32話【次代の皇帝】
◇
火の回りは城下町だけではなく、城にもあっと言う間に広がった。
しかし、
「――誰ぞっ!誰ぞ
火の回りは、消すよりも
バルコニーから見える城下も深夜にも
城下からは悲鳴も
「――な、なんなのだ……いったい何が起こっている!?ボーツ!ノラソン!シュルツ!!どこにおるのだっ!返事をせぬか!」
「こ、このままではマズい……逃げねばっ」
しかし、逃げようとする
「――ここにおいででしたか……父上」
バルコニーの陰から、
その姿に、
「おお!ラインハルト……とろいお前が真っ先に
「……ボーツ大臣なら、火消しの
気だるげに、
その裏手には、柱に
「――ノ……ノラソン、なのか……いったい……誰が」
「……くっ……くく……くっ……」
間抜けな
「――ははは、はっはっは……くくっ、
「な、何を言っているのだラインハルト!早くノラソンを助けよっ!!」
理解できないのか、それともするつもりが無いのか。
あろうことか
「無理ですよ。もう死んでいる」
「……なっ!」
かつてはその
もうこの男の時代は終わったのだと、確信した。
やはり、
「――終わりですよ、父上……いや、
ドン――ッ!と片手で押しのけただけで、
息子から見れば、確かに
「ぐはっ……な、何をするのだラインハルト!父に、
「――おま……お前が
手を広げて、
しかし、ラインハルトは。
「――
「な、なんだとっ!?」
ラインハルトは、そこにあるはずの炎を
ブオ――ッ!と一瞬で燃え広がり、ラインハルトの服に着火する。
「……!!な!?」
「……ラインハルト、お前は……いったい……!?」
地べたに座りながら、息子を見上げる。
そんな
「――初めから無いのですわ」
【魔女】ポラリス・ノクドバルン。
「その声は……【魔女】殿かっ!よ、よくぞ来てくれた……!その馬鹿息子を、
「――?……このお方は、いったい何を
ポラリスは本当に
魔法陣が展開し、そこから現れた【魔女】は、カツカツとヒールを鳴らしてラインハルトの横に並び立つ。
うふふと笑みを浮かべて、
「――ま、【魔女】殿……」
信じられないものを見る様に、【魔女】ポラリスを見る。
まるで、
「……うふふ。そんな顔をされてもねぇ、私は一度……
事実、ポラリスは《魔法》を使う為に、この
この国で自由に過ごせてきた理由でもある。
初めは、共に行動をして来たシュルツの作戦だった。
しかしその後、ポラリスはラインハルトと言うパートナーを見つけ、今に
「……終わりですよ父上。あなたの時代は……終わったのです」
ラインハルトの指示に合わせて、ポラリスはパチンと指を鳴らす。
綺麗に鳴った音は
まるで、初めから無かったかのように。
「――なっっ……!?」
【
赤の《石》による、
その炎は物理的にも痛みをも生み出し、精神的にもダメージを与えるものだ。
「……炎が、消えていく……」
焼けていた壁に、落ちていたカーテン、
全てが
手には、落ちた破片で付けたとみられる小さな切り傷があった。それが【
「なにが……」
「《魔法》ですわぁ、
ポラリスが腕に着けた、
その一つに、赤く
「
「おのれラインハルトっ!!
「――
「うふふ……シュルツ様は関係ありませんわぁ……」
二人に同時に言われ、
「貴様らぁ……こんな
「もういいでしょう父上……大人しく
その父は
悲鳴を上げるでもなく、背を向ける訳でもなく、息子に
「……あらあら、虫のようだわぁ」
「……それは返答という事でいいのですね……?父上。
「おのれラインハルト……!おのれ【魔女】……!!」
「あら?」
何とか立ち上がり、壁掛けの剣を取り、抜く。
「……――まさか、それで俺と戦うおつもりですか?」
「
ラインハルトは、一歩ずつ父に向かい進む。
口元は
「本当に
「――ば、馬鹿なっ!?」
「馬鹿も何も……
「き、貴様……!ミアを、妹をどうした!!」
ミアとは、ラインハルト、そしてエリウスの妹だ。
ミアをどうしたという答えには、ポラリスが答える。
「――ミア
「貴様らぁぁ!エリウスが
【
帝国の
異世界のものを送り帰す事ができる、帝国
それがあれば、【魔女】も“天使”も怖くは無い。が。
「――この場にいなければ意味はない。それに……」
ラインハルトは、内ポケットから何かを取り出す。
首輪のような、首飾りのような、少し
「そ、それをどうしてお前が……」
「――これが無ければ、
娘の力を恐れ、自分の言葉が無ければ使えない様に
それがこの“魔道具”【
ラインハルトは
その“魔道具”を、
自分しか知らない場所に隠したのだと、
「うふふ……シュルツ・アトラクシアの考えは、私の予測になりますが……まぁ合っているかと思われますわよ?彼も、
「な、なんだと……シュルツが、ミアを……」
更には、信じていた
「――お、おのれぇぇぇぇぇぇっ!!」
馬鹿にされ、
弱る足腰を
ガン――!と、斬る事の出来ない
「それが答えか。無意味な……」
冷たい
ガキンと
「ぐわっ……!」
「……
そうすればこうならなかったのかと聞けば、答えはノーだが。
「おのれ……帝国をどうするつもりなのだ、ラインハルトよ……!」
「ふん。決まっている。
「何を
目下の目的は大陸の中央、【リフベイン聖王国】。
数十年前に帝国に
しかし、それも大昔の話だ。
“魔道具”の発展と技術をもって逆転した
「……聖王国には手を出すな……いいか、これは、最後の忠こ――」
――ザシュッ!!
一刀の
「……
どさりと床に倒れる、父だったもの。
ポラリスは
「お
そして更に。
「【
足のアンクレットに
ゴスン!と、氷漬けの
氷は
「どうします……?」
この先、ラインハルトにはやらねばならない事は多い。
「まずは、
「――じゃあ、そちらはお任せ致しますわ……私は
「ああ、そうだな……当初の予定通り、俺は国をまとめよう。もう
「うふふ。ええ……流石に、私がもう仲間ではないと気付いているでしょうし……一番怖いのは
ポラリスは、ラインハルトの
「……ふっ……俺は世界を手に入れる。そして
無表情ながらも、少年は
そうして、父の
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