59話【Diabolik2】
◇
この
エリウスが手に持っている【魔剣ベリアル】に
『……時間がたっぷりあるとはいっても、お前の精神がここにいるだけで、現実では確かに時間が進んでるんだ。なんにせよ決断は早い方がいい……俺としても助かるってもんだぜ』
「――
『はんっ。実体のない俺に金はいらねぇ……だがそうだな、命か……あながち間違いじゃないな』
「何をすればいいの?何でも言って」
覚悟は出来ている。と、エリウスは“悪魔”の
それほどまでに力を
赤子の頃からエリウスを見てきたこの“悪魔”は、エリウスの性格も
『簡単な事じゃねぇぞ?死ぬかも知れん……それでもいいのか?』
「あなたが言い出したのよ。力が欲しくないのか――って……そんなの、欲しいに決まってるわ、それが“悪魔”に
『――はっ……別に取って
やはり命かと、エリウスは
しかし、それでも、エリウスに迷いはなかった。
「分かったわ。でも私にも
『まあ待てって。
“悪魔”との契約に悩みなんて
しかし当の“悪魔”は、
『いいか良く聞けよエリウス。まず、ここでは無理だ。《石》の契約は、現実でしか出来ねぇからな……』
じゃあ
時間が
「それでは現実に……あの場に戻ったら、何かをすればいい訳ね?」
『おう。簡単でいいだろ?』
「……
『……剣を腹にブッさせばいい』
「……」
『……』
「……」
『……どした?』
「やはり命なんじゃない!刺したら死んでしまうでしょ!?」
これでは
『そこは
「無茶を言わないでっ!!」
『はっ。無茶も何も、今からやろうとしている事が無茶だと思うぜ?
「……っ」
痛い所を突かれた。この“悪魔”に言われた通りに、確かにエリウスは甘かったかもしれない。
国を良くしたい、仲間を助けたい、捕まりたくない。
リューネに後押しされ、スノードロップとノインに助けられた。
レディルやカルスト、ユングもいない
答えは
『――俺たち“悪魔”は契約を求める生き物だ……しかも、今の俺は《石》に封じられていて【
その為には、“悪魔”の言葉を全て飲み込む必要がある。
覚悟は決めたつもりだった。だが、それは口先だけの軽いものだったのかもしれないと。
今一度、エリウスは決めなければならない。本当の覚悟と言うものを。
「……っ!」
エリウスが真剣な
『……そうだ……それでいい……死にゆく運命の“獣”も“
その
しかしもう、その声を受け入れる事に何の
自然と目を
それに気付いて“悪魔”も
『……ゆっくり呼吸をしろ……それでも心音を高め、【
もう、下手な
助けたい人を助けるのに、
自分の事は
――エリウスは、光があると信じている。
◇
ハッ――とした瞬間には、リューネがスノードロップを支えきれず共に倒れた直後だった。
村ではノインが騎士たちに
「――リューネ。スノードロップを絶対に止めなさい、いいわね!!」
「え……エリウス様はどうす……――えっ!?」
リューネが
魔剣を
まるで、自分の腹にでも突き刺そうとしているかのように。
「――エリウスさ……」
「――ふっ!!」
リューネが嫌な
赤黒い魔剣は――ザシュッ!!と、エリウスの身体を
「エリウス様ぁぁぁぁぁっ!!」
「……エリウスっ……!」
「エリウス殿下っ!?」
リューネ、スノードロップ、オルディアが、
「――がっ!!……ぐぅ……うぅ……さあ、次はっ!?」
リューネたちの
エリウスは腹から大量の血を
「……こ、この感覚は……!まさか……!?」
「……【
魔剣の刀身の根元。そこに
ガギッッ――と中心を
そしてその中から、少しサイズの小さい――【
エリウスは一人、
「――なるほど《石》ね……これが、本当の姿という事……!――こ、れを……差し込むっ!!」
更に身体の奥へと突き刺すように、エリウスは魔剣をドンドン奥へ奥へと突き刺していく。
やがて、【
「――がっ……あぁぁぁぁ……」
エリウスは
痛みは
血が
「エリウス様!!エリウス様ぁ……――エリ……ああっ!」
リューネは
「――リューネ!……くっ、い、今のは……!!」
オルディアが最後に支え、何とか止まるも、その覚えのある魔力に
「……――まさか……そんなっ!?」
天を
二人はそれに
「……エリウス、様……」
エリウスの周辺一帯だけが雨を防ぎ、音もなく
周りの木々は、
そしてスノードロップは、覚えのある魔力とこの
「……【
スノードロップが口にするそれは、“悪魔”
“悪魔”が人間と契約する
「この覚えのある魔力……
エリウスの腹部にズブズブと刺さっていった刀身に
スノードロップは、あれをただの【
しかしそれは間違いだったと、スノードロップは気付いた。
「エ、エリウス……様」
心配そうにするリューネの言葉に合わせるように、やがて
「……」
腹部に刺さった魔剣を、エリウスは両手で抜き去る。
しかし、抜いた腹部からは血の
傷すらも消え去り、変化したのは、その手に持つ魔剣の刀身だけだった。
赤黒い直剣だったはずの魔剣は、
スノードロップは、その名を知っている。
「……――【
静まり返った森を、エリウスはゆっくりと歩き。
リューネとスノードロップを
「……行くわ」
そう言うと、村に足を向ける。
「エ、エリウスさ――」
「待ちなさいリューネ!」
歩き出したエリウスにリューネは声を掛けようとする。
しかし、スノードロップがそれを
フルフルと首を振り、エリウスが向かう村を、二人は見る。
◇
身体が異常なまでに軽い。魔力が内側から
目に映るのは、数人の騎士たちだ。
今にもノインを連れて行こうと、数人がかりで
「――待ちなさいっ!!」
ただ
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