリウスの言葉と同時に服を突き
その翼は、左側だけの
エリウスの身体の
一人の騎士は腰を抜かし、また一人の騎士は
見る騎士たち全てが
『「――
オーラの爪はエリウスが動かす
暗がりならば、おそらく巨大な腕そのものに見えた事だろう。
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