33話【言うか言わぬか】
◇言うか言わぬか◇
【リフベイン城】・【
真新しい
その悩みとは、ロザリーム・シャル・ブラストリアことローザの事だ。
「……」
仕事上、エドガーに会う機会は減ったが、メルティナがよく来てくれているし、あちらの動向は分かる。
ローマリアの自室から戻って来たエミリアとメルティナは、ローザの事をエドガーに知らせるべきなのではと、双方同意見だった。しかし、当の本人ローザは。
『
の一点張りだった。
「ど~しよぅ」
「イエス。どうしましょうか……」
二人は同意見であり、「
だが行動に移せない。ローザの気持ちも、充分に理解が出来るからだ。
ローザは「完全に魔力が無くなっただけよ」と言う。
時間が
ローザの言うことが正しいのなら、初めから
荒野で《魔法》を使い、異世界の
あれから日数も
それなのに、回復しきっていなかった。
《石》の魔力を使い切れば、弱体化してしまうという事はメルティナにも分かる。
そうならない為に計算し、
「ローザはああ言いますが、ワタシはマスターに
「それは、私もそうだけど……さぁ」
それを分かっているから、ローザも「
「エミリア。取り
メルティナはベッドから腰を上げ、座るエミリアの肩を叩く。
それに
「うん……だね」
と答え、二人は【福音のマリス】に向かう事とした。
◇
メルティナと空を飛ぶのは久しぶりな気がする。
セイドリック・シュダイハとの決闘の時に一度死にかけ、メルティナに助けられた。
実にそれ以来だ。
「王都って……広いよね」
「イエス。複数の街や村が
「うん……水も流れてないしね」
空から見る下町は、それはもう
【
北の外壁を超えた先に【ルド川】がある。エドガーの宿屋も、サザーシャーク家の畑も、それを頼りしていることは
「貴族街は、城から流れる川がありますね……」
「そうだね。
それを下町まで引けばいいのではと、以前いざこざが生まれたこともあるが、結局は貴族の
「外から見れば……
「……そう、ですね……」
◇
メルティナの背から降りたエミリアは、まだ身体に残る
「あれ……エミリア?と、メルティナも……そっか、エミリアの所に行ってたのか」
「あ、エド。うん……その、こんばんは……」
「……?……エミリア?」
どこかしどろもどろで、たどたどしい。
「――う、ううん!何でもないよ……それより、その
エミリアの最初のアタックは失敗に終わった。
この調子では、ローザの事など話せないのではないかと、メルティナは後ろで
。
そしてそのエドガーはと言うと。
大きな木箱に大量の
「あぁこれね。地下に運ぶんだよ、一応“魔道具”だからさ、これ」
「そ、そうなんだー」
ゴミにしか見えなかったとは言えず、エミリアは
メルティナは「お手伝いします」と、木箱の中の大きめの“魔道具”を数個持った。
「あ、じゃあ私も……」
釣られるように、エミリアも
やはり、何度見てもゴミにしか見えない。
「ありがとう、二人共」
笑顔で二人に礼を言うエドガーに、顔を赤らめてしまうエミリア。
ズルい笑顔だった。
地下まで来たエドガー達は、【召喚の間】の前でエミリアが止まる。
「あ。じゃあ、はいこれ」
と、持っていた小型の“魔道具”を木箱に戻す。
エミリアは【召喚の間】に入れないからだ。
「うん、ありがとう」
メルティナはそのまま入り「マスター、
エドガーは「あ、それはそこに……」と答えているが、エミリアその様を
【召喚師】とその関係者、つまりは異世界人しか、この【召喚の間】には入れないと言う決まりがある。
しかもご
「そう言えばエド。他のみんなは?」
「……」
少しだけ、エドガーの顔に影が落ちた気がする。
「……サクヤの部屋にいるよ。もう
優しい
「エド?」
「マスター?」
二人も気付く。
「なにか、あった?」
エミリアは少し、聞くのが怖かった。
でも、聞かずにはいられない。
このままでは進めないのだ、エミリアも、エドガーも。
「サクラの……居場所が、分かったんだよ」
「――えっ!?本当にっ!?」
「……」
エミリアは喜ぶ。しかし反対に、メルティナは
「……メル?」
「マスター……それはつまり、コノハが消えるという事ですか?」
「……」
「えっ……」
エドガーの無言は、それ自体が答えの様なものだった。
しかし、それで自分も心を落ち着かせようとしているのだと、エミリアもメルティナも分かった。
そしてエドガーは、朝から昼にあった事を話し始めてくれた。
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