31話【帝国の火種】
◇帝国の火種◇
エドガー達が【福音のマリス】で、ローザ達が【リフベイン城】で、
その
「――じゃあリューネ、ここの
「は、はいっ……!」
緊張気味に、しゃがみ込む防護服の少女。
分かりやすく言えば、
なんでそんな事を言うのかと言うと、防護服がまったく一緒で、どちらか判別が出来ないからだ。敢えて分けるなら、小さい方がエリウスか。
「ゆっくりよ。
「は……はいぃ」
その姿に、エリウスまでもがつられて緊張してしまいそうになる。
リューネはサラサラと、
すると、瞬時に
「うん。やっぱり、どれだけ
「はい。そうですね、
成功に安心したのか、リューネは肩を落として息を
こんな事が、
そのどれもが、以前の
「……」
「……」
二人はこの
たった二人、この
しかしそれも国の為と、
「――馬車に戻りましょう。レイスとヘルゲンも、お腹を空かせて待っているわ」
エリウスが可愛がる二頭の愛馬。
黒馬レイスと白馬ヘルゲンは、エリウスが聖王国に
「そうですね。昨日も無理して走ってくれましたし……」
馬車に乗っているエリウスと、
特に、黒馬レイスは結構な
「じゃあ行きましょう」
「はい」
“魔道具”を片付け、専用の
二人は馬車に戻った。
◇
夜になり、【ルーノダース】から少し離れた
疲れ切った二人は話すことも無く、只々身体を休める事だけに集中している。
「……」
「……」
気まずさにも似た、無言の空気。
リューネがエリウスに気を遣い、様子を
食事を終え、食器を片付けるリューネ。
近くに川があるので、そこまで持って行って洗うのだが。
そこまで綺麗ではない川で、
「
と、エリウスが入れ物を持つ。
「い、いえ……いけませんよ!これは私の仕事ですからっ。それに川は近いですし」
「近いとは言っても、馬で行けばの話でしょう?」
【ルーノダース】に近い川は全て
このキャンプ地点ですら空気がギリギリだ。
少し考えて、それもそうかとリューネは
「――分かりました……では、お願い致します、エリウス様」
「ふふ……ええ。行きましょう」
部下の
◇
ソースなども極力使わない
しかしそこで、エリウスの様子がおかしい事に気付くリューネ。
「……エリウス様?」
「――リューネ……南を見て……」
「南……?」
エリウスの
「――えっ?」
◇
植えられていた木々は
それを、白銀の“天使”スノードロップと獣人の幼女ノインは悲しげに見る。
「――
「……だね」
頭上の
「
翼から糸のように広がる光子は、この場に
「――“神”のいないこの世界でも、せめて少しでも多くの
ノインも手を合わせて、
そんな二人に、声を掛ける人物が現れ。
「――そんな事をいちいちしていたら、
「シュルツ様……」
「シュルツ様っ」
シュルツ・アトラクシアは
「――まさかラインハルト
「……ええ。
「ああ。だろうねぇ……相変わらず困ったものだ。十数年の
あははと笑うシュルツ。
「……」
「――
「スノー、落ち着いて」
ノインが
「……わたくし達は
「それは……そうだけどさ……シュルツ様、誤った方がいいよ?」
「……」
シュルツは
「……俺の想いは、昔から一つだけだ。俺は
それは、シュルツ達の筋書きには無い物語りだ。
帝国の世代交代は、確かに望んでいた事だ。
無能な
その手筈さえ、
「ですから、そんな冗談を言っている場合ではありませんでしょうに……」
「そうだよ……どうすんの?これからさぁ」
スノードロップとノインは、シュルツを見るが。
「……さぁ、どうしようか?……はははっ」
その
スノードロップは持っていた槍の
「――笑っている場合ですかっ!これからどうするのです、返答によっては、わたくし達は……」
「痛いって……その槍、俺には刺さるんだからさ……やめてくれよ、スノー」
「……シュルツ様……
その声に、強い
(折れてしまったのですか……こんなにも
その痛ましい
「分かっているよ。スノー……確かに、今俺は
「……それはそうでしょう。わたくしもです……ですが、わたくしは一人でも行動します……
「いやいや、アタシを忘れないでよスノー!アタシだって、早く
両手をブンブン振りながら、獣耳をピンと立たせて。
ノインはスノードロップに
「――ちっ!……そうですね」
そして“天使”の舌打ちである。
「なんで舌打ちっ!?」
「ははは……そうか。分かったよ……じゃあ、
「……ええ。そうでしょう」
シュルツは先行して、城の方へ歩いて行く。
そんな背中を見ながら、ノインはスノードロップに聞いた。
「……いいの?スノー」
「……仕方がありません。彼の
「それもそっか……それじゃあアタシ達は」
「ええ……【魔女】を探したら、行動を開始しましょう……目的は……――
現在離れた場所にいる、この国の
“天使”が助言したものの、しかし
異世界人に対して最強の特効を持つ少女を、スノードロップは待たねばならない。
しかしその
どの道。この場にいる事が出来なかった時点で、スノードロップの助言も、“送還”と言う異能も、全ては意味の無くなっている事象だった。
◇
一人先を行くシュルツは。ブツブツと虚空に向かって。
「やれやれ……
しかし、それを
「【
ポラリスの《魔法》の一つ、【
性交した人物を
そうなれば
だからこそ
「……まぁ、俺のやる事は変わらないさ。そもそも、無能な上が代わってくれるなら何でもよかったんだ……
一人、楽しそうに
もう
そんな不吉な
自分の思うままの筋書きでは無いものの、最終的な終着点は同じだと言い聞かせて、シュルツは城を目指す。
「――もう
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