34話【召喚の責任】
◇召喚の責任◇
サクヤ達が来るまでもう少しかかると
それは、メルティナが《石》の反応を感じて
「……」
(あ、あの後ですか……)
少し居た
「それでリザが言うには、サクラは《石》の中にいるらしいんだ。時間もない。だから、《石》の中に入ってでもサクラを呼び起こさないといけない……でも、それには
「同等の力?」
「イエス。つまり、サクヤの《石》が最適だという事ですね」
エミリアの疑問に、メルティナが答えた。
そしてエドガーが
「うん。ローザやメルティナ、フィルヴィーネさんの《石》では強さが違うから、接続出来ないんだって」
ローザの《石》と言われて、エミリアもメルティナもピクリと反応する。
今が言うチャンスだろうかと、二人は目を合わせたが、その前にエドガーが。
「けど、サクラを呼ぶのに、サクヤでは駄目だって事になって……」
「そ、そっか……
コクリと
「だから、同等の力の《石》は無いと思ってたんだけど……」
メルティナはピンときたのか、ハッとしながら言う。
「……リザですか?」
「……そう。僕がリザに
リザの首に掛かっている、指輪をネックレスのようにした物だ。
リザの大きさからすれば、顔と同じサイズであるが。
「あのチビ“悪魔”かぁ……」
「では、リザがサクラを迎えに行くのですか?」
「うん。この後にね……だから、忙しいんだよ……」
「でもやらなきゃね」と、エドガーは決意に満ちた
どうやら、
エミリアに、メルティナはこそっと寄って耳打ちをする。
「言い出せる
「……うん……だねぇ」
しかし、その二人の
「――エミリアもメルティナも、急いできてくれたのは分かるよ。顔を見れば何となくだけど……言いたいこともきっと……多分、ローザの事でしょ?」
「えっ!?」
「――マスター……気付いていたのですか?」
エドガーは、そっと右手の甲を見せる。
「当り前じゃないか……これでも、僕は《契約者》だよ。感覚で分かるさ……――ローザも、大変だってくらい」
エドガーの右手の甲には、紫色の《紋章》しかなかった。
変化した
本来ならば、そこには赤い炎の《紋章》もあるはずなのに、そこには存在していないのだ。
「でも……エミリアもメルティナも、言いにくそうにしてる……きっと、ローザが言うなって言ったんだろうけど……」
「……うぅ、当たってる」
「……ローザは、もしかして」
「うん。僕が気付いてることも、知ってるはずだよ」
《石》の使い方は、ローザが誰よりも
フィルヴィーネは
サクヤとサクラも、
「もしかして、こうなるって分かってたのかな……ローザは」
「そうなんじゃないかな。多分だけど……そして――僕が行けない事も、知ってる筈だよ」
「「!!」」
信じられないと言う顔をするエミリア。
メルティナは、理由を理解しようとするが、あのローザを見てしまっているので、かなり
「どうしてっ!?」
「……サクラを戻すには、コノハちゃんを消さなくちゃいけないからだよ……」
「……」
「……やはり、ですか……」
まさかの理由に、口を
予想はしていたのであろうメルティナは、考えるように目を
「だから僕は行けないんだ……
絶対に、このままではいけない。
エミリアにもそれは分かる。でも、ローザだ。
今、助けが必要なのは、ローザも同じなんだと、今一番それを感じるエミリア。
「――エミリア。ありがとう……そこまで心配してくれて。でもね、僕は
「……それって……どういう」
それは、ここ数日エドガーが考えていた事だ。
サクラを元に戻して、かつコノハを失わない為の、
「……!」
エドガーの言葉を待っていたメルティナが、【召喚の間】に近付く
エドガーも気付き、言葉を止めた。
「――それは直接、本人に言うよ……僕の答えを。【召喚師】としての――覚悟をさ」
エドガーの出した答えは、後に大きな世界の
それを理解しながら、エドガーはその答えを選択した。
覚悟は、もう決めている。
◇
「エミリア殿、それにメル殿も……どうしたのです?」
こんな所で、と言う意味だろう。
サクヤは眠そうにするコノハを連れて、地下に来た。
後ろではフィルヴィーネが、肩にリザを乗せてついて来ていた。
「あ~、え~っと……」
「ワタシは帰って来ただけです」
(ズルいっ!!)
うまく逃げたメルティナに、エミリアは涙目で
どうするかと必死に
「遊びに来ただけだよ。そのついでに、
「あぁ~、そうでしたか!しかしエミリア殿、忙しくなったと言うのに遊ぶ
「え、ああ~。うん、ま、まぁね~……」
(エドありがとう!でも
その今まで見ない
エドガーがコノハに何を言うのかと、エミリアは想像も出来ない。
メルティナはほんの少しだが、同じ異世界人の
「――フィルヴィーネさん。
「……ああ。仕方がないからな……」
「良かった……ありがとうございます。それでは、メルティナと……」
「――え?」
エドガーはフィルヴィーネに笑顔で感謝を告げる。
しかし、自分の名が出てくると思わなかったメルティナは素直に
「そう言えば、メルティナには言ってなかったか……――でも、これはエミリアとメルティナが言いたい事にも
「え、何が……?」
「……?」
エドガーが一人で解決してしまっている中、エミリアとメルティナは
メルティナも、これはまったく予想出来ていなかった事らしい。
そんな二人に答えをくれたのは、フィルヴィーネだった。
「先程な、エドガーに頼まれたのだ――城に行ってくれと……な」
「「!?」」
◇
それは、ローザとスィーティア王女が戦っている時だった。
エドガーは右手に
そこにローザの《紋章》は無かった。
『――ぐっ……うっ』
《紋章》の消失が、ローザの身に何かあったと知らせてくれたのだ。
『……ローザ、ローザに何か……でも、僕はっ……』
しかしその時、
だから急いで、エドガーはフィルヴィーネの居る場所に向かい声を掛けた。
『――フィルヴィーネさん、城に行ってもらえませんか……?』
その時フィルヴィーネは入浴中だったが。扉越しに、何とか話を聞いてもらえた。
なぜ昼間から入浴していたのかと言うと、リザの
“悪魔”を清めていいのかと言われれば、それもそうだとしか言えないが、《石》には必要な事らしいので、エドガーはそれ以上は言わなかったが。
『
『ローザに、何か起こったみたいなんです……契約の《紋章》が消えてしまって』
『そうだな……確かに《石》の反応が
『そ、それは……』
確かにそうなのだ。フィルヴィーネが正しい。
自分で行けばいいのだと、確かにそうも思う。
むしろ、自分で行ってこその《契約者》なのだが。
エドガーは、決めてしまっている。
『――無理です。僕は、ローザを助けに行けない……きっと、ローザもそれを
『……なるほど。それもそうだな……確かにあ
ちゃぱちゃぱと水音をさせて、フィルヴィーネが正論を言う。
『ニイフ様!』とリザが
少し待ち、フィルヴィーネの言葉が続かない事をおかしいと思ったエドガーは。
『あれ……フィルヴィーネさ……――んっ!?』
ガラガラ――っ!と、突然開かれた大浴場の扉。
当然ながら、背を預けていたエドガーはそのまま後ろに倒れていく。
『……って!』
ゴチンとタイルに後頭部を打ちつけ、両手で押さえる。
しかし、真上に
『――……えっと……その』
目の前にはフィルヴィーネの下半身。
『身勝手を
こんな
『……!!』
『《契約者》の……“召喚”した責任を果たしてもらうぞ――エドガー・レオマリス』
真っ赤な顔のエドガーを
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