間話【《石》の世界の女子高生】
◇《石》の世界の
現実世界で一つの別れが
髪は
「……」
重力など無いように、クルクルと回転しては何かにぶつかる。
ぶつかっても音は出ず、痛みも声も出ない。
ここは、【
《石》の世界の
何も無い空間に
こうして
そうして精神を
「……あたしは……」
それでも、また
この
しかし、その少女の姿を遠目に見る人物がいた。
光に包まれ、はっきりとした
分かるのは、その人物のシルエットが女性だという事だけ。
その女性は、黒髪の少女サクラを……ずっと見ていた。
「……困ったわねぇ」
彼女を見続けたこの数日、ずっとこんな有様が続き。
声をかけてもかけても反応は無く、ついには反応が
「もう長くはもたない……そもそも、この《石》の中に入れるのは一人だけなのだもの……」
小さな《石》の中では、定員オーバーだという事だろうか。
女性は困ったように指を口もとに当て、考える。
「あ!そうだ、直接話しかけてみようかしら……」
フワフワ浮かび、サクラの近くまで来た女性はまじまじとサクラを見る。
「入っているわね~。自分の中に、もうずぶっと入ってる……」
両腕で
見開く目は
「……【
つらい状態や痛い思いを、
昔、ある女性に教わった《魔法》だ。
その
「急場しのぎだけれど、無いよりはマシでしょう……」
サクラの
「……え……あ、れ……あたし……」
「戻ってきましたか?」
「……だ、れ……?」
「う~ん、誰……かぁ。誰かなぁ……ま、取りあえずは、
「
「そ。《石》の前の
「【朝日の
「あたし……裸っ!?」
「そりゃあね。ここは精神世界だし、服を想像してみなさい?出来るはずよ」
サクラは
光が集まり、あっと言う間にブレザー制服を
「ホントに出来た……」
「でしょ?」
女性はフワフワと浮きながら、サクラの周りをクルクルと回る。
「
「……う~ん。逃げてる……かな」
「逃げてる?何からです?」
「……
それは、サクラと共通する点があった。
「あたしもです……あたしも、逃げてるんです」
知っているとは言わずに、女性はサクラに向き直って話を聞く。
その
「なんでこんなところにいるんだろうって、思うけど……逃げちゃって。怖くなって、気付いたらここにいて……」
(気付いたら、か。そんな事で《石》の中に入ってくるなんて……そうとう才能あるわね、この子。でも、
この空間は、この女性がある人物から逃げ
それは、完全ではなかったという事でもあり、サクラの能力の高さを
「逃げるだけならそれでいいけど、あたしは……色々置き去りにしてきちゃった」
《契約者》であるエドガーや、友達になったエミリア、同じ異世界人のローザやメルティナ。
フィルヴィーネにリザ。そして、サクヤ。
全てを置き去りにして、サクラは逃げたのだ。
自分が、サクヤの妹の生まれ変わりだと聞いて
一人で考え、一人で悩み、一人で
荒野でローザに言われた時が、もしかしたら最後のチャンスだったのかもしれない。
誰かに悩みを相談出来たら、どれ程楽だっただろうか。
一度入り込んだ
エドガーに、ローザに、相談できる相手は
仲間と呼べるものを
それが、自分でも最高に腹立たしい。
「相談したかった?」
女性の問いに、コクリと
でも、
誰かになり切ると言う特別な力を持ち、自分が分からなくなった。
それは、元の世界にいる時から、“いい子になりたい”と言う
しかしそれが、サクラの闇を更に深くさせた
「でも、出来ないよね?……
そう、サクラは親に、母親に
「いい子だね」と、「
存在を
それは、誰であろうとキツイ。
そして異世界にやってきて、自分が誰かの生まれ変わりであると知った時。
また、
自分はいらないと、言われた気がしてしまった。
当然ながらそんな事はない。
サクヤの気持ちは、“サクラはサクラだ”と決まっている。
でも、それを口にした時、サクラは
話をする
「あたしは……誰にも必要とされていない。一度そう考えたら……
負の
しかし女性が、ゆっくりとサクラを
それは優しく、
感じた事の無い、母の温もりだった。
「……あ」
初めて経験する優しい感覚に、サクラの
それを、女性は
「これでも二人産んでるから……お母さんは、こういうものよ?」
母と言う存在を教える様に、女性は
◇
どれ程時間が
気が付けば、サクラは眠っていた。
「
思い出される、
しかし、それも一瞬の
「……!!」
「……起きなさい、えっと……サクラちゃん。サクラちゃん!」
《石》の世界から見える現実世界で、何かが起ころうとしている。
それは、サクラを思う仲間達の思いが
「……
サクラにそう言い残して、光を
サクラを
「ん……うぅ……ん」
サクラの目の前には、
「――サクラ、
「……え……っと、誰?」
見覚えのない
キョトンとするしかできない、サクラだった。
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