56話【黒銀の翼3】
◇
森に隠れていたエリウス達もまた、黒コートの
「い、今……斬られましたよね……?」
身の丈以上の
そう想像して、目を
その様子を見た他の騎士も、自信に満ちた様にノインに
先程までの、一定の
「……どういう事」
「エリウス様……?」
リューネの問いに、エリウスは答えなかった。
いや、答えられなかったが正しい。
帝国騎士は、基本的に
それがコートを着用していた時点で、多少の
しかし、戦闘は重きに置いていない
それが大きな間違いだと気付けていれば、ノインを一人で行動などさせはしない。
「……その必要が、ない?」
エリウスは
直ぐに答えを
それは数年前、まだエリウスが帝国の
◇
『いいか?エリウス。帝国の装備、特に防具は……
『それくらい知っているわよ。
『ああ、正確には【
『それが何?』
『
『
『おいおい、俺は“魔道具”の
◇
そう聞いた数年後に、目の当たりにしているのだ。
あの巨大な
「……くっ!」
エリウスは
「――エリウス様!」
「殿下……!」
しかし、リューネとオルディアに押さえられて止まる。
今戻れば、捕まるだけでは済まないかもしれない。
それに、逃がしてくれたノインにも、村長にも悪いと理解はしている。
エリウスは奥歯を
◇
騎士の剣技は、お
それはノインから見た感想だが、確実にノインの相手ではない事だけは分かる。
しかし。
「――ちっ!」
数人がかりでノインの周囲を
タイミングを
「うおお!」
「くらえぇ!!」
「ああうるっさい!」
ノインは剣撃を
ガギン――!!と、二本の剣は
ノインは
後ろにいる騎士には、
「「がはっ!!」」
「うぐっっ!」
斬られた騎士も殴られた騎士もくぐもった悲鳴を出すが、
ノインを捕まえようと、騎士たちも急所は狙ってきていない事が分かるが、それでも相当しぶとい。
現在、ノインが倒した騎士は二人だった。
いずれも、
頭だけは防具で
見た目を気にして
その弱点は騎士たちも
「
「……
隊長格の男がなんだかそれらしい
というか、ノインにも丸聞こえで戦術もクソも無かった。
「……!」
その短剣はノインにも見覚えがあった。
“魔道具”だ。
「マズっ――!!」
パシュン!と言う音と同時に、ノインは
たったそれだけだが、その位置に《魔法》の弾丸が吸い込まれるように
知っているから
「
「すみませんっ!!」
隊長格の男が頭を
(あぁもう、あいつを先に
しかし、動こうにも騎士たちが
その動きがまた
一見すると
◇
ノインの戦闘を見守るエリウスは、
リューネはそんなエリウスの手を
「――!!」
ガサリと、背後で草木が
「エリウス様!」
「聞こえているわ……誰かそこにいるのっ!?出てきな――」
言い切る前に、後方の草むらからズルズルと足を引きずる、一つの影が現れた。
その影の正体は暗がりで中々見えなかったが、エリウスとリューネが目を
「――スノードロップ!?」
「ス、スノードロップさん!?」
月が
「スノードロップ!」
「スノーさん!!」
リューネは倒れ込むスノードロップに、すぐさま駆け寄った。
エリウスも動くが、オルディアに「大丈夫、仲間よ」と声を掛けていた。
「……見つけられて安心しました……はは……
撃ち落とされた。スノードロップはそう言った。
それは、空から落ちたという事だ。
この雨と
「一体何があったの……?」
エリウスもスノードロップに肩を貸す。説明を聞かなければならない。
リューネに
「今、ノインが戦っているのは……恐らくわたくしを撃ち落とした部隊ですわ。先程、わたくしは
「やられたのね?」
「……ええ」
異世界の“天使”であるスノードロップが、
その事実は、ノインの攻撃を防いだあの黒いコートと同じく、
「……もしかして、ここまでずっと歩いて?」
ボロボロのスノードロップは、ブーツが
ロングスカートも
「森に落ちたのですわ……木々のお陰で頭などは防げましたが。何とか起き上がって、
元々【コルドー村】を目指していた事を知っていたお陰で、真っ直ぐにここへ来れたのだと言う。スノードロップが言うには、馬車とヘルゲンは無事らしい。
そしてここへ向かう
「ごめんなさい……スノードロップ、
「――エリウス様……ノインは今、力を出せません」
その理由は単純で、月が隠れてしまっているからだ。
先程ほんの少しだけ顔を出した月も、今はまた雲に隠れてしまった。
ノインは、月の
現在は三日月であり、最大の力を
それは、ノインにとっては
「そんな
「“
「“
ノインは、
そんな中、そのノインを見守っていたリューネが。
「――エ、エリウス様!騎士たちがっ!!」
その言葉に、一番の反応を
「……くっ……ノインっ!」
傷だらけの“天使”は必死に立ち上がり、リューネの
エリウスもスノードロップを支えて並び立ち。
「――あれは……?」
「あれが、わたくしを落とした――」
そしてスノードロップが
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