53話【雨は強く、音を搔き消す】
◇雨は強く、音を
エリウスの身体を
自分の仕事だと言わんばかりに、笑顔でエリウスの髪を
ノインは女性、村長の娘であるオルディア・コルドーに対応してもらっていた。
聞けば、この家に居たのは村長であるボズ・コルドーと、その娘のオルディアだった。
ノインの頭を見たオルディアは「え、耳!?」と
「それで……村長。
「はい、
こんな
内容も
「兄……いえ、
頭を下げるエリウスに、村長は
「おぉ……エリウス
ありがたい申し出だ。
しかし、追手がいるとすれば、確実に家中を探すだろう。
「いいえ……リューネと合流できた事が何よりの
エリウスは、ノインとリューネに
しかし――雨は一向に止まず、
◇
窓の外を見張っていたリューネは、強くなる雨の中、光を見つける。
その光は、どう見ても
「――
ガタンと
「エリウス様……!帝国の騎士ですっ!!」
「……くっ……来てしまったのね」
「雨で音が聞こえなかったよぉ……!」
雨が降っている中、ここまで早く追いつけるとは。
エリウスもノインも
「エリウス
「は、はい……こちらです、
村長は二階へ行けと言う。
しかしこれ以上は無理だと、エリウスも理解している。
「村長、もう
エリウスも少し
それでも、娘オルディアは
「エリウス
「し、しかし……」
「――お姫様!もう間に合わないよっ、ここは
耳を
回された腕は、
「……二階には大きな窓があります、そこから何とか抜ければ」
「エリウス様!」
エリウスの
「……エリウス
「そ、村長……」
エリウスは、オルディアに押されて二階へ連れられて行く。
リューネは村長に頭を下げ、後を追う。
「――村長さん。これ」
ノインは村長に何かを渡す。
それは、
「これは……?」
「アタシの
ぴょこぴょこ動く
「はっはっは、これはこれは、
村長は笑顔だ。まるで怖いとは思っていないらしい。
「いい?絶対に身を守る為に使うんだよ?……今の帝国兵は今までとは違う……お姫様の部下じゃないんだから」
「……ご
「うん。分かってる」
そう言って、ノインは二階に上がって行った。
この時に村長の覚悟に気付いていれば。
展開は、違っていたのかもしれない。
◇
二階に上がって行った四人は屋根裏の大窓を開ける。そして小声で。
「やはり
「この雨だもの、気付けない訳だわ。
いつでも抜け出せるように、フードを被る。
開けた大窓からは、当然雨が入り込んできていた。
「エリウス
「……オルディアさん。村長、お
エリウスは
万が一があれば、きっと村長は命を投げ出すと。
それでも止める事が出来ないのが、エリウスの立場だ。
もしもリューネやノインが気付いていれば話は変わるかもしれないが、その気配はなさそうだった。
しかし、娘のオルディアは。
「リューネさんが来た時、
リューネがこの村に助けを求めたのは、黒馬レイスを
少女一人の手ではどうしようもなく、覚悟を決めて助けを頼んだのだ。
村長は嫌な顔一つもせずにそれを受け入れてくれた。
その後、リューネは村人の手を借りてレイスを
「……父は、
「あの時……?」
それは、昨年の事だった。
エリウスは数人の部下を連れて、この村の
その時にも、この村で一番大きな家であるここで世話になったのだが、エリウスは嫌な顔一つせず、
「母は、あの時
死を
しかし部下であった騎士達は、「こんなボロ家で
だがよく考えれば、その騎士の言葉も当然だった。
村長も妻も、よく理解している。エリウスもだ。
そんな中、そのエリウスはこう
その
「父も母も、あの時の
「そんな……」
そんなことで。エリウスの
そして、村長の居る一階では。
◇
ドンドンドンドン――!と
村長はガチャリと扉を開ける。
「おやおや……こんな雨の中、どうなされました……!?これは、騎士団の方ですかな?」
真新しい黒いコートを
雨にもかかわらず、
「ここに、女が来ていないか?」
「女ですか……
「三人組の女だ、一人はまぁまぁ背が高く、もう二人は低い」
「……」
三人組、と言うのはエリウスとノイン、リューネの事ではなさそうだ。
村長は
「そんな者達は来ておりませんな……いったいどうされたのですかな?」
「そうか。いや、お前には関係ないことだ」
騎士団の男は、外から
そして気付く、老人一人しかいないはずの
「――悪いが、中を確かめさせてもらうぞ」
騎士の男は強引に入り込もうとする。
「な、何ですかなっ!」
村長を押しやり、無理矢理上がり込む。
後に続きもう二人、家に上がり込んで来た。
「――あがっ!」
村長は突き飛ばされ、腰を強打した。
しかし、騎士達は相手にせず家を
「食器が三人分ある……やはり居たなっ!」
「タオルもあるぞ……まだ
「おのれ
「……う、ぐぐ……ぅ」
村長を無理矢理立たせ、胸ぐらを
くぐもった声を出す村長の手には、
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